10.出会い!
本作においてHPはハレンチパワーです。
MPはマゾポイント、SPはサドポイントを意味します。
ボクは、そのおっさんの背後に回ると、アイテムボックスからピンヒールを出して履き替えた。
ちょっと火傷の跡が気になってね。
頭を狂わせたお詫びに、治してあげようと思ったんだ。
あと、サービスプレイにもなるしね。
『取説君:ルカ‐0721号は、ピンヒール等のハイヒールで治療対象者を踏むことで、高次治癒魔法を発動できます。しかし、女性異性愛者にはハイヒールを発動することが出来ません』
ボクは、
「このブタ野郎!」
と言いながら、ピンヒールで、おっさんの背中を踏んだ。
すると、おっさんは、
「あっ! イイ!」
と喜びの声を上げていたよ。
そして、高次治癒魔法が発動して、おっさんの火傷の跡が消えて行ったんだけど、何故か、それと同時に周りがイカ臭くなった。
ここで売っているのは、イカ焼きじゃなくて、肉の串焼きのはずなのに。
「じゃあ、ここでイイ子に串焼きを焼いていなさい」
「分かりました」
この時、おっさんは、なんかスッキリした顔をしていたよ。
でも、正気に戻ったら自己嫌悪に陥るんだろうな。
ボクは、ピンヒールから普通の靴に履き替え、ピンヒールと鞭をアイテムボックスに急いで収納すると、足早にその場を去った……と言うか、逃げた。
そして、おっさんから、ある程度の距離を取ったところで、
「解除!」
HPを設定下限値の50に下げ、MPとSPを0に戻した。
❖ ❖ ❖
実は、この湖には首長竜がいるって都市伝説がある。
首長竜の名前は、ショッシー。
この湖の名称が、『プ』から始まるんじゃなくて、本当に良かったと思う。
都市伝説は好きな方だけど、
『どうせ、ショッシーなんていないんだろう』
って思うところはあった。
もしショッシーが本当にいたら、キチンとした発見情報があるはずだと思うからだ。
少なくとも、呼吸のために湖面から頭を出すはず。
クジラだってイルカだってシャチだって、一応、呼吸の際には、頭の一部を海面から出すからね。
ところが、ボクが湖の岸に近付いた時だった。
フェロモン魔法の影響が人々に出ないようにと思って、極力、人から距離を取るようにしていたんだけど……。
そうしたら、突然、湖面からショッシーが頭を出してボクの方を見詰めてきた。
この時のショッシーは、メンチン大森林で出くわしたティラノサウルスみたいな巨大生物と同様に、目がハートマークになっていた。
『取説君:ルカ‐0721は、全身から超フェロモン魔法を放っています。そのため、同性愛者を除く全ての雄性動物(人間を含む)、及び異性愛者を除く全ての雌性動物(人間を含む)から愛されます』
『取説君:その分、ルカ‐0721は、基本的に異性愛者である全ての雌性動物(人間を含む)から敵視されます』
『取説君:但し、同性愛者である全ての雄性動物(人間を含む)は、ルカ‐0721に対して無関心です』
つまり、このショッシーは雄と言うことだ。
これがもし、雌だったら、多分、ボクに攻撃を仕掛けて来たに違いない。
『取説君:ルカ‐0721は、いかなる生物でも見ただけで雌雄を確実に判別します』
ただ、ボクへの反応から動物の雌雄は大凡分かるから、この機能って正直なところ不要じゃないかって思う。
今まで都市伝説でしかなかったショッシーが姿を現したんで、周り……と言うか、少し離れたところにいた人々が、一斉にボクの方に駆け寄って来た。
まさに全員が性器……じゃなくて世紀の瞬間の立会人だ。
勿論、ターゲットは言うまでも無くボクじゃなくてショッシーのはず。
でも、ボクとの距離が近付くにつれて、男性達は目がハートマークに、女性達は怒りの表情に変わって行った。
これも、フェロモン魔法の出力が下げられないせいだ。
さっきの串焼き屋のおっさんみたいな状態の男性達が大量に押し寄せてきたら、いくら何でもボクの貞操が危ない。
それに、女性達からも何をされるか心配だ。
殴る蹴るじゃ済まないかも?
でも、丁度、この時だった
ボクの頭の中で、
「アラートが解除されました」
と言う、電子音みたいな声がした。
勿論、声の主は、基本的に取説君。
早速、ボクは、ステータス画面を開いてアラートが解除されていることを確認した。
そして、急いで特殊機能ページへと進み、フェロモン魔法の出力を下限値いっぱいまで下げた。
これで、男性達も、串焼きやのおっさんみたいな状態から目を覚ますだろう。
女性の方も、我慢できるレベルには治まるはずだ。
取り敢えず、接近してくる人達の表情が元に戻った。
これで、面倒なことにならないで済むだろう。
同時にショッシーが湖に潜ってしまったけどね。
ボクのフェロモン魔法に魅かれて近付いて来ただけだろうから。
フェロモン魔法の出力が下がれば、ボクの近くにいる理由は無いってことだ。
「ショッシーが潜っちゃった!」
「ああ、ショッシーをもっと近くで見たかったのに!」
「残念!」
人々は、もの凄く残念がっていた。
この世界に、もしカメラがあったら、こぞって写真に収めたことであろう。
でも、これだけ目撃者がいるからね。
今後は、ショッシー見たさに、多くの観光客がショウサンゲン湖に訪れることだろう。
❖ ❖ ❖
ボクは、湖の周りをゆっくりと歩き出した。
面積がバイカル湖並みだから、とても一日で一周できる距離じゃないけどね。
それから、一時間くらいが経過した。
それなりに、結構な距離を歩いたと思う。
今、ボクのいるところから数百メートル先に、なんか人だかりができているけど、いったい何なんだろう?
ボクは、それが、ちょっと気になった。
フェロモン魔法かHPの片方でも下げられていないと、大変なことになることは、イヤと言うほど学習できた。
それで、万が一のことが無いように、ボクは、一応、フェロモン魔法出力もHP値も下限値になっているのを再確認してから、その人だかりに近付いて行った。
近付いて分かったこと。
先ず、一つ目は、人だかりは女性の集まりだったこと。
それから二つ目として、その中心には、もの凄いイケメン男子がいるってことだ。
ステータス覗き見スキルが発動した。
その男性の名前はジノン……って勝手に名前を知ってしまった。
自己紹介もされていないのにね。
彼は、Aランク冒険者で、魔法剣士とのこと。
しかも、Aランクの中でも、かなり上位に位置していて、Sランクに最も近い存在とか言われるレベルに達していた。
言うなれば、A+ランクだろう。
HPは98/98と、人間にしては限界値に近い高値だった。
でも、本人が、それだけ魅力的だからだろうか? HP抵抗性とフェロモン魔法抵抗性のダブル疾患(?)を患っていた。
つまり、高HP状態にもフェロモン魔法にも反応しない、完全不感症な身体になっているとのことだった。
間違いなく、イ〇ポだろう。
ちなみに、フェロモン魔法は、ボク以外にも使える人は存在するっぽい。
ボクほど強烈なのを放てる人はいないけど。
それから、前世の業のページに入ろうとすると、何故かエラーが出た。
エラーコードは、
『4869 Forbidden』
とのこと。
多分、
『4869』
と聞くと、某少年探偵マンガで出てくる薬のコードナンバーを思い出す人が、少なからずいると思う。
でも、ここで言う『4869』は、そんなマトモな数字じゃないと思う。
多分、『48手』と『69』を足したものだろうと、勝手に推察する。
『取説君:ルカ‐0721号は、聞いたり読んだりした単語を即座に下ネタに変換することが多々あります』
『取説君:ルカ‐0721号は、物事をエロと絡めて考える傾向があります』
ボクは、取扱説明書を開いて、エラーコードを確認した。
どうやら、4869 Forbiddenは、
『時期尚早との判断のため、女神様が、まだボクにアクセス権を与えていない状態』
を示しているらしい。
でも、
『エラーコードに女神様絡みのことが入っているなんて、ボクの製作者の魔導士エロスって何者?』
って、一瞬思ったけど、多分、これは魔導士エロスに関係なく、女神様の方で、勝手に後出しでアクセス権の話を追加したんだと思う。
ボクは、ジノンと目が合った。
すると、
「ちょっと、みんな。通してくれるかな?」
と、群がる女性達をかき分けて、ジノンがボクの方に近付いて来た。
「君は、この辺の娘かい?」
「いえ。ここには観光で来ました」
「昔、俺と会ったことってない?」
「いいえ。新手のナンパですか?」
「そう言うつもりは無かったんだけど……。実は、俺の昔の知り合いに似ていて声をかけてしまったんだ」
今のボクに似ているって、天然でその容姿なら、それはそれで凄いと思った。
ボクが言うのも何だけど、本当の意味で、その女性は、ムチャクチャ美人なんだろう。




