浄化
二人は食事を済ませ、後片付けをした後、
おチビの居る部屋、お爺さんの居室へ戻った。
おチビは座布団で丸くなり、安心したように眠っていた。
「この子の食事は…。」
亮子は眠るおチビの横にしゃがんで撫でながら誰ともなく聞いた。
『普通の食事も出来るが、あまりにも辛い状況であったので
神力を与えたおいた。』
迦具土神さま仔の横に
まるで盾のように立ち言った。
『亮子殿、仔を浄化してやってくれぬか』
毘沙門天さまがその横で小さな頭を下げた。
「浄化って言われても…」
亮子は山川を振り返った。
「なんて言ってるんだ?」
「この子を浄化してやってくれって…。
やり方なんか知らないし。」
「掃除が専門だもんなぁ、俺たち…。」
「洗えば良いのかしら?」
山川は考えるように言った。
「この家…温泉を引いてあるんだ。」
「わ!温泉!すごい…」
「入る時は、湯が熱いから、足し水をして調節してくれ」
…素敵すぎる
「その仔犬を洗うなら、外の露天が良いと思ったんだが…」
「入れないの?」
「いや…電灯が切れてて真っ暗のままなんだ。
昼間なら良いけど…。」
洗うなら屋内のお風呂か…
「山川さん先に入って下さい。
その後、私が屋内でおチビを洗ったあと、
ちゃんとお風呂も洗っておきます。
…ついでに入っちゃうけど。」
「いや…先にその犬…おチビねを洗おう。」
全く何も考えずにおチビと名付けるなんてな」
クツクツと山川が笑った。」
「だって小さいんですもの。」
「名前はともかく、神さん達が言うなら
コイツを今すぐ浄化してほしいって事だと思う。」
「それじゃお湯が汚れてしまいます。」
「それから俺が洗ってから入るからいい。」
「だけどそれじゃ…申し訳ないし、やっぱり私が…」
「いや…俺が…」
『ごちゃごちゃ言ってないで
二人で入れば良かろう!!』
毘沙門天が、山川の肩に立って怒鳴った。
「!何を…」山川の顔が真っ赤になった。
無論、亮子まで顔が熱い。
反対側の肩に迦具土神さまが立ちこちらも怒鳴った。
『とっとと行け。
見よ!!このままでは仔の色が闇になってしまう。』
ハッとして亮子は仔を見た。
確かに薄汚れた色になっている。
「山川さん、タオル用意して下さい。
さっさと洗ってから考えてましょう。」
亮子はサッとおチビを抱き上げた。
赤い顔のまま山川は頷き、襖を開けた。
「こっちだ。タオルは風呂場にある。」
脱衣場は4畳くらいで、広い。
脱衣カゴの入った棚があり、
その横のタオルのストック棚があった。
亮子は腕まくりとスカートの裾を膝まで上げて結んだ。
山川の顔をまともに見れない。
山川も同様にズボンの裾をたくし上げ、
上着を脱ぎ、肌着だけになっていた。
扉を開けると広い洗い場に
岩に囲まれた透き通ったお湯が目に入った。
淡い蒸気が昇って居る。
山川が洗い桶にお湯を掬った。
水道から水を足し湯温を確かめる。
それから手桶にも…
亮子はそっと山川が湯を入れた洗い桶に
おチビを入れて手桶のお湯をかけた。
仔犬はすっぽりとおさまってしまった。
ブルブルと震えている仔に優しく声をかけて
毛を濡らしていく。
「おチビちゃん、綺麗にしようね。」
山川から差し出されたシャンプーを手に馴染ませ、
ゆっくり洗っていく。
…濯ぐ…洗う…濯ぐ…。
桶からおチビを出して最後の濯ぎ湯を手桶からかける。
さっきまで強張っていた仔の身体から、
少しずつ力が抜けていった。
仔が白い光に包まれる。
「なんだ!」
ブルブルブルっとおチビが全身を震わせた。
水滴が飛び散る。
手桶がカランと亮子の手から落ちた。
「おチビちゃんが…」
子猫ほどの大きさだった仔犬が
…大型犬になっていた。




