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27.謝罪!

 ボクは、ワイバーン共の死体の前まで下りると、急いでアイテムボックスに、それらの死体を収納した。


 この場には、ゆっくりしていられない。

 他のワイバーン共が反撃とばかりに、確実にボク達に襲いかかってくる。

 ここから超特急で逃げないと。


 ボクは、大急ぎで、

「転移!」

 連続転移を発動した。

 そして、ジノンを連れて、ホウテイ市ギルド前まで移動した。



 数秒後、転移終了。

 ここまでくれば、ワイバーン共が襲ってくることは無い。


 ボクは、ホッとする一方で達成感もあった。

 あの短時間で、ボク達は、ワイバーンを五頭もやっつけたんだ。


 思わず、

「やった!」

 ジノンとパイタッチ……じゃなくてハイタッチした。



「ルカ、お前凄いな。あんな動き、俺には出来ないぞ!」


「超高速稼働のこと?」


「ああ。まさか、超高速で移動しながら、五体のワイバーンを順に毒付き短剣で斬りつけて行くとはな」


「でも、最後のトドメはジノンが確実に刺してくれるって思っていたから」


「いや。俺が相手にしたのは、半死半生のワイバーンだからな。大したことは無いよ」


「でも、ボクには、ジノンみたいなパワーが無いからね。あの場で確実に仕留めてくれたから、ソッコーでアイテムボックスに収納して逃げて来れたわけだし」



 ワイバーン五体を討伐しても、他のワイバーンにヤラれて生還できなかったら、全く以て意味は無い。

 火を吹く輩だから、あの場でゆっくりしていたら、ボクだって焼かれて灰にされちゃったかもだし。


 かと言って、討伐しても証拠品を回収せずに戻って来るようでは無意味だ。

 なので、成果物をキチンとギルドに提出するためには、あの場でジノンが、さっさと首を刎ねてくれたことに大きな意味があると思う。



「そう言ってもらえると嬉しいかな。ただ、なんか俺の方がルカにおんぶに抱っこしてもらった感はあるが、今回の実績があれば、間違いなくSランクの試験を受けられるようになると思う」



 もしかして、ジノンはSランクの受験資格が欲しかったってこと?

 たしかに、Aランク最強で、最もSランクに近い存在って言われていたけど、近いのと受験資格があるのは全然違う。



 でも、これで納得がいった。

 昨日ボクが、変な機能が発動した時……。


『たしか、ゼリオンって植物を切ると茎から白い液が出て来るんだけど……』

 ってジノンが言った時に、ボクが

『それって、男性のナニからも出るよね?』

 って言っちゃったヤツだ。


 その時に、珍しくジノンが怒ったのは、このワイバーン討伐を何としてでも成し遂げたかったからに違いない。



「受験資格、得られるとイイね」


「だな。それと、ルカもAランクの昇級試験を受けてみるか?」


「ボクが? まだ、ギルド登録して一週間も経っていないんだよ。ちょっと、早過ぎるんじゃない?」


「しかし、これで俺達は一応、竜殺しだからな。Aランク試験の受験資格くらい、余裕だと思うぞ」



 特段、ボクは、そこまでランク上げに固執していないけど……。

 でも、ジノンがそこまで言ってくれるし、ボクも受験申請してみることにした。



「あと、これ。ありがとう」


「別に持っていてもイイんだが……」


「いや、そう言う訳には行かないよ」


「じゃあ、俺の方で持っているけど、必要になったら、いつでも言ってくれ」


「うん」



 ボクは、ジノンに短剣を返した。

 ただ、ボクに合う武器を探さないとイケないね。

 冒険者なのに攻撃アイテムが鞭と蝋燭って、絶対におかしいから。



『取説君:ルカ‐0721号は、Hに関連するアイテムであれば、何でもそつなく使いこなします』



 ボク達はギルドに入ると、まず掲示板に向かう。

 そして、ワイバーン討伐の依頼書を取り、そのまま受付へと向かった。


 誰かが依頼書を先に持って行っちゃっていたら困るなとは思っていたけど、さすがに、この依頼を受けようとする変人は、他にいなかったようだ。



 受付には、胸の大きな受付嬢がいた。

 ボクが身体改造してあげたリマだ。


 ただ、何故か受付の前には、あの武器屋の女がいた。

 今は視界に入れたくないんだけどな。



「ルカさんですね。今朝ほどは失礼しました」



 こう、いきなりボクに謝罪して来たのは、その武器屋の女。

 多分、ギルドに確認に来て、ボクが不正をしていないって知ったんだろう。



「ええと、先に手続きしたいので、その後にしてください」


「分かりました」



 取り敢えず、彼女は脇にどいてくれた。

 謝罪を聞いてあげたい気持ちはあるけど、今、最優先したいのは、ジノンの受験資格が得られるかの確認。

 そのためには、ワイバーン討伐依頼を受ける手続きと、証拠の品の納品が先だ。



「この依頼を受けたいんですけど」


「これですか? 余りお勧めできませんが。ワイバーン素材が欲しいってだけで、被害者からの討伐依頼ではありませんので、緊急性はありませんし……」


「と言うか、既に討伐して来たんです」


「へっ?」


「メスの死体が五体あります。よろしければ、解体場の方で出しますけど」


「わ……分かりました。では、コチラに」



 ボク達は、リマに連れられてギルド裏の解体場へと向かうことになった。

 ところが、この時、

「私も見せてもらってイイですか?」

 と武器屋の女が言って来た。


 すると、リマが、

「後学のため、今回だけ特別に見学してください」

 と答えた。


 多分、リマは、敢えてボク達の成果を、この女に見せたいんだと思う

 百聞は一見に如かずってヤツだ。



 解体場に着くと、ボクは、早速、アイテムボックスからワイバーン五体の死体を出した。

 これを見て、

「嘘!」

 と声を上げたまま、武器屋の女は固まっていた。


 たった二人のパーティで、こんなに短時間でワイバーン五体を討伐するなんて普通は有り得ない。

 ましてや、ボクがお荷物状態で、ジノンが一人で討伐……なんてのは、さらに非現実的過ぎる。


 この討伐は、実力者二人がかりで成し遂げたって考えるのが、多分だけど、一番リーゾナブルな考え方になると思う。



「ジノンさん、ルカさん。これって、昨日今日で討伐したんですか?」



 全身を震えさせながら、こう聞いて来たのはリマ。

 彼女もまた、相当驚いていたようだ。


 ボク達が掲示板から取って来て渡した依頼書を見ているから、リマの場合は、予めワイバーン五体がアイテムボックスから出されると理解していたはずだ。


 しかし、それでも現物を目の当たりにすると、やはり驚かずになどいられない。

 それだけ、ワイバーン五体には圧倒されると言うことだ。



「昨日は敵情視察で、討伐は、今日行って、チャチャッとやってきました」



 すると、武器屋の女が、

「今日って……、ついちょっと前に、うちに来たでしょ? その後に、これだけの数を討伐して来たってこと?」

 ってボクに聞いて来た。

 さすがに、時間軸としておかしくないかってことだ。



「そうですけど?」


「何処で討伐して来たの? 少なくとも、ホウテイ市内じゃないでしょ?」


「ダイスーシー村の辺りです」


「あの廃村? そんな遠いところに? 収納魔法が使えるのは、たった今、この目で確認したけど、本当に転移魔法が使えて強化魔法が使えるってこと?」



 やっぱり、あの村には、もう人が住んでいなかったのか。

 あれだけの数のワイバーンが近くに住み着いていたら、やっぱり村を捨てて逃げるしか無かったってことなんだろう。

 もしくは、全員がワイバーンの犠牲になったか。

 ……と、この時、ボクは思っていた。



「まあ、一応」


「リマから聞いたことは、普通は到底信じられないけど、やっぱり全部本当なのね。今朝のことは、本当に済みませんでした」



 武器屋の女が、その場でボクに向かって土下座した。

 この世界にも土下座って文化があることには驚いたけど。



「もしボクがFランクのままでしたら、Aランク冒険者のジノンの腰巾着みたいに言われても仕方が無いって思ってます。Hしか能が無いみたいな見た目をしているのは重々承知していますので。

 でも、ボクがBランクになるに当たって、その資格がボクにあるってジノンがギルドに働きかけてくれて。その話を受けて、実際にギルド長が審査し、それにリマも立ち会ってくれました。

 なので、ボクのBランクが不正と言うのは、ギルド長にもリマにもジノンにも失礼な行為だと思います。それで、ボクは怒りました」


「はい。大変失礼致しました」


「頭を上げてください。もう怒ってませんので。あと、今後は人を見た目で判断するのはやめてください」


「はい。肝に銘じます」



 武器屋の女は、この辺で許してやることにした。

 でも、武器を買うのは別の店にしようとだけは思ったけど。

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