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黒歴史

「いやぁ忙しいから…」


「亮子って休憩あるんでしょう?」


言葉を濁してなんとか断ろうとするも、


重ねるように綾子が言う。


…こいつは昔からこうだ。


思い込んだら一直線というか

相手が自分に合わせて当たり前のように話す。

都合が悪くなると話を変えて煙に巻く。


どれだけ言いなりになった事か。

どれだけこいつのケツ拭きをした事か。


本人は気づいてないのだろうが、

亮子にとっては黒歴史だ。


「休憩時間って何時から?」

「私はね荷物置いてくるからさ付き合えるよ。」

「どっかでお茶するのも良いし」


…こっちの話を聞けや


「お昼一緒に食べよっか?

サラダこぼしちゃったからお詫びに奢るよ」


…ユキさんも片付けたんだが、アウトオブ眼中か?


唐変木がもう大声でケタケタと笑っているのも

気に入らない。

屋船さままでやって来て扇子で口元を覆っているが

肩が大きく震えている。


「11時から30分休憩だから」


「やった~!昔もそうだったよね。

亮子って付き合い良かったもんね。」



亮子の脳裏に、


「一緒に会って!」


「まだ二人きりは恥ずかしくて……」


「亮子さん連れて来なくていいから」


「……は?」


という過去がフラッシュバックする。


昔から綾子は勝手に恋をして相手と恋愛してるつもりになり

舞い上がり…吹聴する。

こちらは彼女の言葉を間に受ける…


ところが…だ。


「もう綾子さん連れて来なくて良いからさ

2人でデートしようか。」


…なんのこっちゃ??


亮子はお人好しすぎて相手が

真面目に綾子の事が眼中になく告っているにも関わらず


…二股かける気?とマジにキレたりしたものだ。


あの頃は純粋だったなぁ。

幾度か繰り返される綾子の「あー勘違い」に

真面目に振り回された亮子だったのだ。


「わかった11時ね!荷物置いて戻ってくるから待ってて!」


「ちょっと!!!イートインコーナーで少し話し…」


「ちゃんと待っててね。お願いしたい事もあるし」


…こちらは仕事中ってわかってる??


綾子は言いたい放題した後、

カートを押して出て行った。


「すっごい友人だねぇ」


「昔からあーなんです。すみません。」


「じゃ、ちゃちゃと仕事済ませよっか。」

「午後からはゆみちゃんも来るから、最悪2人で回れるから

大丈夫だよ。」


…それを人はサボりと呼ぶ。


「…ありがとう、でも長話したくないから…

仕事って言って切り上げるわ。」


「まぁ精々頑張って。」

見透かされたようにユキさんに言われて

亮子は苦笑するしかなかった。


二手に分かれて巡回清掃を始めた。

気持ちは憂鬱だが、

それをさらに苛立たせる声が聞こえた。


あめさま事唐変木が

『亮子殿は、色々と引っ張ってくるなぁ。』


好きで絡んでいるわけではない。

風除室のガラスを拭きあげながら「うるさい!」と小声で言った。

カラカラと笑い声が返って来る。


『どうじゃ、わしの加護をやろうか?』


「はぁ!?ふざけた事言ってると

消毒しちゃうわよ!」


『くわばらくわばら、浄化されたらたまらんわい。』

笑い声と共に唐変木の姿が消えた。


アルコールで出入り口の手すりを拭き取りながら



…自分の黒歴史も、浄化したい


亮子は心から願った。

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