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17.不当ランキング!

「他にもルカは、転移魔法が使えます」



 こう受付嬢に言ったのはジノン。

 受付嬢がボクの持つ能力のことを知って驚く展開になると、ジノンには、容易に予想ができていたようだ。



「本当ですか?」


「ええ。俺は転移魔法が使えません。でも、タテホン平原までの距離を考えたら、転移魔法でも使えなければ、こんなに早く依頼が達成できないことは分かりますよね?」


「はい」


「さらに、ルカは高次治癒魔法ハイヒールと身体強化魔法が使えます」


「何ですって?」



 受付嬢の顔が、今度は蒼褪めて来た。

 ボクには分からないけど、なんか、相当マズい状況になっているっぽい。



「ルカさんでしたね?」


「はい」


「何処のギルドで申請登録したんですか?」


「タンヤオ市のギルドです」


「受付の人は、どんな方でした?」


「眼鏡をかけていて、マジメそうな見た目の女性でしたけど?」


「ああ……」



 受付嬢が、再び溜め息を吐いた。

 ただ、同時に、妙に納得した顔をしていた。



「多分、その受付の女性は、女性冒険者に厳しくて有名な人だと思います。それで、ワザと飛び級制度の話をしなかったことが予想されます」



 すると、まるで台本でもあるかのようにジノンが、

「さらに言ってしまうと、ルカは、レックスの戦意を喪失させて、仰向けに寝かせるなんて離れ業もやっていたけどな」

 と言った。


 ちょっと棒読み的な雰囲気があったけど。

 多分、こうなることを踏まえて、事前に用意していたセリフなんだと思う。



 でも、これは、受付嬢にとってトドメの一撃になったようだ。

 いきなりヒドい頭痛でも発症したかのように、その場で頭を抱えたよ。



「ルカさん。それって、本当なんですか?」


「ええ、まあ。オスが相手なら、魔獣相手でも、大抵は、その場でボクに服従させることは出来ますけど」


「どうやって服従させるんです? そんな魔法があるんですか?」


「まあ、そんなところで……」



 一応、フェロモン魔法を使うからね。

 実際には、高HP状態にした上で女王様モードも使うから、魔法だけってわけじゃないんだけど。


 でも、魔法でって言っておいた方が、説明が楽だ。

 ちなみに、従魔法って概念は、この世界には、まだ無いらしいけど……。



「そうですか。少なくとも収納魔法が使えることは、私の目で確認しましたし、他に転移魔法、高次治癒魔法ハイヒール、身体強化魔法、さらには魔獣を服従させる魔法まで使えるとなると、どう考えてもBランクになると思います」


「そうなんですか?」


「はい。ただ、飛び級制度の上限はBランクですので、そこから先は、実績を積んだ上で、別途試験にパスしていただく必要がありますけど」



 つまり、飛び級制度ギリギリいっぱいまで行ける可能性が高いってことか。

 ただ、それが本当だったら、ボクとしてはBランクに上がっておきたい。

 Aランク冒険者のジノンとパーティを組む以上は、Fランクのままじゃ格好がつかないからね。



「分かりました。それで、飛び級試験って、今、受けることは出来るんですか?」


「こちらとしては、是非受けていただきたいと思っております。それと、タンヤオ市のギルドには不当に低ランクにされたとして、ルカさんは訴訟を起こすことが出来ます」


「いえ、別にそこまでしなくてもイイです」


「そうですか。しかし、王都のギルド本部には報告させていただきます。タンヤオ市のギルドには、それ相当の処罰がなされなければなりませんので」



 この時、この受付嬢は、ちょっと怖い顔をしていたよ。

 タンヤオ市のギルドに対して、相当怒っているんだろう。



 ただ、彼女は、妙にボクに味方してくれているような気もする。

 最初は、

『この女、Aランク冒険者に枕営業でもしたんでしょ?』

 みたいな雰囲気はあったけど、これまでボクへの応対をしてきた女性と比べれば、ムチャクチャヘイトだったわけじゃない。


 それで、悪いと思ったけど、ステータス画面覗き見スキルを発動した。

 もしかしたら、両刀使いじゃないかって思ったんだ。



 でも、そこには、

『異性愛者』

 って書かれていたよ。


 なので、今回の件は、本当にギルドとして、マジメに正しい対応を取ってくれているってことなんだ。

 ボクのことが、気に入るとか気に入らないに関係なくね。


 これは、本当に感謝しよう。

 普通だったら、ボクは女性から塩対応される存在だから。



「では、ルカさん、ジノンさん。少々、ここでお待ちください。急いでギルド長を呼んできます」



 受付嬢は、そう言うと小走りにギルド本館へと向かって行った。



 彼女の姿が見えなくなってから、ボクは、ジノンに、

「もしかして、こうなるのを狙ってた?」

 って聞いた。


 すると、ジノンは、余裕の笑みを浮かべながら、

「まあな」

 と答えた。

 彼の中では、全て台本通りだったってことだ。



「でも、飛び級制度があるなんて全然知らなかったよ」


「普通は、冒険者ギルドに申請書類を提出した時に必ず口頭説明を受けることになっているんだ。だから、本当にFランクだったら、飛び級できる要因が一つも無いってことになるだろ?」


「まあ、そうだね」


「なら、ルカが使っていた魔法は、どれも使うことが出来ないはずなんだ」


「なるほどね。それでさ。もしかしてだけど、ワザとボクにレックスを運ばせた?」



 ボクは、ジノンから、

『今回倒す魔獣の死体を運ぶの、お願いしてイイか? 俺も収納魔法は使えるが、収納スペースが結構ギリギリなんで』

 って言われた時に、普通に、

『ああ、そうなんだ』

 くらいにしか思っていなかったけど……。


 今から思えば、その時には既に、ジノンは、ボクに飛び級試験を受けさせるつもりでいたってことなんだろう。



「バレたか。でも、あの受付嬢が、ルカが収納魔法を使っているってことに気付いてくれて良かった」


「そうだね。気付かなかったらどうしたの?」


「まあ、そうしたら、こっちから言うしか無いけどね」


「あと、ダイサンゲン村にいた時には、既に、ボクが不当に低ランクにされたことが分かってたんだよね?」


「まあな」


「だったら、どうしてダイサンゲン村でクレームしなかったのかな?」


「村ギルドじゃ、市のギルドよりも力が弱いから話が通し難い可能性があると思ったんだ。それで、このギルドにした」


「そう言うことか」



 つまり、ダイサンゲン村のギルドからタンヤオ市のギルドに意見したところで、門前払いされるってことか。


 まさに、大三元を聴牌していたのに喰いタンで流されるみたいな感じかな?

 それとも、門前払いだけに『門前清自摸和ツモ』のみとか?

 ちょっと違うか。



 それから数分後、受付嬢が、一人の中年男性を連れて戻って来た。

 彼がギルド長だ。

 この時、受付嬢は、野球のボールと同じくらいの大きさの球体を手にしていた。


 ギルド長は、ボクの顔を見るなり、

「俺がギルド長のレッドだ。君がルカ君だな。この度は、タンヤオ市のギルドの方で手違いがあったらしく、大変申し訳ない。大至急、飛び級試験をさせていただく」

 と言って来た。


 今まで、ボクと目を合わせて、エロい反応をする男性の方が多かったから、マジメな対応ができる男性って、もの凄く新鮮に感じたよ。



「よろしくお願いします。ただ、試験費用っておいくらですか?」


「それなら心配ない。今回は、ギルド側のミスのため、特別無料にする。厳密には、かかった費用は、全てタンヤオ市ギルドに振り替えるがな」


「そ……そうですか……」



 多分、これは迷惑料ってところだね。

 それから、

『ホウテイ市の冒険者ギルドは善良なギルドです!』

 ってアピールもあるだろうけど……。



「それで、今回仕留めたレックスがコレだな。凄い大物だな、これは。では、これを、一旦、収納魔法で収納して見せてくれ。一応、俺が試験官なので、俺の目の前で改めて行なってもらいたい」


「分かりました」



 ボクは、レックスの死体を再びアイテムボックスの中に収納した。

 ギルド長は、

『予想通り!』

 って顔をしていたけどね。



「では、レックスの死体を、元の場所に戻してもらえるか?」


「了解です」



 ボクは、改めてレックスの死体を解体場に出した。

 一先ず、これで収納魔法の確認は終了したと思う。



「次に転移魔法を見せてもらいたい」


「分かりました。それで、何処まで転移すれば良いでしょうか?」


「移動距離の制限は?」


「一回10キロですけど……」



 すると、ここでジノンが横から口を挟んで来た。

 ただ、これはボクが、この世界での常識を知らないから、ボクを正当に評価してもらうための助言みたいなモノだったんだけどね。



「一回10キロだが、クールタイムを必要としない。なので、ここからタテホン平原くらいなら数秒で行ける」


「本当か、おい?」


「嘘は言わないさ。あと、ルカの場合は、行ったことの無い場所でも転移可能だ」


「マジか? それが本当だったら、それだけでCランクに上げてもおかしくないぞ!」



 そう言うと、ギルド長は溜め息を吐き、頭を抱えた。

 どうやら、ボクが想像していた以上に、ヒドい不当低ランク割り付けだったみたいだ。

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