表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/72

26.超高速稼働

「その(股間の)剣は不要です。ちゃんとした金属製のモノが買いたいんですけど?」


「ですから、キン属性ですけど」



 これでは、キチンと話が出来ない。

 いくらフェロモン魔法とかHPへの感受性に個体差があるとは言え、ここまでくると、悪い意味で異常だ。



 この時だった。

 一人の女性が店主の頭を背後から殴った。


 すると、店主は、殴られたところをさすりながら、キョトンとした顔で、

「あれっ? ワシは、いったい何を?」

 と言っていた。

 取り敢えず、正気を取り戻したようだ。



「また、例の病気が発動したんです。アナタは、店の奥に入ってなさい」


「わ……分かった」



 店主は、その女性に言われるがまま、店の奥に引っ込んだ。

 どうやら、この女性が、あの店主の妻のようだ。



「済みませんね。綺麗な女性客を見ると、いつもああなっちゃうんですよ」


「そ……そうでしたか」


「それにしても、マジで殴りたいくらい綺麗ね」



 しかも、この女性は非常に正直な人らしい。

 営業スマイルを作っているけど目がマジだ。



「殴らないでください」


「それで、ナニを御所望?」


「短剣ですけど」


「冒険者?」


「はい」


「ランクは?」


「Bです」


「ふーん」



 急に、この女性の目がきつくなった。

 ボクがBランクと言うのが気に入らないのか?



「たまにいるのよね。仲間の手柄に便乗してランクを上げる人」



 つまり、ボクがジノンに『金魚の糞』して、実力が無いのにランクだけ上げたって思っているのか?

 ジノンに枕営業とかして。



「ボクが不正にランクを上げたとでも?」


「そこまでは言ってないけど」



 いやいや。

 言っているも同然だと思うけど?


 別に、ボク自身はエロしか能が無いみたいに思われても仕方がない。

 こんな見た目だし、フェロモン魔法も常時(情事)発動しているからね。


 しかし、今回は、ボクだけの問題じゃない。

 ボクを再審査してくれたギルド長のレッドや、受付嬢のリマに対して失礼だと思うし、再審査を受ける方向に仕向けてくれたジノンに対しても失礼な発言だ。



「これでも一応、一昨日、ホウテイ市ギルドで飛び級審査を受けてBランクになったんです。疑っているならギルドに問い合わせてください」


「だから、別に、そこまでは……」


「だったら、何故、余計な一言を言うんですか? それって、そもそも、ボクに対してそう思っているって証拠でしょ? 非常に不愉快です。この店で買うのはやめます。行こう、ジノン」



 ボクは、ジノンの手を掴んで、店をさっさと出て行った。

 この時のボクは、モロに不機嫌さが顔に出ていたと思う。



 店を出たところで、ボクはジノンの手を離した。

 せっかく店に付き合ってもらったのに、なんか申し訳なくて、この時のボクは、ジノンの顔を直視できなかった。



「ジノン。やっぱり短剣貸してくれる?」


「ああ」


「ありがと……。それと、ゴメン。せっかく武器屋に行ったのに」


「いや。あんな風に言われちゃ当然だろ。まあ、別の店で買えばイイよ」


「うん」



 ジノンの声は、いつも通り優しかった。

 もし、ボクが正式に女性だったら、既にジノンに対して恋愛的にロックオンしているかも知れない。

 イケメンで優しいとか……。

 中身が三十五歳のおっさんだから、そんな展開にはならないけど。



「そもそも、そう言った不正がし難いように、達成ポイントだけで昇級できるのはDランクまでになっているんだがな」


「そうなんだ」


「ただ、貴族出身の冒険者だと、Aランクまでなら、金でランクが買えたりするところもあるみたいで、必ずしも不正が全く無いってわけではないけどな」



 まあ、そう言った不正は、どこの世界でも同様に発生するってことだ。

 もっとも、ボクは貴族じゃないから関係ないことだけど。



「でも、Sランクは、お金じゃ買えないんだ」


「さすがにSランクだけは別格みたいだ」


「ふーん」


「じゃあ、これ」


「ありがとう」



 ボクは、ジノンから短剣を受け取ると、それを腰に差した。

 そして、ボク達は、

「転移!」

 改めてワイバーンの巣の近くまで連続転移で空間移動した。



 数秒後には目的地に転移終了。

 いよいよ作戦開始だ。


 先ず、ボクはアイテムボックスからワインのビンを取り出した。

 その中には、ゼリオンって植物の毒性成分だけが入っていた。

 実は、これを昨夜、ボクは物質創製魔法で作り出していたんだ。



 ❖  ❖  ❖



 昨夜、ボクは不本意な代償行為を行った後、取扱説明書を改めてチェックした。

 実は、結構、色々な能力を持たされているんだ。

 基本的には、Hなことを充実するための能力なんだけど……。



 続いて、ボクはゼリオンって植物に関する記憶を辿った。

 前世では存在しなかった植物だけど、何故か『ゼリオン』って単語が記憶にある。



「ええと、なんだっけ……。あっ!」



 そして、ボクは、ふと、ゼリオンの茎を切ると出て来る白い液体の(ワイバーンにとっての)()()()()のことを思い出した。

 少なくとも、男性の股間から出る白い液体とは全然中身が違う。



『取説君:ルカ‐0721号は、エロに関することであれば、学術分野であっても深い知識を有しています。エロギャグに関連する内容でも同様です』



 ゼリオンから出る白い液体の毒性成分は、実は、インゲノールだったんだ。

 インゲノールは、地球だと、トウダイグサ科の植物から単離されていて、抗がん作用をはじめとする様々な生理活性を有している。


 ただ、このインゲノールが、この世界のワイバーンにとっては、場合によっては死に至る猛毒だってことだ。



 それと、陰毛のことを、

『インゲ』

 って言う輩がたまにいる。


 そのため、インゲノールのことを、

『陰毛ノール』

 なんて冗談を言うヤツが、極少数だけど、ボクが学生の頃にいた研究室にいてね。


 そのお陰で、インゲノールのことをオヤジギャグレベルのエロギャグに使えるネタとして、ボクの中で登録されていたんだ。

 なので、前世よりもインゲノールに関する知識が増えている。


 言ってしまうと、前世では、インゲノールの構造式なんて、イチイチ覚えていなかったけど、何故か今は、その構造式がキチンと頭の中に入っている。



 ボクは、

『Hに使うモノ』

 ではなく、

『Hに関連するモノ』

 であれば、物質創製魔法で作り出すことができる。

 なので、Hに使わなくても、何らかの形で関連性を示せれば出せる可能性がある。



「インゲノール、出ろ!」



 ボクは、空のワインのビンに向けて物質創製魔法を放った。

 すると、700 mLほどのインゲノールがビンの中に出て来た。


 当時は、ソイツ等のことを、

『アホなことを言って……』

 と思っていたけど……、今となっては感謝している。

 ソイツ等のお陰でインゲノールが出せるようなものだから。

 何と言う強引な……じゃなくて好都合……でもなくて、運のイイ展開!



 ただ、エロギャグ用と言いながら、こんなモノが出せるって、恐ろしい力だ。

 決して他言できないだろう。


 どこかで毒殺事件とかがあったら、真っ先にボクが疑われそうだ。

『他にも色々な毒物が出せるんだろう?』

 って言われる気がする。



 ちなみに、このワインのビンも物質創製魔法で出したモノだ。

 女性用のHな道具として出すことが出来るからね。

 空ビンでも、中身が入った状態でも……。



 ❖  ❖  ❖



 時は現在に戻る。

 ボクは、

「転移!」

 山の斜面の上方……ワイバーンの巣よりも上の位置に空間移動した。


 そして、そこでボクは短剣にインゲノールを塗ると、

「超高速稼働!」

 まさに目にも止まらぬ超高速で、一つ目の巣に向けて移動した。

 勿論、メス一頭だけがいる巣だ。



『取説君:ルカ‐0721号は、超高速稼働装置が内蔵されています。本装置を使うことで、様々な運動機能を超高速化することが可能です。単純繰り返し運動による刺激でさえも強烈な快感として使用者の身体を襲い、快楽の世界へと誘います』



『取説君:ルカ‐0721号が超高速稼働装置を使う際は、全身が空気摩擦に耐えられるように強化魔法が自動的に発動します。但し、服は空気摩擦により瞬時に燃え尽きる場合があります』



『取説君:ルカ‐0721号が物質創製魔法で作り出したアイテムに対しては、超高速稼働の際に、ルカ‐0721号の強化魔法が自動的に発動します』



 一応、短剣は金属だから超高速稼働の際の空気摩擦で燃えたりしない。

 それから、インゲノールに対しては、ボクの物質創製魔法で作り出したモノだから、特例的に強化魔法が自動的に発動するみたいだ。


 超高速で動けること自体は、性技……じゃなくて正義のヒーローにでもなった気分で嬉しいけど、使える理由がなんだかなぁ。


 ただ、そんな超高速で繰り返し運動をやったら、男性側のは千切れるんじゃないか?

 少なくとも、無事であるとは思えない。



 それと、今着ている服はエロスが用意していた女王様服だけど、これには強化付与がされていて空気摩擦に耐えられるようになっている。

 なので、超高速稼働装置を使っても燃え上がることが無い。


 多分、エロスは、ボクに女王様服を着させた状態で、超高速稼働の単純繰り返し運動をさせるつもりだったんだろうけど……。



 ボクは、一頭目のメスの背中に、インゲノールをたっぷり塗った短剣で斬りつけた。

 そのメスは、

「グギャー!」

 と悲鳴にも似た声を上げると、巣から真っ逆さまに地に落ちた。



 地上では、このメスのワイバーンをジノンが待ち受けていた。

 インゲノールだけでワイバーンを100%死に至らしめるわけじゃないから、この場で確実に仕留めておく必要がある。


 しかも、他のワイバーン共からボク達が攻撃される可能性もある。

 故にサッサと片付けてしまわなければならないだろう。



 ジノンは、

「身体強化! 剛性強化付与及び振動特性付与!」

 魔法で身体強化すると共に、剣に魔法付与を施した。


 そして、

「死ねぇ!」

 目の前に落ちて来たワイバーンの首を刎ねた。



 ただ、ボクがワイバーンを一頭、刺したのを見て、他のワイバーン共が、一斉に巣から飛び立とうとした。

 急がないとイケない。


 ボクは、

「超高速稼働!」

 再び超高速稼働を発動し、隣の巣のメス、さらに隣の巣のメス、そのさらに隣のメス、そして、その一つ先の巣にいるメスの背中を、順にインゲノール付きの短剣で斬りつけて行った。


 追加で次々と地に落下する四体のワーバーン共。

 それらの首を、ジノンが立て続けに刎ねて行った。


 最後のワイバーンの首を刎ねた直後、ジノンは、

「また、つまらぬものを切ってしまった」

 とは言わなかったけど……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] !?  アクセス済みになってて、最新話を見逃す所だった……あぶねぇ。  幾つかの話をまとめて、話数が少なくなったのかな? >ソイツ等のお陰でインゲノールが出せるようなものだから。  …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ