よりによって
『早く早く』
屋船様は片方でカートを押し
もう片方は亮子の手を必死と握って移動する。
『新作ってのを飲んでみたいし、
ほら スタバでお馴染みの
フ、フラなんとかっての』
「フラペチーノですね?」
『そうそう、そんな感じのと
ケーキも食べたいし…』
「かなり甘いですよ」
…そんなWの取り合わせ胸焼けがしそうだった。
『お願い』
つっと振り返って、亮子を拝み倒す勢いの屋船さま。
…なんだか憎めないんだよね。
スタバでは季節新作とやらの もものフラペチーノと
これまた桃もタルトをチョイスしてあげた。
『桃源郷ってあるのよ。
そこの桃を食べると病気まで治っちゃう。』
嬉しいそうに甘甘チョイスを口にし、
幸せそうに両頬を押さえる。
亮子はというと
変わり映えせず、ソイラテに、スコーン…
『もっと頼んでもよかったのに。」
なんと、「お代は頂戴しません」などと
サラッと店員に言われてしまっていたのだ。
なぜかって?
『だって神様ですもん私』
そんな設定ありなのか?はともかく、
小心者の亮子は、あれこれ頼めなかった。
…唖然としすぎて。
「それで?あめちゃん様との喧嘩の原因ってなんなんですか?」
場合によっては今夜、結界を消さないと
自分があめちゃんの面倒を抱える事になりそうで
亮子は尋ねた。
『あいつったら!見境な女性に声をかけるのよ』
「浮気?」
『そうじゃないんだけど、
口説くのが趣味?みたいな感じ』
「…はぁ」
ずずずずっとカップも底を啜りながら、
屋船様が続けた。
『玄関から入ったら、もう彼や私のテリトリー内なの、
だからね~ちょいと良い女がいれば、
すぐ、人のふりしてナンパするのよ。」
「ははぁ…」
『ただ今回はね、相手が、人じゃなかったの』
『あんなに闇雲に声かけちゃダメって言ってたのに』
「誰に声かけたんですか?」
『言霊って知ってる?』
「まぁ、一応。」
『神様同士ってね、相性ってものがあるのよ。縁を結ぶ神もいれば、福を呼ぶ神もいる。』
『逆に、絶対に関わっちゃいけない神様もいるの。』
「はぁ。」
『それなのに、あの唐変木ったら――』
『貧乏神様をナンパしたのよ!』




