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誰?

今日は朝から不機嫌になってしまった。


開店早々に…


風除室でサラダが散乱したのだ。


オープンしてたった30分後…


お客様は恐縮しているし、


泥除けマットの下まで入り込んだキャベツは厄介だし、


カーペットに染み込んだドレッシングは


…果たしてシミにならずに落とせるのか?



一番厄介なのは

恐縮されているお客様が清掃を見守っていることだ。

めちゃくちゃ緊張するではないか!


なにせ他にも仕事の時間は迫ってくる中での作業。

手早く行い…「とりあえずここまで」と

手抜きならぬ中抜きで他の作業へ向かうことすら


「すみませんね。ちゃんと落ちますか?」


などと言われたら逃げられない。


そのお客様はキャットフードのパウチやら砂やらを

カートいっぱいに購入されている。

その他に出来合いのお弁当とかサラダとかを購入され


山となった猫用品の上に載せていたらしい。


「ほんとにすみません。」


「いえ、大丈夫ですよ。」


同僚のユキさんが笑顔で答えているが、

心の中では、亮子と全く同じ事を思っているだろう。


「見てなくて良いから帰って~」…と。


よりによってそれを楽しそうに笑いながら眺めている、

天石門別命さまこと 唐変木がいるのも気に入らない。

あめちゃん様なんて二度と呼んであげたくないと思った。


キャベツとの闘いは、清掃員の勝利に終わった。

泥除けマットを2人がかりで外し、マットとその下を箒で履き、仕上げに強力アップライト掃除機で仕上げる。


お次が厄介なカーペット部分。

ドレッシングがノンオイルだったらよかったのに…。

まず、表面の汚れを拭き取り、湿る程に重曹水をかけていく。

二、三分放置してから、タオルで叩き汚れを吸わせて行く。

この繰り返しだ。

重曹水をかけたところでお客様が声をかけて来た。


「亮子??」


くるりとお客様を見る。

見覚えがない。…が相手は自分を知っている?

「亮子だよね!私だよ私」

呆然としている亮子は思った。

…名乗れよ。


「私よ綾子!!あ、私整形したんだった。」

「二重にして歯の矯正したからわかんない?」


…確かに同級生に居た名前だが

顔がぜーんぜん違う…二重にしたどころじゃなかった。

想像がつかなかった。


「…綾子?なの?本当に?」

「そうそう!あ!そうだこれ見て」


綾子はおもむろに、傍に抱えたセカンドバッグから

免許証を取り出した。


「あ、綾子…綾ちゃんじゃん」


「亮子さん先にこれ済ませて!」


ユキの声が飛ぶ。

ハッと気づき綾子を無視してカーペットと闘い出した。

三度目の重曹水を叩いて吸い取った後に

ウエットクリーナーで吸い上げて行く。


「やっぱ残るねぇ」

小さな声でユキが言う。お客様の前だから尚更小声になる。


「これはこれで良しとしよう。完全に乾いてもダメだったら

カーペットごと交換しちゃおう」


亮子もまた囁いた。

そして聞こえても良いように


「これで完了。お待たせしました。もう清掃は終わりましたのでお気になさらずお気をつけてお帰り下さい。」


犯人?の綾子…お客様に精神的な圧力と取られないよう

にこやかに言った。


次の清掃へ向かう背中に声がかかった。


「ね、ちょっと話たいんだけど…」


厄介ごとに巻き込まれたなと直感した。









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