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挿話 最後の航海 碇をあげて 一
川辺に
紙が貼られていた
「観光船ルミナ号 本日をもって運航終了」
少年は
しばらく動けなかった
何度も乗った船だった
何隻か
船はあったのに
なぜか
この船が
好きだった
橋をくぐるたび
少しだけ胸が軽くなる――
そんな時間を
何度もくれた船だった。
「……まだ、いるのに」
船は、すぐそこにあった。
いつもと同じように、
静かに水に浮かんでいた。
ただ――
もう
動かない
夜
誰もいない船着き場
少年は
迷いながらも、
ロープのすき間から
船に乗り込んだ
船内は暗い
でも
どこか、あたたかい。
操縦席に立つ
そっと、レバーに手をかける。
「……まだ、終わりじゃない」
その瞬間――
ゴウン……
小さく、低い音が鳴る
計器に、光が灯る
船が、目を覚ました
少年は息をのむ
けれど、手は離さなかった
「……いこう」
船は、ゆっくりと岸を離れる。
それは、操縦ではなかった
船が、進みはじめたのだ




