第二話 たくされた つながり 三
やがて
時が流れた。
その橋は
街道の要所にありながら
幅が狭く
難所と
呼ばれるようになった。
それが
フロスには
不満だった。
「たいせつな橋なのに
どうして
そんなこと言うんだよ」
フェアエルは
静かに言った。
「人の心は
前を向く」
「最初の願いは
少しずつ
忘れられていく」
「そんなの
ひどいじゃないか」
フェアエルは
橋を見つめた。
「だれかは
覚えている」
「それに
わたしたちは
忘れない」
やがて
その橋の近くに
新しい橋が
架けられることになった。
広く
立派な橋。
「橋が変わる?」
フロスは
戸惑った。
「この橋は
どうなるの?」
フェアエルは
静かに言った。
「流れは
変わらない」
「橋が変わっても
出会う場所は
ここにある」
その言葉に
フロスは
不安を覚えた。
夜。
川は
静かに流れていた。
フロスは
橋の欄干に座り
黙って
川を見ていた。
フェアエルが
そっと近づく。
「眠れないのかい」
フロスは
少しむくれて言う。
「だってさ」
「この橋
なくなるんだろ」
フェアエルは
ゆっくり首を振る。
「なくなるわけじゃない」
「役目が
変わるだけ」
フロスは
橋を見上げた。
「でも」
「守れなくなる」
フェアエルは
少し考えてから言った。
「守るってね」
「残ることじゃない」
フロスは
黙る。
フェアエルは
続ける。
「つなぐことなんだよ」
風が
橋の上を通った。
フロスは
小さくつぶやく。
「つなぐ……」
フェアエルは
うなずいた。
「そう」
「だから」
「次は
きみたちの番だ」
フロスは
川を見た。
川の上で
大きな影が動く。
ブランだった。
その背に
フェアエルが
ふわりと浮かんだ
「新しい橋へ
お行き」
フロスが
不満そうに言う。
「どういうことだよ」
「あたらしい橋へ
行けって」
フェアエルは
やさしく笑った。
「わたしたちは
君たちより
古いからね」
フロスは
声を強めた。
「でも!」
「つかわれなくなる橋に
残るなんて!」
ブランは
静かに答えた。
「だからこそ
安心して
任せられる」
アクエアが
悲しそうに鳴く。
フロスは
つらそうに言った。
「おいらたちが
いなかったら
あんたたちが
新しい橋へ
行けるのに」
フェアエルは
やさしく言った。
「いいや」
「きみたちが現れたとき
どんなに
うれしかったことか」
「わたしもブランも
ひとりでは
なかった」
「きみたちと出会えて
ほんとうに
よかった」
フロスは
小さくつぶやいた。
「フェアエル」
フェアエルは
微笑んだ。
「名前で呼んでくれたね」
「ありがとう」
「いい眠りに
つけそうだ」
フロスは
驚いた。
「どういうこと?」
「この橋は
役目を終えた」
「わたしたちは
橋とともに
眠りにつく」
ブランが
アクエアに
やさしく頬を寄せた。
「そんな!」
フロスが
言いかける。
フェアエルは
首を振った。
「川があるかぎり
橋は架かる」
「出会いは
終わらない」
「流れているかぎり」
川の水が
橋脚に触れて
やさしく音を立てた。
「さあ
おいき」
少しの間。
やがて
フロスは
目をこすり
ゆっくり
新しい橋へ
進みはじめた。
その横を
アクエアが
しっかりと歩く。
フェアエルは
ふたりを見つめ
静かにつぶやいた。
「そう」
「出会いは
終わらない」
四つの光は
月の中へ
溶けていった。
水面が
少しだけ
光る。
新しい橋から
声がもれる。
「ぼくたちが
出合いを
つなげる」
アクエアが
力強くうなずく。
川は
何も言わない。
ただ
静かに
流れている。
けれど
その流れの中で
出合いは
つづいていく。
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