ヤバい
山川が自宅前の駐車場に車を寄せた。
「荷物持ってやるから焦るな。」
実際には屋船さま達の出現で焦っていたのだが、
山川には「早く荷物を下ろさないと」と
オタオタしているように見えたらしい。
「ありがとう」としか言えないではないか…。
自宅アパートのドアを開ける。
1人では広すぎるかもと思っていた2LDK
実際に生活感のあるキッチン水回りと
寝室兼リビングの自室
本棚とPC、座卓1人しか置いてない洋間。
玄関にドンと荷物を運んでくれた山川。
「お、お茶くらい出すけど…飲んでく?」
少しの間があり山川が確認した。
「…無理してないか?」
「ううん、無理してないよ」
…ニヤニヤしている屋船さまと童ちゃんが目に入るけど。
「じゃ、エンジン切ってくるわ。」
一旦、山川が外に出た瞬間
「屋船さま!心臓に悪い現れかたやめて下さいね。」
ヒソヒソと声をかけた。
「ごめんなさいね。童ちゃんと一緒じゃないと
あなたの家まで辿れなくて…」
「妾も、すまぬかった。」
ちっとも悪びれてない2人に沈黙の西洋人形。
「とにかくお茶済ませたら帰ってもらうんで
それまで不意に声かけたりしないで下さい。」
「薄々感じているのではないかしら?」
扇子を広げて笑う屋船さま。
「それがヤバいんです。」
「何がヤバいんだ?」
つい声を荒げた亮子に、入ってきた山川が反応した。
「あ、あ、……
あ、そうだ。荷物を置く場所がなくってヤバいっ独り言です!。」
「…そうだ…ねぇ。」
よっこらしょと荷物を乗り越えて山川が入ってきた。
「お邪魔します、じゃこれを何処に置けば良い?」
玄関のお人形セットを指差す。
「そっちの洋間へ…」
亮子は殺風景な部屋に案内した。
テーブルの横に山積みされる人形セット。
その間に作り置きしていた冷えたオレンジティを
グラスに氷を入れて山川に出した。
お手拭きがわりのウエットティッシュも添えて。
「ふーん」
山川は亮子の本棚を眺めた。
ほぼ清掃や労務に関する実用書に混じって、
料理本や観賞植物図鑑、野草図鑑が混じっている。
面白いところでは 歴史本やなどの民間医療の本が混じる。
「おまえ…まとまりのない読み方すんだな。」
「あまり見ないで…恥ずかしいじゃん。」
実のところ料理本以外は
同僚の山川や久美子、ユキさんとも会話に役立ちそうだから
眺めていただけだ。
久美子は山歩きが趣味だし
ユキさんは足を痛めているし
田中の趣味はああ見えて、観葉植物を育てているらしいし
山川はお城巡りしていると聞いたから…。
「それでだ。俺に何かできる事はないのか?」
…亮子は一瞬黙って
本棚のてっぺんに座ってる3人の神様を
見上げた。




