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田舎家

山川の車に乗ってら、現実が戻って来た。

…亮子のアパートはペット禁止だ。


「そうだろうと思った。」

シュンとなっている亮子を見て笑う山川。


「俺んちしか無理だろう。」


『それはならぬ!』

「亮子殿出ないとダメなのじゃ』

『今は離れてはならぬのじゃ。』


「なぁ、ごちゃごちゃと色んな声がするんだが、

これがお前が聞いてる声か?」


「え?聞こえてるの?!」


「あぁ、最近お前と一緒にいると

なんか聞こえるんだよな。

今日は特にしっかり聞こえる。」


ハンドルを回しながら山川が答えた。


「…とりあえずお前の家に寄る。

それから俺んちへ行くから

お前は身の回り品だけ持って今日は俺の家に泊まれ。」


「えええええ!!」


「ごちゃごちゃ言う奴らの話を聞いたろう。

今日はとりあえずだ!

これからのことも決めなきゃならんだろう。」


それからは亮子の意思は無視され、

自宅前で車を降り仔犬を山川に預ける。

スーツケースなんてものはないから

マイバスケットに身の回り品を押し込んで

(流石に下着は包んだが)

後部座席に乗せ自分も乗り込んだ。


同時に仔犬が亮子の膝に戻り、

車が走り出す。

車は郊外へ向かう。

亮子は仔犬の背を撫でた。

「大丈夫よ、おチビちゃん。」



「山川さんの家って…お店から遠いんだ…。」

「…通勤は車で40分ほどだ。田舎っちゃ田舎だな…。」

「田舎…」

「悪かったな田舎もんで」

「そ、そんなこと言ってないじゃないですか~。」

「思っただろ?」

「思ってない!…ないです。」

あははと笑うながら山川が言った。


「爺さんの家なんだ。

俺は次男だからって貰ったんだ。」

「だからほんとに田舎だから安心しろ」


「お爺さんがいるのね…。」


二人きりじゃなかった。

ほっとしたような。

……ほんの少しだけ、残念なような。

そんな自分に、亮子は首を傾げた。



本線の道路を外れると

暗闇の中に果樹園だろうか、山肌に木々が綺麗に並んでいる。

うねるような山道を登る際には段々畑も並んでいた。


途中の脇道を入ると少し住宅が並んでおり

その奥まったところにポツポツ街灯が黄色い色を放っていた。

そのどんつきにその家はあった。


玄関の街灯が白く点いている。

奥の部屋からはオレンジ色の光が漏れていた。


「着いたぞ。」

家の前に横付けにされた車から

山川が降りた。

慌てて亮子も降りバスケットを持とうと後部座席のドアを開けるが、それより早く反対側から山川が取り出し持ってしまった。

「お前はその仔犬に専念しろ。」


「小汚いところだかどうぞ。」


山川は玄関を開けた。


家はまるで山を背負っているかのように見える平家だ。

薄暗い大きな山があるために玄関の灯りが

街灯のように感じた亮子だった。



『ほう…』

『これはまた…』


『いいですね~』


三神が呟く。

そしてすーっと山川と亮子から離れ

奥へ飛んでいった。


「ごちゃごちゃ言ってないで入れ。」


殺風景な玄関から亮子は小さな声をかけた。


「お邪魔します。」


チカチカっと玄関の電気が瞬いた。







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