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掃除屋さんは心も綺麗?  作者: 黒米 紅子
天石門別命と屋船さま
12/17

大食いの汚名

「おまえそんなに食うんか?」


振り返った亮子の目に同僚の山川の姿が飛び込んできた。

大きなガタイにスーツ姿。

もしゃもしゃの茶髪頭は相変わらずで、スーツに似合わない。


山川には屋船さまは見えてないようだ。


『私の事話してもいいわよ』

…そんなもの信じて貰える訳がない。


「タッチパネルで間違っちゃって…」

誤魔化したが、信じてもらえたかは別問題だ。


『誘いなさい』

屋船さまの口調が厳しくなる。

なぜだか断れない。


「助けると思って一緒に食べてくれる?」

「俺は良いが…わかった。店員に言ってくる。」


山川はチラリとテーブルを見た。

水のグラスが二つある事を確認したようだが、亮子は気づかなかった。


『ふーん』


屋船さまが亮子の隣に座りなおす。

ちゃんとグラスをカトラリーも移動させた。

そしておもむろに、食べ出した。


「腹減ってるんか?食うの早いな」


水のグラスとカトラリーを手に山川が前に座った。


「あ、うん」


…もう冷や汗タラタラもんだ。


「じゃ遠慮なく頂きます♪」


はたから見たら二人…実は三人で食事が進んでいった。

亮子には味なんかさっぱりなのに、

屋船さまは「美味しいわね」と声をかける。

思わず「そうですね」と返事をしてしまう。


「何がそうですなんだ?」

トマトを口に放り込みながら山川が聞いた。


『言霊の話をしなさい』


「山川さんは言霊って知ってます?」

「言った言葉に力が宿るって奴だろ?」

亮子はチラリと屋船さまを見る。

『そう、言った言葉が現実を引き起こすってことね。

自分の事を信じてくれるかお聞きなさい。』


「え?…それって…」

「なんだよ、俺がそんな難しい事知ってるのが不思議か?」

「いやそうじゃなくって…あの…あのですね…。」

「なんだ?」

「…いきなりで悪いけど、私の事…言う事信じてくれる?」

「信じるも何も信じてるから、こんな奇妙な陰膳に付き合ってるだろ。」


…陰膳に見えたんだ。


屋船さまがコロコロと笑う。

『彼良いわね。私は亡くなった人なのねぇ~』


「んで 何を信じろって?」

「陰膳じゃないのこれ」

「全部を食う気だった?」

「違うの…いるのここに見えないけど、食べる人」

「俺以外に?」

「そう」



「じゃ、自分の分ちゃんと食え。」

「え?」

「見えなく人が食べるように

おまえはおまえの分をちゃんと食え。

そんな痩せっぽっちじゃ倒れるぞ。」


『やっぱ良いわね彼。大事になさい』


そう言って屋船さまはフッと消えた。


『貧乏神の話は今夜ね』


そう言い残して。


やっぱり休みはなくなってしまう予定になった。


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