18.スーカンツ村!
「では、転移先だが、スーカンツ村って行ったことはあるか?」
こうボクに聞いて来たのはギルド長のレッド。
正直、そんな場所は、ボクは聞いたことが無い。
こっちの世界に来て、まだ三日目だからね。
普通にみんなが知っている場所ですら、全然知らない状態だ。
「行ったことはありません。それ以前に、初めて聞きますけど?」
「うーん。かなり辺ぴなところとは言え、冒険者の間では、結構、有名な場所なんだがな。これが地図だ」
ギルド長が、ボクに地図を渡してくれた。
この地図が、どの程度の精度のモノかは分からないけど、これが正しいとすると、スーカンツ村はホウテイ市から西に約300キロ。
なかなかの距離だ。
「ここまで転移しろと言うことですね?」
「そうだ。俺達を連れて転移出来るか?」
「可能ですけど、連続で転移しますので、もし、体調がおかしくなったら、すぐに言ってください」
「分かった。では、スーカンツ村のギルドまで頼む。大体、この辺りにある赤煉瓦の建物だ」
そう言いながら、ギルド長が、地図の一点を指した。
ただ、アサスズメ王国全体の地図なので、ギルドの位置なんて正確には分からない。
「では、転移先をチェックしますので、少々お待ちください」
「チェック?」
「まあ、千里眼スキルみたいなのを持っていると思ってください」
そう言うと、ボクは、ステータス画面を開き、マップ機能を立ち上げた。
そして、ストリートビュー機能を使って、ギルド長が指した辺りで、一先ず人が転移しても安全そうな場所……連続転移の最終到達地点となり得る場所を探した。
この時、ギルド長は、
「まさか、行ったことの無い場所への転移が、千里眼スキルとの併用だったとは……。それにしても、そんな能力まで持っているのか……」
とブツブツ呟いていた。
勿論、ボクには、ハッキリと聞こえていたけどね。
『取説君:ルカ‐0721号は、男性(異性愛者、同性愛者共に)の声なら、どんな小声でも聞き逃すことはありません。また、女性同性愛者の声も聞き逃しません』
続いて、ボクは、三十回にも渡る各転移での移動場所をチェックした。
連続転移の途中で、危険なところに出ちゃマズいからね。
一先ず、最終到達地点と、途中の転移先は全部確認できた。
準備完了だ。
「お待たせしました。では、行きます。転移!」
ここから、ボクは、約三十回の連続転移を行った。
同伴者はギルド長と受付嬢とジノン。
ボクのテストだけど、ジノンにも、一応来てもらった方が良いだろうとの判断だ。
それから一分もしないでスーカンツ村に到着。
ここで、ステータス画面の中のマップを拡大する。
「一先ず、スーカンツ村に着きました。これからギルドの位置を確認しますので、少々お待ちください」
すると、マップ上で、ここから南に5キロ程行ったところに『冒険者ギルド』と書かれたところを見つけた。
さらにストリートビューで確認。
間違いなく、赤煉瓦の建物だ。
二階建てで、二階には外階段で行けるようになっている。
「では、行きます。転移!」
そして、その直後、ボク達はスーカンツ村の冒険者ギルド前に到着した。
ただ、この時、ギルド長は青白い顔をしていた。
酔ったみたいだ。
受付嬢も、ギルド長ほどじゃないけど、辛そうな表情だった。
やっぱり連続転移は急発進&急停止を繰り返すようなものだから、身体に悪いんだろう。
ジノンだけは、平然としていたけどね。
でも、だったら、スーカンツ村に着いた時に気持ちが悪いって言ってくれれば良かったのに。
……って思ったけど、言う気力も無かったんだろうね、多分。
「ギルド長。目的地に着きました」
「た……たしかにスーカンツ村冒険者ギルドだ」
「ちょっと失礼しますね」
ボクは、アイテムボックスからピンヒールを出して、それに履き替えると、
「設定! HP100、SP300、MP30!」
女王様モードを発動。
ただ、ギルド長が超エロ脳にならないように、HPは人類レベルでの最大値程度に留めておいた。
そして、ボクはギルド長に、
「そこにお座り!」
と命じた。
ギルド長は、ハアハア息切れしながら、その場に正座した。
ただ、この場合は体調不良からの息切れか、Hな方で何か期待していて息切れしているのかが分からなかったけど。
一方の受付嬢は、吐き気が強まったのか、その場に座り込んだ。
体調が優れない時は、同性のHPが100程度でも、異性愛者にとっては結構キツイってことなんだろう。
だとすると、ジノンは体調不良の男性にとって吐き気増強マシーンになるってことか。
もしかすると、今まで男性の友達っていなかったかも知れないな、コイツ……。
ボクは、ギルド長の背後に回ると、ピンヒールで背中を踏んだ。
すると次の瞬間、ギルド長の顔色が一気に良くなった。
高次治癒魔法が発動したんだ。
『取説君:ルカ‐0721号は、ピンヒール等のハイヒールで治療対象者を踏むことで、高次治癒魔法を発動できます。しかし、女性異性愛者にはハイヒールを発動することが出来ません』
何気に笑顔なのが気になるけど。
ギルド長は、ボクに踏まれて喜んでないか?
ただ、ボクの女性ヘイトな仕様のままだと、受付嬢が治せない。
放置するのは可哀そうだし、ナニか方法は無いんだろうか?
そう思った時だった。
取説君が、ボクのハイヒールについて追加説明してくれた。
『取説君:例外的に、男性に懇願された場合は、ルカ‐0721号は女性異性愛者にハイヒールを発動することが可能になります。その際、懇願者がHP50以上の男性であれば一人で条件クリアとなりますが、懇願者がHP50未満の男性の場合は、同時に複数人からの懇願が必要となります』
つまり、ボクは、男性と女性同性愛者のためなら何でもするってことか。
その分、女性異性愛者は放置ってことで……。
でも、まあ、ここにはジノンがいるからね。
懇願条件をクリアするのは楽勝だろう。
「ジノン、頼みがあるんだけど」
「頼み?」
「うん。ボクの治癒魔法は、基本的に男性と、あとは女性同性愛者にしか発動しないことになっているんだけど、男性から頼まれれば発動できるようになるっぽい」
「そうなんだ」
「なので、受付の方にヒールをかけるから……」
「了解。ルカ、あの女性を治してやってくれ。これでイイか?」
「ありがとう」
なんか、こんなアホみたいな設定を、ジノンはスンナリ受け入れてくれたけど、例の女性も、そんな感じだったのかな?
多分、そうだったんだろうね。
でも、これで受付嬢に対して高次治癒魔法を発動できる。
ボクは、受付嬢の背後に回った。
「ちょっとイヤかも知れませんが、我慢してください」
「……」
受付嬢は無反応だったけど、多分、吐き気とかに耐えるのに精いっぱいで、返事する元気すら無いんだろう。
ボクは、受付嬢の背中を踏んだ。
すると、ギルド長の時と同じで、瞬時に顔色が良くなった。
これで治療完了。
ボクは、
「再設定! HP50、SP、MP共に0!」
HPを下限値に戻すと共に、女王様モードを解除した。
「何か、発動条件がおかしかったけど、すぐに楽になった。たしかに、あれは高次治癒魔法で間違いないんだろうけど、何でワザワザ高次治癒魔法を?」
こうボクに聞いて来たのはギルド長。
酔ったくらいなら普通の治癒魔法でイイんじゃないかってことなんだろう。
「実は、普通の治癒魔法は使えなくてですね。高次治癒魔法と超上位治癒魔法しか使えないんです」
「はっ?」
多分、
『訳が分かんない』
って言いたかったんだろう。
ボクもそう思うよ。
普通の治癒魔法が使えなくて、高次治癒魔法と超上位治癒魔法が使えるって、普通は有り得ないだろうから。
「必要があれば、超上位治癒魔法もお見せしますが」
「そうだな。じゃあ、ちょっと待っててくれ」
ギルド長が、スーカンツ村冒険者ギルドの建物の中に入って行った。
ボク達は、一先ずココで待機。
そして、数分後、ギルド長が建物から出て来て、ボク達のところに戻って来た。
「ルカ。ここで超上位治癒魔法を見せてもらう。実は、ここのギルドの二階は入院施設になっていてな。大怪我をした冒険者達が、結構入院しているんだ」
「そうなんですか? でも、辺ぴなところって仰ってましたけど、何故、ここに入院施設があるんです?」
「この村の後に広がるホンロウトウ樹海のせいなんだ。この樹海は、植物型魔獣で出来た魔の樹海でな」
「そんなのもいるんですか?」
植物の魔獣化は、さすがにボクも驚いた。
たしかに、植物型魔獣が出てくるラノベとかマンガを読んだことはある。
地球でもハエトリソウのように捕食するために捕虫葉を動かす植物は存在する。
でも、植物がまともに動くって、ボクの想像の範囲を超えていたんだ。
「まあな。勿論、動物型魔獣も生息しているが、問題は、植物型魔獣が徐々に生息域を広げているってことだ。それで、植物型魔獣の切り倒しと動物型魔獣の討伐を、ここでは行なっているんだが、まあ、怪我人が多いってことだ」
「でも、人は住んでいるんですか?」
「今はギルド職員と冒険者達だけで、一般人は近くの村や町へと非難させた。とにかく、こっちに来てくれ。ここのギルドには話を通して来た」
多分、元々は、ボクが本当に高次治癒魔法を使えるか確認するために、ギルド長はボクに、ここに来るよう命じたんだろう。
既に高次治癒魔法は披露しちゃったけどね。
ボク達は、ギルド長に連れられて、外階段を使ってギルドの二階へと上がって行った。




