占い
近所のスーパーに行った。
僕たちは美味しいコーヒーを飲んだり、楽しく過ごしていた。
お父さんが本屋に行きたいというから、お母さんも花実ちゃんも乗り気で本屋がある階に向かう。
ふと、通路の端に目がいく。
「あれ、やってみたいな」
僕はなんとなく、タロット占いのブースを指差した。
「あれ?いいの?」
お父さんは少し渋っていたけど、お金を出してくれた。
黒いセパレートで分かれてたけど、その辺の通路の角にあるような、入りやすいところだった。
「こんにちは、まぁ気楽にやってきましょう。何を占いたいですか?」
「「将来のこと」」
はっ、と顔を見た。
花実ちゃんも、占いには興味津々だった。
まさか、そこまで合うなんて。
ちょっとびっくり。
「…なるほど。じゃあ、二人とも、占いますか!」
…なんて粋な占い師なんだろ、と思う。
占い師はベールをかぶってたけど、顔は丸い感じの男の人で、優しそうだった。
「こちらですね。どれ…吊るされた男がある。苦しい選択になるでしょう。ですが、死神は逆を向いている。これは終わりではなく"再生"の兆しです。犠牲を払うことで、ようやく動き出します」
「なんか、すごいですね。」
「まぁ、犠牲っていっても、そんな大したことないかもしれないし、勉強する、とか、とりあえず我慢してみる、とかいうことがほとんどですよ」
それが、重たかった。
犠牲。
夢の中でも聞いた言葉だ。
腕やお腹のあたりも、重たくなる気がした。
ぎせい、ってそんなに重たいんだろうか。
花実ちゃんに、いつかは犠牲を払わなきゃいけないのかな。
でも。
占い師のお兄さんは花実ちゃんに聞く。
「…その子が心配ですか?」
「はい。この子の犠牲って?」
「心配しすぎることはありません。その子はちょっと怪我するかもしれないけど、それからあなたの一生物の友達になってくれるかもしれませんよ。」
「ほんとに!」
「はい。」
「よかった〜ありがとうございます!」
こうして、占いは終わった。
優しいお兄さんだから、というのもあるんだけど。
その言葉は、どこか説得力があるように思えた。
だから、希望が持てた。
はっきりした。
「…良かったよ、占い師のお兄さんも優しいし、犠牲って言っても、その後いい感じになりそうだし。」
繰り返すように花実ちゃんは言った。
何度も、語りかけるというよりは、
確認するみたいに。
お父さんは遠くで本を見てて、お母さんは会計に行ってる。
ざわざわした本屋は、どこか落ち着かない。
お腹痛くなってきたかもしれない、
そんな感じがした。
「花実ちゃん、何かあったの?」
なんとなくだった。
なんとなく。
それがある気がして。
花実ちゃんは黙った。
じっ、と僕を見た。
「…何も。」
それは、言い聞かせてるみたいだった。
「…ねぇ、本当に?」
「……秘密にしてね。私、この家、出てく」
「なんで?」
「…今度、親戚の家に行くフリしてね、」
「でてくの。」
「だって。」
「リーリが。」
「リーリが。」
「夏休み終わったら。」
「どこかに行かせるって。」
「ママとパパが、話してて。」
「それで。」
花実ちゃんは、黙った。
何も言わずに、ただぎゅっ、って、
きつく、きつく、
僕を抱きしめた。
僕は、それが気持ちよくて、
優しすぎて、やわらかすぎて、
思わず大声で泣きそうになった。
でも抑えて、ひく、ひく、と肩を震わせた。




