三神の仕事
「……なぁ亮子。」
「はい?」
「俺の家って、こんなに神様いたのか?」
「……私に聞かれても。」
『お主が知らぬだけじゃ』
奥津彦神さまが亮子の肩にフッと乗って言う。
『我は昔からおるぞ』
毘沙門天さまが、山川の右肩に乗った。
『爺さんも知っておる』
「……。」
山川は呆けたように天井を見上げた。
そして亮子を見る。
「俺、何も知らなかったんだな……。」
「君はいつも…彼らと話しかけていたのか。」
奥津姫神が、亮子の肩に舞い降りて言った。
『ここは良いところじゃな。仔も安らぐ』
『ささ、亮子殿 仔もさぞかし腹を空かせているじゃろう。
仔の食事の用意はできておる。』
『おお、奥津姫さん気がきくのう』
毘沙門天が答えた。
それと同時に
グゥゥ……。
「……腹減ったな。」
「……はい。」
二人とも顔を見合わせた。
そういえば、朝からろくに食べていない。
「何か作りましょうか?」
亮子はそっと、座布団に仔犬を置いて
そっとその背を撫で落ち着かせる。
小さく震え逆立っていた背中の毛が治って来た。
仔犬はまんまるな黒目で亮子を見上げた。
「ご飯作ってくるから。待ってて。」
『仔の世話は妾達がしておく。
二人は食するが良いぞ。』
奥津姫と彦神が仔に寄り添った。
「…おお!神さまってよりひな様だ!」
山川が声を上げた。
声に驚いた亮子が仔から手を離す。
「…見えた。一瞬だったけど。」
「もう一度見せてくれないか?」
亮子は仔の背に触れる。
仔に寄り添う二神が山川には見えるようだ。
「初めまして神さま…」
正座をして挨拶をする山川。
…何故だかすごく嬉しい。
「亮子…どうしよう。
二人とも雛人形みたいで可愛いんだが…。」
仔犬…おチビの背から手を離した。
「ご飯作りましょ。」
「あぁそうだな…何か食材あったかな~」
なぜ亮子が不機嫌ぽく見えるのか気にはなったが、
台所へ亮子と共に向かった。
「うわ!なんだこりゃ。」
台所へ入った山川が叫んだ。
ダイニングテーブルの上には、
炊き立てのご飯に、味噌汁
湯気のたった川魚の塩焼きに、
山菜の天ぷらが並んでいる。
小鉢が三品
白和えに、田楽…青菜のお浸し。
小さな皿には、香の物に梅漬けだろうか。
「…すごい…これって。」
亮子が呟くと、奥津姫がフヨフヨと浮かんで言った。
『山の神と我らからの気持ちじゃ。
存分に食すが良いぞ』
どこからともなく、
山葡萄と小ぶりのりんごが入った籠が現れると
テーブルの真ん中にトンと置かれた。
まるでマジックショーのように、籠の横に
ガラスの器に入った水饅頭も浮き出てくる。
「…これは神さま達がやったのか?。」
山川が亮子に尋ねる。
「神さま達…それに山の神さまからの気持ちですって。」
二人は顔を見合わせた。
「頂くしかないな…いや有り難く頂こうか。」
山川は見えない神さまにそっと頭を下げた。
『我ら三神は、台所を司る神ゆえ…造作もない事
気にするでない。』
山川は亮子にも椅子を勧めた。
自分も向かいの席に座った。
「なんでもできるんだな…神さまとやらは。」
熱々の味噌汁を啜りながら山川が言う。
…それにしても
山川さんの家って…不思議すぎる。
そう思いながら亮子も箸を手にした。




