可愛いは正義
「風邪ひいたら可哀想じゃん」
速攻で亮子は答えた。
「うん、ボーイッシュも似合うよ姫さん」
「妾は、こう足が出てると恥ずかしいのじゃが。」
ロンTに短パン。
髪をツインテールにしている姫さまは
モジモジしている。
着古した着物は、広げてロッカーの中に張り付けて置いた。
すると 西洋人形が聞く。
「神様が風邪ひくの?」
「知らない」
「知らないのに服買ったの?」
「だって寒そうだったし」
「意味わかんない」
「私も意味わかんない」
あははと亮子は笑った。
「楽しかったのよ私が。」
今はシルバニアのドレスに着替えた姫さんを見て
うんうんと頷く亮子。
西洋人形貧乏神に
「ねぇ、この服似合うよね?可愛いと思う?」
とついつい聞いてしまった。
「…知らない。」
「えー、おしゃれって見てても楽しいでしょ?」
「別に」
と言いながらチラチラ見ている。
西洋人形貧乏神さまは
昔ながらの西洋のドレスアップだ。
濃いえんじ色のドレスに白いレース
ペチコートを幾重にも重ねている。
レースのソックスに編み上げ靴。
金髪の縦ロールに、
斜めに被ったドレスと共布のプリムの様な帽子。
仁王立ちしてなければ、可愛いはず。
「ねぇ あなたも着替えて見る?」
「なぜ私まで?」
「え、だって可愛いからよ。」
「それはいい案ね」
突然、背中側から声がかかった。
振り返ると屋船さまが小さく宙に浮いていた。
「誰よあんた。」
「あなたが抱き込んんだ 唐変木の妻よ。」
「あ……」
西洋人形貧乏神さまは逃げようとしたのか
身を捩った。
「無駄よ。ここは屋敷の中。
私の力が発揮できるところよ。
あめさまは玄関しか威力はないし
あなたは誰に憑かないと威力はない。」
そしてそっと
親指貧乏神さまを見てにっこりと微笑んだ。
「我こそ、お主に会えて嬉しく思うぞ
元座敷童よ。」
「や、屋船さま…御言葉がけ勿体のうございます。」
「もう一度座敷童に戻れそうだな。」
「あい…妾も、力が重なっておるように感じまする。
童の力と貧乏神の力が…」
「そうじゃろうて、お主は純然な座敷童には戻れぬかもしれぬが、人のいるところを選んで居場所を作れる
『移動型』の童になりそいじゃの」
「なんですかその移動型って」
亮子は親指貧乏神さまの髪を
編み込みしてリボンを結びながら尋ねた。
「もう場所に囚われなくて良いと言う事じゃ。
本人が居たいところへ行けるのじゃ。
…人の善意のあるとこなら、どこでも…な」
「行くもよし帰るもよし。
力は小さいが、小さな幸は与えられる。
ただ傷つけば貧乏神の力が増えてしまう事
夢夢忘れる事の無きように。」
「はい 屋船さま」
「ちょー可愛い」
リボンを結んで、
シルバニアの編み上げ靴を履かせ
白いレースのエプロンをつけたら
大草原の小さな家の主人公のようだ。
膨らんだ袖口には
花柄の刺繍もしてある…。
「なんであんたばっかり
良い目に遭うのよ!貧乏神のくせに!」
拘束されて動けない西洋人形貧乏神が怒鳴った。




