とりあえず
誰にも見てもらえない。
当たり前の存在になって忘れ去られる…
身も心もだんだん小さくなってしまう。
「まぁそれはそれで切ないね。」
「そうなんじゃが…どうしてそんことわかった風に言うのじゃ?」
少し不貞腐れたように貧乏姫さまが言う。
「私も清掃してて思うもん。」
「え?」
「綺麗になったって誰も言わないし。」
「……。」
「でも汚れてたらすぐ怒られる。」
「それは辛いの。」
「うん。仕方ないよ、それでご飯食べてるんだもん。」
「それが当たり前か…当たり前…納得出来なくても当たり前…」
ブツブツと小声でで言う。
両手で顔を覆ってイヤイヤするように
「あぁ、じゃが、妾は悪さをしてしまった。」
「したね。」
「うぅ……。」
「でも、見つけたじゃん。」
「でも…皆が嫌な思いをしただろう…。」
「誰だって消えちゃうのは嫌だもん。
姫さんは自分の居場所が欲しかっただけじゃん。」
「これからは、『構ってちゃん』じゃなくって
相手が嬉しいって笑ってくれる事すればいいんだよ。」
「構ってちゃん?」
「そ、」
何事もないように亮子は、用具庫の
水場を洗い出した。
目立った汚れはないものの
次の人が使う時に綺麗な状態で使って欲しいから。
…と言うより自分が汚いとこで
タオルとか洗いたくないだけだけど。
「構ってちゃんはね。『見て見て〜私はここにいるよ』
「聞いて聞いて〜私の話を聞いて〜』って
人が自分に注目するように イタズラする子のこと。」
親指貧乏神さまの顔は、
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになって行った。
「妾は『構ってちゃん』だったのか。」
「そそ、普通に話しかければいいんだよ。
『遊んで』とか『聞いて』とかね」
思わず、亮子はポケットっとからティッシュを取り出して、
親指貧乏神さまの鼻を拭き
タオルハンカチを濡らして、優しく顔を拭いてしまった。
「亮子殿…」
…その途端、ピカ〜っと親指貧乏神さまが
光り輝いた。
…なんかヤバい事をしてしまった?
「亮子殿…妾…お主に憑いてしまったぞな」
やってしまった。
ズルズルと座り込んだ亮子だった。
「え?」
「なぜに驚く?妾を浄化してくれたではないか。」
不思議そうに問う親指貧乏神。
「え?じゃない。」 亮子はため息と共に吐き出した。
「なんで浄化されたら私に憑くのよ。」
「知らぬ。」
「知らぬじゃない!」
親指姫さまは、
自分の手を見つめていた。
さっきまで煤けたような灰色だった袖が、
淡い桃色に変わっている。
「あれ?」 亮子が気づいた。
「なんじゃ?」
「ちょっと色戻ってる。」
キョロキョロと自分の姿を見る姫さま。
「本当じゃ!」
「本当に元座敷童なんだ。」
「うむ!」
「うむじゃない。」
「じゃが憑いてしまった。」
「そこ重要!」
申し訳なさそうに姫さまが言う。
「とりあえず、勘弁しておくれ。」
頭を抱える亮子だった。




