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誰もいない

結局…来てしまった。


実花子の住むマンション。

8階建てのマンションの3階が実花子の部屋らしい。

メモを見ながら管理人室の前を通り、

共用ドアのロックナンバーを打ち込む。

扉がスッと開いた。


管理人のおばさんが、

受付窓から身を乗り出して怪訝な顔でこちらをみていた。


山川が立ち止まった亮子の背を押した。

「行くぞ。」


このマンションはペットOKなんだろうか?

シンと静まり帰った通路の前のエレベーターに乗り込む。

エレベーターが閉まる寸前に

管理人…ご夫妻なんだろう。

男女の姿がこちらへ向かって来たように見えた。


「不審者と思われたかもな」

悪役のような表情で山川が言う。

…確かに今の山川の顔を見れば、怪し過ぎるかも。

ふっと笑いが込み上げて来た。

なんでだろう、おかしいわけでもないのに。

…緊張してたんだ私


302号室

その前で山川が亮子を顎で促した。

ドアフォンを押す。

その指先が少し震えていた。

…何が怖いんだろう。


チャイム音が響くが応答はない。

二度、三度…

亮子は山川を見上げた。


チンという音がして振り返るとエレベーターが開き

管理人の男性が降りて来た。


「鈴木さんに御用でしたか…。」

少しホッとしたように見えたのは気のせいか?

「鈴木さんの部屋から妙な音がしたり

異臭がするのでお隣から苦情が出ていて…」


「…はぁ…」


「ご本人が全く姿を見せないので案じていたんです。

おそらく管理人の居ない時間帯を狙って帰られてるようですが…」


「それが私共に関係ありますか?」

山川がきっぱりと言う。

「僕たちは落とし物を届けに来ただけです。」

そう言うと山川は社員証を見せた。


「でもロックナンバーをご存知でしたよね?

御関係者ではないのですか?」


管理人も引かない。

亮子は小さなため息を吐いて言う。

「私と彼女が知り合いだから聞いては居たのです。」


「とにかくご本人がいないようなので

管理人さんに落とし物をお渡しして帰ります。」

山川はそう言いジプロックに入った一式を手渡そうとした。

管理人はそれを見て

「お願いします。一緒に確認していただけませんか?」

「ご友人として鈴木さんの安否確認だけでも…」


その時ドアの向こうから何かが倒れるような音がした。


「実花子?!」

思わず声が出た。


「…仕方ないですね、安否確認に立ち会いしましょう。」

山川が低い声で答えた。


管理人は頷くと腰からマスターキーを取り出し、

ドアを開けた。


「鈴木さん??いらっしゃいますか?」


コトリと今度は小さな音がした。


ためらいもなく亮子は駆け込んだ。


そして部屋の惨状に驚いた。


先程買ったと思われるものはリビングのテーブルび山積みになっており、おそらく先程の大きな音は

テーブルから猫の砂が落ちたのだろう。


リビング中がゴミなのか…商品なのかで溢れている。

部屋の窓は網戸になって開けられており

カーテンが揺れていた。


「実花子!」


3人で部屋から部屋へ移動するが

人の姿はなかった。


でも亮子は見つけてしまった。


キッチンの出窓に並ぶ小さな影が三つと…


テーブル下に震えている痩せ細った黒い物体を…。









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