思いつかない言い訳
「帰るぞ」
ダストカートを片付けていると山川がやって来て
亮子に声をかけ、スタスタと清掃控え室を出て行く。
「ちょ、ちょっと待って。」
一瞬、こちらを振り返った山川だが、
はぁと大きくため息をつき
「先に行ってる」
それだけ言うと歩いて行ってしまった。
「ねぇ山川さんご機嫌斜め?」
一緒に片付けていたユキが言う。
「わかんない…」
…いや心当たりは山のようにあるのだが。
「とりあえず こっちはやっとくから
早く合流した方がいいかも」
心配そうに言ってくれるユキさんには申し訳ないが
まだ言い訳も考えつかない亮子は
聞こえないふりをして片付けを済ませた。
「お疲れ様ぁ〜」
そう言って従業員通用口で2人で別れる。
トボトボと従業員駐車場へ向かう。
山川は車のドアの前でタバコを吸いながら待っていた。
「あれ?山川さんタバコ吸いなの?」
「あぁ、職場では吸わないがな。」
「喫煙所あるのに?よく我慢できるね。」
「他でイライラしなきゃ吸わなくても構わないんだ」
意味深な言い方に亮子はドキっとした。
それって…今日の私の行動??
確かに…独り言と言われても仕方ない。
怪しい行動もしている。
「まぁ乗れや」
山川は促した。
後部座席には山ほどのお人形セット
車が駐車場を出ると、前を向いたまま山川が聞いた。
「それで??」
「え?何がそれでなの?」
「言い訳は思いついたか?」
「…言い訳?」
「仕事を忘れるほどお人形ごっこセットを買った訳。」
「あ!!」
窓を開けた風切り音が急に小さくなった。
自分の鼓動だけが大きく聞こえる。
「…なんで…わかるのよ。」
「しっかり顔に出てるぞ。
『思いつかないよぉ』ってな。」
カラカラと笑う山川にしどろもどろになり亮子。
「しゅ…趣味になったの。」
「えらい急に趣味を持ったんだな。」
「えっと…親戚の…」
「天涯孤独だって言ってなかったか?。」
「っっっうわ! きゃー」
ダッシュボードの上に
屋船さま、童ちゃん…が笑いながら
そして一緒に西洋人形がムッとして現れて
思わず声を上げた。
「…なんだよ急に驚くじゃないか。
お化けでも見たみたいな声出しやがって」
お化けじゃないんだな、
でもある意味お化けみたいなもんなのか?
どう言い訳…いや話べき?
信じてはもらえないだろうけど…
悩みすぎて黙ってしまった亮子を
心配気に山川は横目でチラチラ見ていた。
…何か言えない悩みでもあるのか?…と




