25.作戦を考えよう!
「ルカ、どうだった?」
「残念だけど、成体のメスが成体のオスの三倍くらいいるよ」
「そうか。結構厳しいな」
一つの案として、討伐対象をオスだけに絞るって方法はある。
ボクがオスのワイバーン共をペットにしちゃえば、オス共は完全に無抵抗になる。
ソイツ等を討伐すればイイ。
ある意味、レックスの時の再現だ。
トドメを刺すのはジノンになるけど。
でも、オスを倒している間にメスが襲いかかってくる可能性が高い。
フェロモン魔法を全開にして、HPも、それなりに上げるためだ。
そうなったら、ひとたまりも無いだろう。
他にも、ワイバーンのオス共をボクの手下にして、戦闘員として使うって方法もある。
言わばボクとジノンとワイバーンのオス共の連合軍結成だ。
『取説君:ルカ‐0721号は、女王様モードを発動することで、異性愛者の男性と同性愛者の女性を完全に服従させることが出来ます』
でも、オスに比べてメスがずっと多いから、連合軍の敗戦が濃厚だろう。
いずれにしても、今のままでは、討伐は厳しい。
ナニかイイ方法を考えておかないと……。
「ジノン。一旦、引き上げるよ」
「ああ。頼む」
「転移!」
ジノンを連れて、ボクは宿に向けて連続転移に入った。
そして、十秒としないうちに、ボクとジノンは、宿の前に到着した。
Hのデリバリーを速やかに行うための機能だけど、転移魔法自体は使えると便利だ。
「ルカ。サンキュー」
「どう致しまして。それでさ、ジノン。一つ聞いてイイ?」
「何だ?」
「ワイバーンの武器について教えて欲しいんだけど」
「まあ、尾に毒を持っているし、あと火を吐くな」
尾に毒があるってサソリかよ!
それから、火を吹くってサラマンダーじゃあるまいし!
……って思ったけど、地球でも、そう言う設定が、ところによっては、一応あったような気がする。
ただ、火を吐かれるとなると、ボクにとっては結構きついな。
バラバラにされる分には問題無いけど、焼かれると厳しい。
『取説君:ルカ‐0721号は、焼かれて全身が灰になってしまうと修復魔法が発動できなくなります』
余り近付かずに倒せる方法が必要だ。
遠くから攻撃できる何かがあるとイイんだけど。
「ついでにもう一つ。ワイバーンが苦手とするモノって何か知ってる?」
「たしか、ゼリオンって植物を切ると茎から白い液が出て来るんだけど……」
「それって、男性のナニからも出るよね?」
「いや、全然違うから」
珍しく、ジノンがちょっと、ムッとした顔をしている。
一瞬、間を置いたけど、ボクは、アホみたいな機能が働いて、変なことを言っていたことに気が付いた。
『取説君:ルカ‐0721号は、聞いたり読んだりした単語を即座に下ネタに変換することが多々あります』
やってしまった……と思った。
ここで言う白い液って、タンポポの茎とかを切ると出てくる液とかのことだよね。
でも、普段なら、
『例の女性も似たようなことを言っていたから』
って言って、決して怒ったりしないけど、今回は、それだけ、いつも以上に気が入っているってことなんだろう。
「あっ! ゴメン」
「それが、いつものパターンってのは分かるけどさ。ただ、今は、ワイバーンを討伐する方法を考えるのに集中したい」
「分かった。それで、その白い汁にワイバーンは弱いってこと?」
「ゼリオンの汁はワイバーンにとって猛毒みたいで、その汁を付けたナイフで刺せば、一瞬でかなり弱るし、死ぬ個体も出て来る」
「じゃあ、月並みだけど、その植物の汁を付けた矢でも放つ?」
「いや、矢だと距離があるから飛んで逃げられるし、そもそも、ゼリオンを手に入れるのが難しい。亜熱帯地域の荒れ地に生息しているらしいが」
「なるほど。それじゃたしかに入手は難しいか」
「まあ、互いに一晩、考えてみよう」
「了解」
ボク達は、宿に入った。
既に昨日からジノンとは別室で泊まっている。
部屋に入ると、ボクは早速、面倒な代償行為を行うことにした。
不本意ながら、これをやらないと明日が大変なことになる。
『取説君:ルカ‐0721号のフェロモン魔法を最大値から下げた場合、それにより放出できなくなったエネルギーを別の形で放出する必要が生じます。代行処置として24時間毎に1時間、ルカ‐0721号の陰部に何かを挿入してください。この際、男性器を用いることが推奨されます』
勿論、推奨されるモノは使わないけど……。
これが終わってから、ボクは明日の戦い方を考えることにした。
取扱説明書をチェックしながらね……。
ただ、ゼリオンって植物の名前、どこかで聞いた感じがする。
地球時代には知らなかった植物のはずなんだけど……。
…
…
…
❖ ❖ ❖
翌朝、ボクは起きるとすぐにフェロモン魔法の出力とHP値を調整した。
これらを放置しておくと、後が大変なことになる。
『取説君:ルカ‐0721号は、睡眠をとった後は、如何なる理由があろうと全てが初期値に戻ります(Lv値のみ保持)。HP値やフェロモン魔法の出力等を調節したい場合は、再設定が必要になります』
本当は、人間じゃ無いから睡眠をとる必要は無いけど、睡眠自体は嫌いじゃない。
むしろ、睡眠をとることで頭がスッキリした気分になる。
身支度をして……女王様スタイルだけど……宿の外に出ると、そこには既にジノンの姿があった。
基本的に、コイツはボクより先に来ている気がする。
女性を待たせないようにって思っているんだろう。
「おはよう、ジノン」
「おお、おはよう」
「イイ作戦は思い付いた?」
「いや……」
ジノンが何気に目を逸らした。
本当にノーアイデアのようだ。
「どうする? 諦める?」
「ああ。残念だが、他の依頼を探そうかと」
「だったら、ボクの作戦に乗ってみない?」
「作戦、思い付いたのか?」
「まあ、一応……」
ボクは、昨晩、代償行為の後に取扱説明書を見ながら考えた作戦をジノンに話した。
ただ、これを聞いてジノンは、
「ちょっと待て。それをヤルには、アレが必要だろ? アレを用意できたのか?」
って驚いていたよ。
実は、今回の作戦には、あるカギとなるモノを用意しなくちゃならない。
本来なら入手は難しいんだけど、何故か……と言うか運良くボクの物質創製魔法で、それを用意することができた。
『取説君:ルカ‐0721号は、Hに関連するモノなら何でも魔法で作り出せます』
ただ、アレが直接Hに関連するかって言うと……全然関係ない。
単なるエロオヤジギャグで出て来たって部分はあるけど、それで片付けるには、かなり危険な代物だ。
むしろ、あんなモノが、良く出せたと思う。
「まあ、一応、用意できたよ」
「いったい、どうやって?」
「それは、企業秘密。いずれ話すよ。あと、短剣を貸して欲しいんだけど?」
「それなら、ルカ用のモノを買った方がイイ。護身用ってことも含めてな。レックスの討伐報酬だってあるし、ルカは既にBランク冒険者なんだから」
「そうだね。分かった」
と言うことで、ボク達は宿近くの武器屋に足を運んだ。
たしかに、ボクの攻撃アイテムと言えば、今まで鞭と蝋燭くらいしか無かったからね。
それでBランク冒険者って、改めて考えると正直恥ずかしい。
❖ ❖ ❖
武器屋に入ると、いきなり店主が、
「ナニをお探しですか?」
ってボクに聞いて来たけど、なんか発音がおかしい。
どう考えても『何』じゃなく『ナニ』って言っているように聞こえる。
「ええと、短剣を」
「粗末な短剣でしたら、ココにありますが」
そう言うと、店主がズボンとパンツを下ろそうとした。
展開がダイサンゲン村の串焼き屋のおっさん……正しくはギルド長か……アイツの時と何だか似ている。
まさかと思ったけど、ステータス画面の方にはアラートが出ていない。
フェロモン魔法の出力は下げてあるし、HP値も下限値まで落としてある。
多分、この店主はフェロモン魔法と高HPのどちらかの感受性が極めて高いんだろう。
完全にジノンとは逆のパターンだ。




