休みは休みなの
「ごめん…あめちゃん様…私、今日はお休みなの」
亮子はそう言って、再度店に入ろうとする。
『あー待て待て、待ってくれ』
どうやら、あめちゃんが一緒だと入れないらしい。
『わし、ボッチは寂しゅうて…』
亮子は大きくため息をついた。
指を一本づつ立ててた説明を始めた。
「その1 私は今買い物がしたい。買い物必要。」
「その2 ガラスを拭くにしても、お客様が行き来するとこでは清掃できない」
「その3 今夜は私は休み。他の清掃員に伝えて
やってもらう事しか協力出来ない。」
「you understand?。」
『…あのな、言い難い事なんじゃが、
あの手垢は、お主しか見えないし消せないぞ。」
なぬ??
「とりあえずじゃ、買い物へは行ってきて良いぞ、
わしはここで待っておる」
そう言ってあめちゃん様は 肩から飛び降り
ピョーンピョーンとボールのように弾み、
フッと消えた。
…待たなくて良いんで
亮子は、あめちゃんとやらの神様の言葉を、
頭から追い出し、買い物へ向かった。
買い物しながら
…この床、ワックス剥げてきちゃってるなぁ、
…あ、このカーペットのシミ目立つわ。
…うわ、蜘蛛の巣あるじゃん。
ついチェックして心にもメモってしまうのは、
性分という名の職業病だろう。
カートに山ほど買い出しもし、気分転換もしたところで、
古本販売をしている、イベント広場へ向かった。
…ストック料理本でも見つかれば良いかな。
カートを押しながら平台を覗き込む。
人はまばらだ。
亮子は肩をトントンと軽く叩かれて振り向いた。
妙齢の和装の女性が立っていた。
…??誰??
『ウチのが迷惑かけちゃったごめんなさいね』
にっこりと微笑んだ口は動いていないのに、
声だけが響く。
ゾワっと背中に悪寒が走る。
キョロキョロと周りを見回す。
…人が誰も居なくなっている。
向かい側で本を眺めていた老人も、
走り回っていた子どもを叱る女性も、
…レジの店員も…居ない。
『ちょっと、亮子さんだけ異空間に来て頂いたのよ』
…やめてくれ、あたしは帰りたいのよ。
とっとと買い物をして帰るべきだったと思った亮子だった。
…待っているあめちゃん様のことは
既にすっぱ抜けていた。




