幸福論??
「あのぉ ウチのって天石門別命さまですよね?」
『あれなんか、普通にアメでいいわ…あの唐変木』
…いやいやいや、一般人間には畏れ多いって。
『手形を消せって頼まれたんでしょう?』
「…えぇ、まぁ。ただ私…休みなので
夜間清掃員に頼む事くらいいか出来ないのですが…。」
『あれも言ったと思うけど、
貴方にしか消せないわよ。手形』
『そもそも、普通の人には見えないし』
…なにその仕様。
『そうそう、貴方、昔からちょっと運がいいでしょう?』
「いえ、むしろ幸運とは縁がないと思ってます。」
『じゃあ聞くけど、大病した?』
「してません。」
『事故は?』
「ありません。」
『仕事は?』
「忙しいですけど、なんとか。」
『ほら、十分幸運じゃない。人はね、大きな幸せばかり探すけど、何事もなく明日を迎えられるのが一番難しいのよ。』
「…何事もなく…ですか?」
『意外とね、現場維持したまま生きていくって出来ないのよ。』
「…現場維持?」
『大きな可もなく、少しの不可もない…
変動なく毎日過ごせるのは幸福の原点よ』
…そんなノリでいいのか…毎日。
『それに貴方の手は浄化の手よ。
汚れを落としているじゃない』
…掃除屋ですからねぇ。
『だからアレと私の喧嘩に巻き込んでしまって
ほんとにごめんなさいね。』
『現状維持じゃなくなっちゃったわ。』
眉をタラリち下げ、申し訳なさそうに頭を下げられた。
…いやはや全く、その通りです。
とは流石に亮子も言えなかった。
小さく息を吐き聞く。
「私はどうしたらいいのでしょう?」
『お茶しない?』
「は??」
『とりあえず聞いてよ私の話』
ポンと手にした扇子を手のひらで打つと、
途端に喧騒が戻ってきた。
『スタバってとこ連れてってくれない?
一人じゃ敷居が高くって…注文の仕方もよくわからないの』
「…良いんですか?アメちゃんさま放置で」
『お灸据えてるんだから、いいのいいの』
フネさまはそう言って、
亮子のカートを引くようにして歩き出した。
『昔は茶屋だったから 黙って座れば
お団子とお茶が出てきたのよね~』
ふんふんと鼻歌まで聞こえて来そうだった。
…長くなるなぁ。きっと。
冷凍食品を買わなくって良かったと思った亮子だった。




