出窓から
小さな固まりはブルブルと震えたいた。
「どっから出て来たんだ?」
小さく山川が振り向き小さく聞いた。
「ずっとテーブルの下に居ました。」
「俺には見えなかった。」
「見つけた!それをこっちへ渡して下さい。」
「ここはペット禁止なんで、こちらで処分します。」
「いえ、この子は私が責任持って飼います。」
亮子は出窓を振り返って答えた。
『ダメじゃ』
『その子は返してやるのじゃ』
『黙ってろ!彼女はアレを護ろうとしているだけじゃ』
『二人とも黙ってなさい。結界が薄くなるわ。』
亮子の耳に小さな声が聞こえて来た。
「な、何を…言うんです。
たかが知り合いのペットでしょう。」
管理人が近づこうとするが
なぜかキッチンには入って来なかった。
山川が言う。
「ペットは個人の所有権ってのがあってな、
この人は鈴木さんから頼まれていたんだ。
所有権は譲渡されているんだ。」
「そんな言い訳…通じない。」
山川はジプロックを見せた。
セキュリティロックナンバーのメモの裏を
読み上げる。
「猫の世話もお願いねby実花子」
その一言で腕の中の震えが止まった。
『あの馬鹿…いい事もしたな。』
出窓から3つの影が飛んで来た。
2つは亮子の肩にそれぞれとまり
1つは山川の肩に乗った。
『ふむ…こやつ…』
山川の肩に乗った1つが山川の横顔を見て呟く。
亮子の目に山川の肩に乗った姿が目に入った。
ひな様を守る左大臣のような姿でやはり白い髭。
背にした矢尻が赤く燃えていた。
『我は、迦具土神という。
お主の肩におるのは、奥津彦神と
奥津姫神という夫婦じゃ』
振り返って頭を下げる老人。
『よしなに頼む』
『よろしくね』
耳元で声が聞こえた。
「山川さん…」
「あぁ行くか」
「そこをどいてくれ管理人さん…」
山川は亮子に手を差し出し、
亮子はその手をしっかりと握った。
「寄越せ」
入り口を塞いでいた管理人から、
亮子に手が伸びる。
その手を山川が振り払った。
バシンと手が鳴る。
「…痛!あ、アチチ…」
振り払われた手が真っ赤になっていた。
管理人の横を通り過ぎる時に
悪寒が走った。
「許さんぞ、それは俺のものだ。」
また管理人の手が伸びる。
山川は止めようとまた手を向けた。
管理人のその手先から
黒い霧が二人に向かって噴き出して来るが、
全てが山川の手のひらから出た赤い光に弾かれてしまった。
山川も見えたのが、驚いたように
自分の手を表裏ひっくり返して見ていた。
「行きましょう…。」
今度は、亮子が山川の手を引いて歩き出す。
玄関で靴を履いている後ろに管理人が迫って来たが、
どうやらまた山川に弾かれたようだ。
振り返るとドシンと
尻餅をついた管理人が居た。
「失礼します。」
亮子は軽く頭を下げて
山川がドアを閉めた。
カチリとオートロックの音がした。




