トイレの神様
亮子は慌ててモップを拾い上げる。
「たかだか恋…で人生
…じゃない神生とからが終えるんです?」
モップをラーグキャッチャーから外し、
カートのバケツに放り込み
新しいモップをつける。
「久美ちゃん、多機能トイレ行ける?
私、次の場所のトイレ行くわ。」
「えー もう女性終わったんですか?」
「そう、今日時間ないから、上部の除塵を
スルーしたの。」
本来なら掃除は上から。
吸気口から桟の埃を落としてから
清掃を始める。
基本のキだ。
「久美ちゃん、時には見ないふりも必要よ。」
…私はこのフヨフヨを見ないふりしたい。
亮子はカートを押して次のトイレへ向かう。
「終わったら合流します」
久美子の声にヒラヒラと手を振った。
うすさまの姿は、亮子しか見えないらしい。
『聞いてたもれ』と
目の前をチョロチョロと鬱陶しい。
亮子は、ヒラヒラ神様を引き連れ、
次の階の男子トイレへ向かう。
「それで、うすさまは誰を好きになっちゃって
困ってるの??」
『…そんな真っ直ぐに聞かないでたもれ』
袖で顔を覆ってしまううすさま。
「はいはいはい」
亮子は、小便器の清掃を始めた。
自動水栓なので、センサー部にタオルをかける。
途中で反応して流れてしまうのを防ぐためだ。
「久美ちゃん忘れちゃってアタフタしちゃうんだよね。」
鼻歌を歌いながら、洗剤をスプレーし、
上から順番に便器中をピンクスポンジで洗って行く。
縁から外側に小水が垂れてる跡は
特に丁寧に擦る。
目皿を外し、裏表満遍なく洗浄する。
ここは油断すると尿石だらけになってしまう。
少しの尿石なら…漂白剤が効果的だ。
亮子は薄めた漂白剤(次亜塩素酸)を吹きつけておいた。
小さな汚れが大きくなる前に…は必要だ。
タオルを外すとすぐに水が流れて行く。
このタイミングで洗剤を洗い流さないと、
洗剤分が残ったところに、より汚れが付着し、
すぐ汚く見えてしまうので、すすぎは大事なのだ。
最後に汚垂石、小便器の下を隅々まで擦り、
水タオルで拭き取り、さらに乾いたタオルで仕上げる。
洗剤分が筋で残らないように要注意だ。
仕上げに便器回りをアルコールで吹き上げて完了!
「ヨシ、今日も完璧!」
『な、な、聞いてたもれ』
『亮子殿…』
「で、誰に惚れたって??」
片付けをしながら、亮子は聞く。
『…水波能売神…乙女のような姫じゃ』
亮子はタオルを落とした。
「うすさま…男だったの?」
『…なにを今更じゃのぉ』




