挿話 かんじる けはい
アララが
橋の上を歩く。
欄干に座った
スピーダ
そのそばに
もころん。
ふわりが
ゆっくりと
川の上に浮かび
少し離れたところに
コスタクルスの
大きな影。
その背に
ユイナが
そっと降り立つ
橋の下では
奥で
ツムギが
小さく光り
ガランは
静かに目を開けます
マルカドールは
カルチガーディアンの背に乗って
少し眠そう
かわのかぜは
いつもより少しだけ
やわらかかった。
「ねえ」
アララが
いつのまにか
コスタクルスのそばにきて言った
「きょうの風、
なんだかふしぎだよ」
コスタクルスは、
ゆっくりと川を見た。
水面には
月の光が揺れていた。
けれど
その光の奧に
さらに何かが光っているようだった。
コスタクルスは
静かに言った。
「感じるか」
アララは
こくんとうなずきました。
「うん」
「なにかが
ここにいる」
目には見えない。
けれど
川の流れが
少しだけ変わった。
アララは
ふわりと空に浮かんだ。
「だれ?」
そのとき、
橋の上を
とてもやさしい風が通った。
それは
答えのかわりのようだった。
コスタクルスは
静かに言った。
「わたしたちの
もとの力だ」
「わたしたちは
橋の守り手だ」
「けれど」
「その奥には
もっと大きな力がある」
アララは
ほっといきをはいた。
「じゃあ」
「ひとりじゃないんだね」
コスタクルスは
ほほえんだ。
「ずっと前から」
「ずっと」
風はやみ
川面も
おだやかになった。
アララは
目を閉じ
手を
胸の前で
合わせた。
ごくほそい
かすかな
糸のような
風が
波紋のように
広がって
まわりのすべてに
とどき
やがて
消えた。
「いるんだね」
アララが小さくつぶやいた
コスタクルス
おどろいたように
目を見張った
「わかるのか」
アララは
コスタクルス
スピーダを
ユイナを
みんなを
ひとりづつ
見た
そして、
橋を
川を
かなたの森を
山を
見た
「つながっているんだ」
アララの言葉が
静かな川に溶けていく。
そのとき――
川の流れが
ほんの一瞬だけ
止まった。
誰も動かなかった。
水面に
小さな光が
ひとつ
ゆらめく。
それは
星でも
月でもない。
川の奥から
浮かび上がった
古い光。
コスタクルスが
目を細めた。
カルチガーディアンも
ゆっくりと
頭を上げる。
ガランが
小さくつぶやいた。
「……ひさしいな」
スピーダが
首をかしげる。
「なに?」
ガランは
ゆっくり目を閉じた。
「いや」
「気のせいか」
その光は
やがて
水の中へ
ゆっくりと消えていった。
何も起きなかったように
川は
また流れはじめる。
アララは
静かに笑った。




