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22.自信!

「それと、実は、今回の審査は、この魔法石に全て記憶しております」



 そう言うと、受付嬢は、ボクに野球のボールくらいの球体を見せた。

 これは、今回の審査を始める時から彼女が持っていたモノだ。



「それって、記憶媒体だったんですね?」


「そうです。第三者に映像として見せることも可能です。これを王都のギルド本部に提出し、タンヤオ市ギルドを糾弾します」


「えっ? 何も、そこまでしなくても」


「そう言うわけには参りません。当ギルドに再審査の負担がかかったことは勿論ですが、ルカさんを低ランクに不当割り付けたことで、ルカさんが単独で受けられる依頼に大きな制限がかかってしまいました。これにより、本来であればルカさんが対応できるはずの依頼が放置されてしまう可能性もあったわけです」



 たしかに、受付嬢の言うことは正しいな。

 これは、ボクの損害だけじゃなくて、ギルドに仕事を依頼する側への損害にも繋がるってことだ。


 さらに言ってしまえば、ギルドの信頼にも関わる。

 故の糾弾ってことなんだろう。



「それともう一点。本来であれば、既にルカさんは、スーカンツ村ギルドで再生術を施した際に治療代を受け取る権利があったはずです。それを、今回は審査のための施術となったために無報酬です。その損害は大きいと思います」



 受付嬢の声は、さらにヒートアップしていた。

 たしかに、ボクが損をしたことは間違いないけど……。


 ただ、今回は、まるでタンヤオ市ギルド……のメガネっ娘受付嬢を、ここぞとばかりに思い切り叩いているようにも感じられた。

 多分、この受付嬢は、タンヤオ市のメガネっ娘受付嬢のことが、相当気に入らないんだろう。



「ご配慮ありがとうございます」


「いえ。それと……グレードアップしてくれて、こちらこそ、ありがとう」



 受付嬢が、右手を伸ばしてボクに握手を求めて来た。

 こんなこと、ボクがこの世界に来てから初めてのことだ。

 ボクは、喜んで彼女の右手を、両手でしっかりと握り締めた。



「あの……お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「リマと言います。今後、当ギルド内で何かありましたら、私のところまで相談に来てください」


「あ……ありがとうございます」


「では、ギルドの受付まで来てください。ランク変更の手続きを致しますので」



 そう言うと、リマはボクの手を引いてギルド建物に入って行った。

 まさか、ボクが女性異性愛者と手を繋ぐことがあるとはね。

 敵(タンヤオ市ギルド受付嬢)の敵は友って感じなんかも知れないけど……。

 ただ、これが原因で、明日は大雨……なんてことにならないでくれよ!



 受付に行くと、その前にはギルド長の姿があった。

 この時、彼はもの凄くにこやかだったよ。



「まさか、あそこまでグレードアップしているとはな。でも、ありがとう」


「まあ、お世話になったお礼です」



 長さも太さも二倍以上にしたし、キチンと剥けたし。

 相当、自信がついたと思う。



『取説君:ルカ‐0721号は、長さ30センチまで受け入れ可能です。太さは、一般男性の頭くらいまで許容します』



『取説君:ルカ‐0721号の超上位治癒魔法(S-eX-ヒール)で男性の局部を増大する場合、ルカ‐0721号の中にギリギリ納まる大きさが上限となります』



 今後は、大衆()()……じゃなかった大衆()()に行っても恥ずかしくないだろう。

 それどころか、大事なところを隠さないで見せ付けるようになるんじゃないか?

 女性にナニを見せ付けて喜ぶ変質者にならなければイイケド……。



「リマもグレードアップしたか。これはこれで……」



 ギルド長のイヤラシイ視線がリマの胸に注がれた。

 こうなるのも分かる気がする。

 非常にケシカラン胸になっているからね。



 リマは、

「何ですか、イヤラシイ!」

 とは言っていたけど、胸を隠そうとはせず、むしろ、堂々と胸を張っていた。


 こっちも、かなりの自信がついたようだ。

 ただ、恥じらいは必要だと思うけど……。



「オホン! それで話は戻すが……」



 ギルド長は、咳払いすると急にマジメモードに切り替わった。



「改めて言うまでも無いが、再審査の結果、ルカをBランクと認定する」


「ありがとうございます」


「本来であればAランクにしても問題無い実力と思うが、規定上、Bランクまでしか飛び級できないんでな」


「いえ、別にBランクでも十分ですので」


「まあ、ある程度の実績ができたら、すぐに昇格試験を受けるとイイ。能力的にはAランクを名乗っても問題無いからな」


「そう評価していただいて、ありがとうございます」



 ボク自身は、特にランクには拘っていないんだけど、ランクが高い方が、何かと便利だろうからね。


 あと、ジノンとパーティを組む上でも、Fランク冒険者のままじゃ、

『ジノンに枕営業でもしたんでしょ!』

 って永遠に言われかねない。

 ランクを上げてもらえて、本当に助かる。



「イヤイヤ、当然の評価だ。それと、リマ」


「はい。冒険者カードの返却とレックス討伐代ですね。では、ルカさん。こちら、Bランクの冒険者カードです」


「はい。ありがとうございます」



 ボクは、リマから冒険者カードを受け取った。

 たしかにBランクと表示されている。

 ランクに拘っていなくても、高ランクになれたら、それはそれで嬉しいもんだ。



「それからジノンさん」


「はい?」


「こちら、ジノンさんの冒険者カードです。レックス討伐の手続きの途中で、ギルドの方で預かったままでしたので」


「そう言えばそうだったな」


「あと、こちらがレックス討伐の報酬です。お納めください」


「お……おお……」



 ジノンのヤツ、すっかり報酬のことを忘れていたみたいだ。

 それだけ、ボクのランクのことを気にしてくれていたってことなんだろう。



 ❖  ❖  ❖



 これで、一旦、ボク達はギルドを出た。

 次の依頼を取ってからでも良かったんだけど、それよりも昼食が先だ。


 ボクの再審査があったお陰で、とっくの昔に昼を回っている。

 別に、ボク自身は食事抜きでも全然問題無いけどね。



『取説君:ルカ‐0721号は、魔素エネルギーを吸収してエネルギーに変換します。そのため、特に飲食の必要はありません』



 でも、それじゃジノンが可哀想だ。

 それで、ボク達はギルド近くの飲食店に入った。



 この時間になると、結構空いている。

 ボク達は、ウェイトレスの案内で、窓際の席に座った。


 メニューは、A定食とB定食のみ。

 あとは、酒ばっかりだ。


 ダイサンゲン村で入った店と大同小異だね、これは。

 やっぱり冒険者ギルド近くの飲食店って、この世界では、どこに行っても同じようなモノなのかも知れない。



 取り敢えず、ボクはA定食、ジノンはB定食を頼んだ。

 それから、『取り敢えずビール』も二人分。

 ボクは、絶対に一杯しか飲まないけど。



『取説君:ルカ‐0721号は、お持ち帰り機能が搭載されています。アルコール濃度に関係なく、ワイングラス三杯の酒を飲むと、勝手に酔い潰れます』



 ただ、ジョッキ一杯が、ワイングラス何倍分になるかは分からない。

 万が一、お持ち帰り機能が発動したら、後のことはジノンに任せよう。

 彼なら安全だからね。



「ところでさ、ジノン。相談なんだけど」


「どうかしたのか?」



 この時、ジノンは真面目な顔をしていた。

 ボクが急に、マジな顔で言ったからだと思う。


 地球に居た頃には、こっちが真面目な話をしているのに、おちゃらけた態度をとるような奴が、それなりにいた。


 でも、ジノンは、そう言ったふざけたヤツじゃない。

 誠意ある人間だと思っている。

 フェロモン魔法抵抗性とHP抵抗性を持っているから、性意は無いけど……。



「今後のことだよ。先ず、パーティを仮結成ってことにしていたけど、どうしようかなって」


「別に、このまま正式に結成でイイだろう」



 もうAランク冒険者とFランク冒険者の凸凹パーティじゃなくなったわけだし、ジノンなら安全だし。


 それに、ボク自身が、この世界のことを良く分かっていない。

 誰かが一緒にいてくれた方が助かる。

 なので、このまま正式にパーティ結成してもイイかなってボク自身も思っていたんだ。



「了解。じゃあ、そうさせてもらう。あと、この街にしばらくいるのか、それとも別の街に行くのかなんだけど?」


「ルカは、どうしたいんだ?」


「ちょっと迷ってる」



 本当なら、この世界を色々見て回りたいから旅に出たい。

 でも、この街で初めて女性の友達が出来たからね。


 それに、ギルド長のレッドにもお世話になったし、再審査が終わったらサヨナラってのも、ちょっと気が引ける。



「だったら、少し、この街に居てイイんじゃないか? 俺自身は、正直、タンヤオ市ギルドの糾弾がどんな結果になるのかを見届けてみたいんだけど」



 たしかに、それも一理あるか。

 ボクとしては、元々は、冒険者カードを手に入れたかったってだけで、ランクのことは全然気にしていなかったからね。

 ヒドい被害に遭ったって実感は無い。


 でも、他の人達からすれば、相当ケシカランことなんだろう。

 それこそ、グレードアップしたリマの胸くらいケシカラン存在なのかも知れない。



「じゃあ、宿を取らないとね」


「そうだな。じゃあ、食事が終わったら宿を探そう」


「あと、悪いんだけど、別室でお願いできるかな?」


「まあ、男女同じ部屋ってわけにも行かないしな」


「別にジノンが変なことをするとは思っていないけど……」



 別室にしたい理由は明白だ。

 ボクがフェロモン魔法の出力を抑えるための代償行為を、毎晩しなくてはならないからなんだよ。



『取説君:ルカ‐0721号のフェロモン魔法を最大値から下げた場合、それにより放出できなくなったエネルギーを別の形で放出する必要が生じます。代行処置として24時間毎に1時間、ルカ‐0721号の陰部に何かを挿入してください。この際、男性器を用いることが推奨されます』



 イチイチ解説してくれなくても分かるんだけど……。

 多分、取説君の存在アピールなんだと思うけど……。


 それは置いといて。

 さすがに、そんな姿はジノンに見せられないし、見せたくない。

 ジノンの方も、それを見て勃たなければ、さらに自信を失うだろうし……。

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