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第三章 工期(〆切)まであと五日、基礎工事すら未着工

「クッソ! 全然話が進まねー! てか、何を書けばいいんだよ……!」



「……画面のカーソルがチカチカ言ってるだけで、一文字も打ててねえぞ。もう二時間経つ。二時間あれば平面図一枚はエスキースまでいけんだろ、普通」



「あいつら、今頃もう進んでるのかな……」



「……いや、絶対進んでるわ。情報学科は、それこそAI使って安牌なテキストをすでに数万文字は出力して、そこからトリミングでもしてんだろ。あいつにとっては創作じゃなくてただのデータ生成だしな」



「で、次に普通科は……あいつは哲学がどうとかって、あの部室でもなんか一人でブツブツ難しいこと考えてそうだったしな。頭の中に吐き出したい思想的なストックが、山ほど眠ってんだろうなー。書くネタがある奴はいいよな」



「一番ムカつくのは商業学科だ。あの言い出しっぺのビジネス野郎、自分で五千文字のプロトタイプなんてノルマを他人に課しといて、自分が書けませんでしたなんて大赤字な真似は絶対しねえはずだ。あいつのことだから、もうすでにターゲット層に刺さる構成案くらいはガチガチにマーケティングして固めてんだろうな……」



「はぁ……それに比べて俺は何なんだよ。建築は物語を内包した最高の芸術です、とか先生の前でドヤ顔で大見得切っておいて、いざ文章にしようとしたら一文字目すらバグってやがる」



「『昔々、あるところに……』って、いやいや、その『あるところ』の敷地条件はどうなってんだよ。一歩目から進まねえ。周辺環境は? 接道状況は? 第一種低層住居専用地域なのか? 建ぺい率と容積率は? そこを指定してくれないと、登場人物の動線計画が立てられねえだろ!」



「そもそも主人公の動機が『旅に出る』って、そんな不安定な荷重の掛け方があるか! 基礎がグラグラじゃねえか。せめて構造計算書を出せ! この物語の柱と梁の寸法はどこに書いてあんだよ!」



「……ああ、ダメだダメだ。小説の書き方が分からねえっていうか、小説の文字って、図面と違って空間のスケール感が全く掴めねえ……!」



「あ~、やめやめ! 今日はもう店じまいだ! 寝る! 明日考えればいいっか。まだ締め切りまであと五日もあるんだ、あと五日ありゃ、突貫工事で何かは書けんだろ」



「……いや、待てよ。工程表を引かないとマジで落とすな、これ。明日までにプロットという名の意匠設計を終わらせて、三日目で文章の基礎工事、四日目で外装……いや、内装の推敲まで間に合うか……? くそッ、小説って、建築より納期管理が鬼畜なんじゃねえの……?」



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