大人買い
亮子はりかちゃん人形の着せ替えコーナーで
思わず声を上げた…
「可愛すぎる」
童ちゃんは小さかったので
選ぶ数も少なかったが
西洋人形貧乏神さまは普通の着せ替え人形のサイズでいけそうな気がしていた。
「大きさなんか気にしなくていいのよ。
妾がサイズを合わせられるから」
屋船さまは万能だった…
もちろんお財布万能だ。
「…着物もある」
亮子は自分が楽しんでいた…
両肩に神さまを乗せているにも関わらずだ。
そしてそれをまた山川が見ていた事も、
全く気づかなかった。
気づいていたのはクスクスと笑う屋船さまだけだった。
何種類かの洋服や小物まで買い
…シルバニアのお家シリーズやらリカちゃんハウスやら
家具セット…食器やら家電やら
「大人買いって怖い」
自分のお財布が全く傷まないのも
拍車をかけていた。
お買い物カート山積みにしてレジを出たところで
山川に声をかけられるまで
亮子は完全に浮かれていたのだ。
「休憩時間すぎてるぞ。」
「うわ!ヤバ!」
「おまえさぁ、いくつの子どもいるんだ?」
「いないわよ!これは私が…」
と言いかけてハタと気づいた。
いい年の大人がこれほど買い込むなんて
様子がおかしい事に。
「おまえの趣味か?」
「そ、そう…いや違う…あの」
「まぁいいわ。荷物になるから俺の車に積んでおけ。
運んでやる。」
…いや今ロッカールームで開けたいなどど
言える雰囲気は全くなかった。
自分の右肩を見れば、コロコロと笑っている屋船さま。
「良いわね〜運んでもらいなさい。
例のあの子は私が連れて行くわ。」
「そうじゃの、屋船さまがそうおっしゃるなら
亮子殿が仕事終えてから楽しむとしようぞ。」
童ちゃんまで同意する。
「唐変木は、閉じ込めておくから安心して」
2人はそう言ってフッと消えてしまった。
あたふたしている亮子に
「おまえ、最近 独り言も多いよな。
疲れ溜まってるんじゃないか?
勤務固定にするか?」
と心配そうに顔を覗き込む山川。
…近いってば!
グッと体を引いて、
「荷物お願いします」とカートごと山川に預けた。
足早にロッカールームへ行き制服に着替える。
西洋人形貧乏神さまの姿はどこにもなかった。
やばいやばい…
亮子はダストカートを押しながら、
どう言い訳しようか考えながら、店内のゴミ回収を始めた。
姪っ子のプレゼントとか
友達の子どもとか
…手は無意識に動いている。
燃えるもの、燃えないものを仕分けしつつ回収して行く。
燃えるのは紙だけとかではない。
ちゃんと炎が出ても焼けるものを燃えるゴミ
溶けてしまうものを燃えないゴミ
そのほかはペットボトル 缶 瓶 金属
傘のように金属とビニールとかが一体になったものは
複合ゴミ
カートの中で仕分けしながら回収し
大急ぎでゴミ保管庫へ出しに行った。
結局、良い言い訳は全く思いつかなかった。




