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第二章 最初の設計図と五千文字のノルマ

「……おい、誰か喋れよ。先生が職員室に帰ってから、もうずっと誰も口開いてねえぞ」



「じゃあ、とりあえず。四人の専門性と、小説家になりたい動機が分かったから、各自一週間後に、五千文字程度の小説を書いてきて、意見交換から始めましょうか?」



「ちょっと待て、商業学科。誰の許可を得てタイムラインを引いてるんだ。勝手に仕切るなよ」



「商業学科さんの提案でいいんじゃない? 建築学科さん。ここで時間を浪費するのはお互いに非効率だし」



「情報学科は黙ってろよ! お前はAIを使って数秒で書けるんだからいいかもしれないけどな、こっちは読んだことも書いたこともないんだ! 図面の引き方は知ってても、文章の組み立てなんてまずどうすればいいか、最初の基礎工事から分からねーんだよ!」



「なるほど。小説というフレームワークの構築手順が分からずに、フリーズしているということですね」



「お前、さっきから人をバカにしてんのか!? だいたいな、小説をメディアミックス前提のビジネスモデルだの、高い投資対効果だの、文学をただの金儲けの道具みたいに言うな!」



「あら、私は至って合理的に、この部活の生産性を向上させようと具体的なマイルストーンを提示しているだけですよ?」



「チッ、これだからデジタルネイティブの合理主義者は……! 普通科のお前はどうなんだよ、哲学論文の発表の場が欲しいとか言ってたろ。この商業学科の無茶な提案に納得してんのか!?」



「……いや、いつまでもここで不毛な議論をデッドロックさせていても意味がない。普通科の俺は、商業学科さんに賛成するから帰るな。これ以上ここにいても思索のノイズになるだけだし。一週間後の十七時に、またこの旧茶道部に集合ってことで。じゃあな」



「あ、ちょっと待て、おい普通科! 勝手に片付けを始めるな!」



「では、情報学科の私も商業学科さんと普通科さんに賛成なので帰らせて頂きます。さっそくプロンプトの調整に入りますので、それでは」



「おい、お前まで! 待て情報学科、話を終わらせるな!」



「過半数の同意が得られましたね。では、商業学科の私も民主主義にのっとり賛成で帰りますね。一週間後、市場価値の高い五千文字のプロトタイプを楽しみにしています」



「お、おい! 待て! まだ俺は承認してねえぞ! おい商業学科! ……クソが、なんて協調性のない奴らだ! ああいう勝手な理屈で動いて対話の通じない奴らが、現場を無茶苦茶にするんだ! クソが! ……五千文字……五千文字かよ! どうやって文章の構造を設計すりゃいいんだよ畜生!」




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