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掃除屋さんは心も綺麗?  作者: 黒米 紅子
天石門別命と屋船さま
13/21

浄化

「バカかおまえ」


夜間清掃に出勤したら開口一番に

山川に言われた。


「連休だったんだろ帰れ」


「どうしても用があってさ」

「用が済んだら帰れな」


山川はそう言いつつマシンを動かしながら仕事へ向かった。新人教育らしい。



山川は清掃員ではなく社員だ。

本来はサラリーマンのように8-17時の定時のはずだが

時々こうやって夜間清掃の教育や

点検のために色々なシフトに入ることもある。

よりによって今夜がそうだったとは…


「タイムカードちゃんとつけよ!!」

大声で振り返って山川が叫んだ。


清掃屋さんも人件費節約で

清掃ロボットの導入が進んでいる。

でも使う人間はアナログだ。

いくらロボットの性能が上がっても、

使用する人間の性能が上がってるわけではない。


それに最終的に「綺麗、汚い」を判断するのは人だ。

特にトイレや洗面台などは、人の手でないと

清掃は難しい。

ロボットに使われる人には

なりたくないなと感じる亮子だった。


亮子は例の風除室に、ワイパーとタオルを持って向かった。

案の定 屋船さまが浮いている。

ガラスの外にはあめちゃんが情けない顔で張り付いていた。


「貧乏神さまは?」

『外の唐変木に張り付いてるわ』

「外せないんですか?」

『【君のような人と一緒にいたい】なんて闇雲に言っちゃうから、貧乏神が【居たくない】と思わない限り無理ね』

「…言霊」

『神さまの言うことは絶対だからね~

まぁ、浄化してやってよ。困るのは本人だし』


「良いんですか?」


『貧乏神が浄化されれば良いんだけどね。

貧乏神だって…とりついた人の行動や気持ちで浄化されるのよ。』


『取り憑かれた人が小さな事でも幸せだと感じれば

感謝をし続けていけば…貧乏神が幸せを感じれば浄化され

福運となるのにね…』


『人は欲が多いし、良いも悪いも神さまのせいにして神頼みするからね~』


亮子はお年始を思い出す。

毎年毎年 幸福を願ってお賽銭を投げる。


『神さまに頼む時はね。【私は◯◯を頑張ります。見てて下さい。】とか、【これをやって幸せを感じてます。ありがとうございます。引き続き頑張ります。】って願うのよ。』


…宝くじが当たりますようとかは邪道か。


『うーん、当たるように何かを頑張るって願えば良いかもね』


…徳を得るためには、徳を積むって事ね。


それでもいつも通りに、神社で願ってしまうんだろうと思った亮子だった。


ガラスに水を噴きつけ、ワイパーで手垢を消していく。

ワイパーの汚れをタオルで拭きながら清掃を続けた。

最後はガラス下の桟を拭き上げて終了だ。


内側の汚れが綺麗に落としていく内に

今度は外側の汚れが目立つようになってしまった。

結局ガラスは両面を一度にやらないと

綺麗にならないなぁと実感した。


「終わったか?」

山川が声をかけて来た。

「うん 気になってた手垢が取れた」

「帰るぞ」

「はい片付けたら帰ります。」

「だから帰るぞ、送るから」


そう言い残し山川は去っていく。


『見込みありね。』

あめちゃんに縋りつかれて居る屋船さまがウフフと笑った。






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