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第十話 みちが あい わかれる ところ はじまりの物語 三
「……あなたも、
ここにいたんだ」
低い声が、
水の中から響く。
「……長く、な」
その声は
川そのもののように
深く、ゆっくりだった。
ミツルは
くるりと回り、
三つの風をなびかせる。
「迷い
いや
選択か」
ミツルは
ぽつりと
つぶやいた
トリガミは
しばらく
何も言わなかった。
やがて、
「……だからこそ、
崩してはならぬ」
ミツルは
少し首をかしげる。
「くずれる?」
「選ぶとき、
流れは乱れる」
トリガミの尾が
ゆっくりと揺れ、
水が整う。
「そのすべてを、
受け止めるのが
わたしだ」
ミツルは
しばらく黙り、
そして――
ふわりと笑った。
「じゃあ、
わたしは」
「その迷いを
支えよう」
その言葉に、
水が
ほんのわずか
やわらぐ。
トリガミは
目を閉じた。
「……よかろう」
「ならば、
おまえは風を」
「わたしは、
流れを」
瞬間
橋の上の風と、
橋の下の水が、
ひとつに重なった。
ミツルは
軽く跳び、
三つの道の上を
すべるように進む。
トリガミは
その下で
静かに支える。
こうして、
三ツ合橋には
道を示すものと
支えるものが
同時に生まれた。
そして今も――
人が迷うとき、
風がそっと吹き、
その下で
水は静かに整えられている。




