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はなみの夢  作者: 彼岸
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花実の下で

それから、長いこと。

列車は動いていた。

途中、駅に停まったみたいに、扉が開いて。

青空がそこから見えて。

そこから、金魚が降りてしまった。

なんか、少しだけ、頑張れって言われたような気がしたけど、それも一瞬だった。

また、扉が閉まって、列車が走り出す。

花実ちゃんがいる駅まで、まだあったみたい。

僕は、いつのまにか、うつら、うつらとしていた。

いけない、と必死で起きていようと唇を噛んだりしていたけど、すぐに。

目の前が真っ暗になってしまった。


気づくと、列車が停まっていた。

扉から、バス停みたいに、赤い丸い標識だけが立ってるのが見える。

標識は、赤く塗りつぶされているだけで、何も書いていない。

あとは何もない。

降りるだけ。

ここが終点だとわかった。

すぐに、降りた。

降りると、列車はどこかへと走っていってしまった。

列車は、すぐに消えてしまった。

僕は本当に、浮いている。

水面が足にはなくて、本当に青空だけが僕の周りに広がっている。

ただ、青空の中。

一人だけ、ぽつんと。

浮いていた。

ふと、目の前にぼんやりと、何か見えてくる。

ピンク色の、何か。

花びらが飛んできていた。

ピンク色の、毒々しいほどのピンク色の、桜の花びら。

僕の顔の横を飛んでいった。

この桜の花びらが来た方向、花実ちゃんがいるとわかった。でも、僕はすぐには行かなかった。

ただ、じっと目を凝らす。

すると、だんだんとピンク色の何かが迫ってくる。

それは、桜並木。

毒々しいほどの、濃いピンク色の、花びらに覆われた。

そこから、一気にぶわっ、と桜の花びらが、こちらに舞ってくる。


やるしかない。


そんな気がした。

一気に青空の中を駆け出した。

ぶわ、と足元を風が舞った。

それと同時に、たくさんの花びらが、視界いっぱいに飛んできた。毒々しいピンク色が、体に何枚もついた。

ツンと鼻を何かがかすめた。

それでも構わなかった。

桜並木の薄い水色の木の枝が視界の横、泳ぐように過ぎ去っていく。

ただがむしゃらに、足を動かす。

ぶわ、ぶわ、と足から音がする。

ふふ、と耳元で何かかすめる。

それに振り向く間もなく手を上げる。

青空と桜並木は綺麗なはずなのに、それが流れていくのを横目に手を、足をただ動かした。

荒い息がどこかから聞こえてくる気がした。

突然視界中にピンク色のものが覆った。

でも、それも掴み取って走り続ける。

ピンクまみれの体に、目もくれずに。


目の前。

いや、もっと奥。

花実ちゃんが。

立っている。

僕は、ただ花実ちゃんへと走った。

花実ちゃんは、不思議なことに花びら一枚ついていない。

それがむしろ鮮やかで。

僕は抱きつくように手を広げて、花実ちゃんへ走る。

ただひたすら。

花実ちゃんの琥珀色の目。

それが僕の方に光を向けた。

白い肌が、ピンク色っぽく、鮮やかに彩られる。

花実ちゃんの肩。

ふ、と触れた時。

僕は叫んだ。

「目を覚まして!!」

その時、突然ぐんっ、と体が重くなる。

花びらが膨れるように重く、大きくなる。

それに抗えなくて。

いや、抗うこともなく。

僕は下へと落ちていった。

そして。


ガツんっ


何か、固い何かに叩きつけられて、僕は意識を失った。


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