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神ネットワーク

山川に続いて玄関を後にし

薄暗い廊下を歩く。


ふと目にしたドアを山川が開けた。

「一応 ここが客間と言う名の空き部屋だ。」

「自由に使ってくれ」


山川はドアを開けて、亮子の荷物を部屋の隅に置いた。

「布団やらは押し入れに入っているから

適当にやってくれ。」


「ありがとうございます。」


「悪いが先に爺さんに会ってくれるか?

…会えればだが…。」


年配者は夜は早く休むと言う。

もう休んでいたら確かに迷惑かもしれない。


「お相手の迷惑じゃなきゃ…なければご挨拶したいです。」


クッと笑いを押さえる声が聞こえた。

見上げると山川が拳を口に当てて笑いを堪えていた。


「おかしな事言いました私?」

ちょっとムッとしながら亮子が言う。


「違うぞ、さっきまでタメ口だったのになと思ってな」

「そんなに緊張しなくても大丈夫だ。」


…タメ口…

…そういえば、そうだったかもしれない。


「すみません…。」

「いや仕事中じゃないんだから、タメ口大歓迎だ。」

「…嫌味?」

堪えきれなくなったのだろう、

あははと笑いながら山川は言った。

「真面目に言ってる。タメ口が良い。」


そう言い切って山川は奥へと促した。

襖から細い白い光が漏れている。

ギュっとおチビを抱く腕に力が入った。


「この子も一緒でいいの?」

「飼わせてもらう必要あるから見せんわけにもいかないだろう?」

…そうだった。

…その為のお泊まりだったんじゃん。


「爺さん入るぞ。」


カラリと襖を開ける。


ちゃぶ台の上に湯呑みが一つ。

眼鏡がその横に置かれていた。


でも人は居なかった。


「…またやられたか…。」


「もう休まれたんですね。」


「…違うんだ…逃げられたんだ。

毎度毎度

急に思いつきで山へ行ってしまうんだ爺さん。」


『逃げたんじゃないぞ』 

迦具土神さまが、山川の肩に飛び乗った。


『山の神に報告へ向かったんじゃ』


「…亮子…今の声は例の奴か?」

「…今、山川さんの肩に迦具土神さまが乗ってます。」

山川は自分の左右の肩を交互に何度も見る。


「わからん」


迦具土神さまは可笑しそうに、

肩でふんぞりかえっている。

落ちそうで落ちないのが不思議な光景だった。


「…爺さんは、裏山の祠に行ったって事か…。」


『そうじゃ、亮子殿の抱えた仔の浄化が終わるまで

ここで預かるとでも話に行ったのだろう。』


「なんで俺が話す前に

爺さんがそんな事知ってるんだ。」


『神ネットワークって奴だな…我が話した』


声が上から降って来た。


「うわああ!」

思わず亮子が声を上げた。


天井からヌっと何かが降りて来た。


「どうした亮子!!」

山川が亮子の肩を押さえる。

亮子が天井を指差すが山川には何も見えない。


『これ、毘沙門天!驚かすでない。

仔も驚いて震えておる』


「毘沙門天だとぉ?!」

山川の声に、また仔犬がブルっと震えた。











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