②トイレのお掃除
亮子は清掃バケツと持ち
大きくため息をついた。
そしてチラリと久美子を見た。
ご丁寧な清掃。
洗面台の裏側、排水パイプの金属部。
手洗い石鹸容器。
カランも、排水の蓋も磨き上げる。
オーバーフロー部分にも、ブラシで磨く。
仕上げは洗面台の全拭き。
「久美ちゃん、
洗面台終わったら男性トイレまわってくれる?」
「女子トイレ個室手伝わなくて良いんですか?」
「ちょっと【厄介な汚れ】あるから、
私がやっとくよ。」
「わかりました。」
亮子は、覗いた【厄介】な個室を無視して
隣の個室から清掃を始めた。
上から順番にスポンジで磨いて行く。
手の触れるところは黄色のスポンジ。
便座を上げ、便器の中に手を突っ込んで、
縁裏までもスポンジで磨く。
こちらはピンクのスポンジだ。
ブラシでは時間がかかりすぎる。
フィルターを抜き、バケツで洗う。
これで消臭効果もバッチリだ。
一気に【厄介】な個室以外を洗い終え、
今度は拭き上げにかかる。
何枚もタオルを取り替えながら、
黄色タオルで手の触れるところ。
ペーパーホルダーやスイッチ部分。
アルコールを吹きつけながら拭き上げる。
ピンクタオルで拭き上げのは便器。
便器周りの拭き上げ方向は下から上と決まっている。
決して上下に擦らない。
それがムラなく光って見える拭き上げ方だ。
最後は便器を抱え込みように、
便器の後ろ側を拭く。
…ここまで覗き込み人はいないと思うんだけどね。
あとは全面床モップがけだけだ。
【厄介】を除けば…だが。
「さてと…」
亮子は【厄介】なトイレの前にたった。
「そこ退いてくれないと掃除出来ないんですが。」
便器には
足を組んで座る 妙齢な女性…が居た。
『いけず…散々無視してた癖に』
「掃除の邪魔なんですけど?」
冠から飛び出た真っ赤な髪は逆立っており、
額にはチャクラのような赤い印。
天の羽衣のような衣装に、
…サンダル??
情け無いような顔付きで亮子を恨めしげに見つめて居た。
「掃除している間だけなら
話を聞くので、退いてくれますか?」
『おおきに』
ふわっと舞い上がる天女
亮子は掃除しながら聞いた。
「あなたは誰なんですか?」
『妾は烏枢沙摩明王 (うすさまみょうおう)』
『うすさまと呼んでたもれ』
便器を洗い終え、拭き上げも終わった。
亮子はモップを手に、
奥から消毒薬をかけながら、モップがけを始めた。
うすさまは、小さくなってフヨフヨと飛んでいる。
「で、そのうすさまが、何悩んでるんです?」
『よくぞ聞いてくれました。』
「約束しましたからね。」
少しモップの水分が少ないようだ。
亮子は、スプレイヤーでモップを濡らす。
「それで?」
モップ掛けは、後ろへ進む。
拭いたところを踏まないようにだ。
『妾な……』
「はい。」
『人生……いや神生か。』
「……はいはい。それで?」
モップは最後の一往復。
「……よし、終わった。」
やっとモップががけが終わった。
モップを立てたまま
亮子はハンカチで汗を拭く。
『…そうなのじゃ、終わったのじゃ』
「え?」
『妾…恋をしてもうた。』
カラン…とモップが倒れた。




