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善きかな?

呆然としている亮子に、二柱の神様が言う。


『そげな怪しいところへ行く必要ないぞ』

『捨ておけ亮子』


「どうしようこのカードとか」

ジプロックに入れられた

住所のメモ用紙とカードキーを

手に取ることもなく呟いた。


「カコちゃん、カップも放置したままだし」


『忘れ物で届けるが良い』

『ゴミ箱に捨てろ』


亮子はおもむろに立ち上がり

ジプロックを手にした。

飲み残しのコーヒーを捨て、

自分が準備したカウンタークロスでテーブルを拭き、

椅子をセットし直し、歩き出した。


頼みの綱のインフォメーションへ

忘れ物として届けるために…。


そしてバックヤードの入り口を入ったところで、

しまったと思った。

忘れ物、落とし物はカメラの徹底している店内を通って、

インフォメーションに届けるのがルールだ。

つい習慣でダストカートを取りにバックヤードに入ってしまったのだ。


まぁ元々 亮子に預けられたのは事実だし

その様子もカメラには映っているだろう。

でもしかし…だ。


忘れ物として嘘の主張がしにくくなる。

…心情的にも…。


「やっちゃった」

はぁぁと大きなため息をついて、亮子はダストカートに寄りかかった。


「何がやっちゃっただ?」


不意に山川が後ろから声をかけて来た。


『よ!救世主だな』

『善きかな、少しは救われるぞよ』


言いたい放題の2人だった。


…何が救世主よ。ルール違反を注意されるだけでしょうが。


山川は黙って亮子を見下ろしている。

威圧ではないが、

不思議がいっぱいだぞという表情だ。

…ほら、ほら早く言ってみろって感じ?

なんで妙に嬉しそうなのよ山川さん。


「はぁぁ…」


亮子は仕方なく山川に詳しくは伝えず事情を話した。

友人の忘れ物だと言うこと。

インフォメーションに届ける前に

バックヤードに入ってしまったこと。

忘れ物は、住所が書いてある個人情報と

セキュリティカードが入っている貴重品な事。


「話はそれで全部か?」

…今度は威圧か?いや違う…言ってない事があるって

気づいてるから念押ししたんだ。


『善きかな』

屋船様の声が届く。

『言ってしまえ。』 唐変木はやっぱり唐変木だ。


渋々…亮子は実花子に託された事を話した。


「届けて断れば良いじゃないか」

「居なくなるのは明後日なんだろ?

仕事中でなければ今日も明日もいるんだろうが」


「あ、そっか」


今日は休日だから、あんな朝早くから買い出していたと言っていた。


「届けるなら付き合うからな。上司として見届けてやる。」


「そうですね。仕事終わったら行ってみます。」

「1人で行けますよ」


「貴重品だろ?きちんと返したという目は

あればあるほどいい。」

「仕事終わったらすぐ出るぞ。」


「…はい、すみませんがお願いします。」


全くなんでこうなった?と腑に落ちない亮子だったが、

猫の事も頭の隅にずっとあり


…なんだかんだと結局行く羽目になっていただろうと

小さく苦笑した。


なるべくしてなる。


『善きかな…』


屋船様の声が流れて行った。


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