ガラス
亮子は久しぶりに2連休を貰った。
夜勤明けと公休なので厳密に言えば、2連休ではないが。
それでも久しぶりの連続休みだった。
明後日からは日勤に入るので、
夜勤明けの休みを利用して、家の用事を済ます。
丸っと1日くらい
何もしないでゴロゴロしていたい。
実のところ
休みの時くらい職場なんぞ行きたくないのだが…
「買い出しには都合いいんだよね。」
ショッピングセンターに横付けで車を停める。
目の前の風除室の自動ドアへ向かう。
…え?開かない?
いや、自分の後ろから来ているお客様は
普通に入っていく。
一緒に入ろうとすると…閉まる。
立ち止まって自動ドアのガラスに映る自分を見た。
チェックのチェニックに、ジーンズ。
肩から掛けているトートバッグ。
肩から掛けているバッグのベルトに
「あなた誰?」
小さく呟いた。
『すまぬ、わしは天石門別命
あめちゃんとでも呼んでくれ』
「私…買い物したいんだけど。」
『わしも入りたいんじゃが…屋船ちゃんに
怒られちゃって』
「屋船ちゃん?」
『矢船大神と言ってな、家の守り神じゃ。
わしはフネちゃんと呼んでおるがの』
「へぇ~でも…それと私と関係ないじゃん」
『あるんじゃよそれが…そのガラス…』
亮子は再度ガラスを見た。
なんの変哲もない自動ドアのガラスだ。
『汚いじゃろ?いつもより』
…確かに【手を触れて下さい】の位置に
少し手垢の跡がついている。
ただもう営業中なので、
お客様が手をついた可能性もあり
一概に清掃されてないとは言い難い…
「これ?」
『違うわい、ほらあの高い位置にある手垢』
ドアのてっぺんに赤ちゃんの手のひらサイズの跡が
うっすら見える。
「あれ フネちゃんの手の跡なんじゃが。」
…拭けば自分で…
『フネちゃんとケンカした時、ついたんだが、
アレが結界になってしまって、わし…入れないんじゃ」
…だから、それと私の関係は??
『頼む…結界を消して、
仲直りさせてくれ』
肩で頭を下げられても、全くお願いの効果はないと思う。




