貧乏神って美形が多い?
マジ勘弁と思いながら、
それでも仕事は止められない。
次の巡回場所であるトイレ、風除室、休憩室は
できるだけ時間通りに回らないと、
お客様に迷惑をかけてしまう。
心の中で、罵り言葉を爆発させながらも、
亮子はパチンと両頬を叩いて気合いを入れた。
「憑いちゃったものは仕方ない。
今は…仕方ない…」
清掃バッグの中を整えて、
用具庫を出ていく。
ポチっと肩に親指貧乏神が相乗りを決め込み。
「そこなのね」
「邪魔かいのう?」
「落ちるから胸ポケットでも入っててよ。」
「あいわかった」
モゾモゾと胸元のネームの入ったポケットへ
入りこみ、
両手でをポケットの縁にかけ
ちょこんと顔だけ出している。
それだけ見れば…見れる人が居れば、
可愛らしい絵面であろう。
次のトイレでは、何事もなく
手早く清掃が出来た。
不思議な事に、お昼時にもかかわら
お客様が新たに入って来なかった。
「ありがたいわ〜」
「そうじゃろ?」
「えー何かしたの?」
「ちょいと結界をな…
亮子どのの仕事が捗ると思ってな。」
「ありがたいけど、お客様が困るような事に
なっちゃうのもだめだからね。やめてね。」
因果関係はわからなくとも、
トイレだけは何よりも優先されるべきと思う
亮子だった。
風除室へ行き、
ゴミ箱からゴミを回収し
床を掃除機をかけてモップで拭いていく。
滑って転ばないように、
丁寧にに足で実際に滑らないかも確認していく。
「おや、おまえ、面白い物を憑けているな。」
あめちゃんさまが、壁の飾り棚の上から声をかけて来た。
もちろん その横には西洋人形のような貧乏神さま。
「うるさい」
マスクの下で小さくつぶやいて
清掃を済ます。
「へぇ、あんた貧乏神じゃん」
西洋人形が口を開いた。
「変な格好の貧乏神じゃん。」
「妾は…貧乏神じゃない。」
「何言ってんの、プンプン同じ匂いがしてるわ。
あはは、自分が貧乏神だって認められないのね
ちっちゃくなcゃってバカみたい」
「これこれ、争うんではないぞ」
あめちゃん様が嗜める。
「そうね。あんな奴どうでもいいわ。」
「あ、あん…な奴だと?」
亮子は胸にポケットを上から押さえて、
親指貧乏神を抑え込んだ。
「ほっときなさい。今は仕事中なの」
ガラス面の手垢を拭き取り、
ポスターのガラス面を除塵し
そそくさと風除室を出た。
「あないな言われ方…」
「でも…姫さま貧乏神になっちゃったのは
事実だからね。怒るだけ損」
休憩室に向かいながら、亮子は答えた。
「同じ土俵に上がる必要はないわよ。
姫さんは姫さん、お人形さんはお人形さんよ。
同じじゃなくていいんだよ。」
まぁ2人ともかなりの別嬪さんだけどね。
そこだけは同じ部類かも。
それにしても
感情がなくなってしまったと言う
お人形貧乏神が、あんなに感情を表すなんて…
なんか変だなと思った亮子だった。




