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第四話 営みをつなぐ橋 二

 その日から

 一人と一匹?の

 暮らしが始まった


 そのものは名前はなかったが

 少女が不便だというので

 「かずら」となった

 少女は 自分は

 「つる」

 だと言った


 屈託のない

 「ツル」と

 「かずら」の生活は

 しずかでおだやかなものだった



 だが

 自然は

 ずっと優しいままではない


 それは、

 集落のどの年寄りも経験したことがないほどの

 暴風と大雨だった


 どれほど

 畑が荒らされようと

 家がとばされようと

 橋が流されようと

 人はまた

 同じ営みを繰り返す


 しかし

 その土地そのものがなくなれば

 人もろとも

 流されてしまえば


 それは

 それを起こすのに

 十分な威力をもっていた



 つるは

 外へ出ようとしていた

 

 「どこへいく」


 体全体で家を守っていた

 「かずら」はわかっていたが問うた


 「村へ」


 「われの背中に乗れ」


 うなづくとつるは、身をかがめた

 「かずら」の背中に登った


 立ち上がった「かずら」は

 暴風も大雨も

 ないように

 村へと駆けだした


 

 村では

 人々が

 何かを叫びながら

 駆けずり回っていた


 暴風、大雨に加えて

 地鳴りと地面の揺れが感じられて

 手のつけられない混乱状態にあった


 倒れた人を顧みることもせず

 それどころか踏み越えて行く始末


 そんな中に

 つるは飛び込み

 知り合いの名を呼んだ


 だが

 応える者はない

 その声自体がかき消されていく


 村人をよけながら進む

 つるの手をつかむ者が居た


 いつかの若者だった


 「こいつだ」


 いきなり若者は叫んだ


 「こいつのせいだ。

  こいつがこの厄災を呼んだんだ」


 周りにいた者は一瞬怪訝そうな顔をしたが

 すぐに


 「そうだ、こいつのせいだ」

 と同じように叫びだした


 その剣幕に

 恐ろしくなった

 つるは

 手を払って逃げようとしたが

 若者の力は思いのほか強く

 振り払えなかった


 「こい!」


 若者と周りの者は

 つるを引きずるようにして

 橋の方へと向かった


 「かずら!」


 つるは叫んだが応えはなかった


 橋に着いたときつると若者には多くの人々がついてきていた


 「土地神様が怒っておられるんだ

  生け贄が必要だ」


 周りの人も同じように声を上げた

 その目はみな血走っていた


 「かずら」


 つるはちいさくつぶやいた

 

 つるにはわかっていた

 今「かずら」は橋を守っている

 いや、それだけではない

 森を山を川を大地を鎮め

 そのすべを守っているのだと


 狂気のように叫び声を上げる人々に

 つるは

 晴れやかに笑った


 その姿に

 人々の狂気が一瞬薄れた


 つるはつかまれた手を

 ふるほどき

 全力で橋へ駆けだした


 私を助ける力をさけないほど

 「かずら」は苦労している

 だったら手伝わなければ


 つるはためらいもせず

 橋から濁流となっている川へ

 身を投げ出した


 人々は

 自分たちの望むことがおこっているというのに

 唖然として見ていた


 目の前に荒れ狂った濁流が近づいても

 つるには

 恐れはなかった

 体の奥から

 何か懐かしいものがわき上がり

 それが全身を包むと

 つるの体は落ちるのをやめた


 ふわりと

 濁流のうえに浮き

 しっかりと立った


 あまりのことに

 あっけにとられたつるは、

 それでも

 どこか当たり前のことのように感じていた


 「めざめたのか」


 どこか苦しげな「かずら」の声が響いた


 「どこ」


 「いきなりでわるいんじゃが

  ちからをつなげてくれ」

 「どうやるの」

 

 「なに、簡単なことじゃ

  われを思い浮かべ、つながりを願えばよい」


 「わかった」


 つるの体は、暴風にもかかわらず

 少しも揺らがず

 輝きを増した

 その輝きは徐々に広がり

 もうひとつの

 輝きとかさなり一つになった


 その後も

 暴風と大雨は続いたが


 地鳴りや大地の揺れはなくなった。


 自然の猛威は

 大きな爪痕を残した

 それでも

 人は営みを続ける


 「うらんではおらんか」

 

 かずらはつるに聞いた


 「かずらを?」


 「いや、あやつらをじゃ」


 ふたりは今

 こわれた家屋や畑を片付けている人々を

 上空から眺めている


 「どうして」


 「おまえを人柱にしようとした」


 「ああ」


 つるはほほえんだ


 「それもふくめて人間だから」


 「なるほどの」


 かずらは妙に納得したように言った


 「ねえ あたし まだ よく思い出せないんだ

  どうして、あたし人間のふりしてたの?

  ううん、あの寸前まで確かに人間だったよ」


 「ふむ どうせつめいすればよいかのう

  話せば長くなるのじゃが」


 「それじゃあ、後でいいけど、これだけは教えて」


 「なんじゃ」


 「あたしのほんとの名前」


 「かづら」は重々しく言った


 「おまえの名は、ツルキ つるの姫という意味じゃ」


 「ツルキ」


 「そして、われはカズラ」


 橋の精ツルキと橋の獣カズラは

 お互いを見てほほえんだ。

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