海の魔物が出現する絶叫型魔動巨大ウォータースライダー? 6
だって今のは、第六関門。
ここから第十関門までは、かなり楽しめますよ。
俺は小さな海嵐の海豹を長椅子に残して前に行くと、リカステさんが戻ってくるのを制止した。
「リカステさん、休憩はまだですよ。次からは、燐火水ワームの数が増えるだけで無く他のA級危険種も出てきますので」
「だけどよー、リリーちゃん? 俺が前に出ると、パイ王女とアザレアちゃんとブルメリアちゃん達の訓練にならんだろ?」
「チッチッチー。リカステさん? シルちゃんが、何か言っていませんか?」
こんな時は、ドラシルシステムが逸早く心情でリカステさんに対処法を伝えている筈だ。
それに、龍紳士システムが内蔵し冒険者学校のドラシルシステムとリンクしているリカステさんの装備は、カトレア先生の攻撃特化型の龍人形姫システムとは根本的に違います。
だって、リカステさんの龍紳士システムは守護特化型ですからね。
なので、周りの者達を補助して守護する能力が多数組み込まれているのですよ。
「シェアとかの意味が、俺にはよく分からん。ん? フムフム……ほぉー。まー、なんだ。シルちゃん、それで頼む」
……リカステさん、そこで躓いていたのですか。
そう言えばこの世界って、時代的に言えば古い時代でしたね。
所謂、ジェネレーションギャップと言ったところでしょうか?
それに、リカステさん?
折角シルちゃんが心情で教えてくれているのに、態々口に出す必要ないですよ?
まあ、リカステさんらしくて良いのだけどね。
つまりシェアをすると、リカステさんがパーティーだと思っている人達で、その雷を分け合うことが出来るのです。
威力としては、リカステさんが纏っている雷よりも弱いですが、燐火水ワームを倒すのに十分な上級魔法程度の雷を使用することが可能となります。
その雷は、魔法として使用しても良いですし武器に纏わす事も可能です。
それに、その雷を操作出来るシェアブレスレットが冒険者学校の地下から転送されてきますので、リカステさんは何もする必要がないので安心して下さいね。
「龍紳士シェア オーライ!」
すると、龍紳士ベルトから音声が流れた。
その瞬間、パイ王女とアザレアちゃんとブルメリアちゃんだけで無く、ミムラスさんと俺とハイビスカスにもシェアブレスレットが装着された。
……えっと、リカステさん?
小さな海嵐の海豹の前鰭にまで、シェアブレスレットを付ける必要ないよね?
まあでも、この子を俺が撫でていたので、リカステさんはパーティーとして認定したのかもしれない。
それに魔物でも、仲間と決めたら守ろうとする所がリカステさんの信念なのだろう。
ホント、リカステさんは格好良いことするよね。
カトレア先生も、そんな所が気に入っているので、いつも一緒にいる事が多いのだと思う。
因みに、リカステさんが皆にシェアブレスレットの事を説明しなくても、シェアブレスレットからシルちゃんの音声が流れて説明してくれたので、俺が説明しに行く必要もないのだ。
なので、パイ王女とアザレアちゃんとブルメリアちゃんも雷属性を武器につけられると知ってリカステさんの後ろについた。
「「リカステ先生、補助の魔法具ありがとうございます」」
アザレアちゃんとブルメリアちゃんが、リカステさんに礼を言って配置についた。
「リカステおじさん、ありがとう」
パイ王女は、一瞬俺の方を向いて笑顔を向けリカステさんにお礼を言った。
リカステさんの直接指導が、楽しみなのだろう。
王女としてではなく一人の生徒として、アザレアちゃんとブルメリアちゃんの様に、ありがとうと言って、お礼をリカステさんに伝えたのがその証拠だ。
「リカステさん、今からはミムラスさんと一緒に前に出て、パイ王女達と共に戦い、時には前面に出て皆を守り指導すれば良いですよ」
「そうだな。まっ、こうなればよー。冒険者の頃を思い出して、俺も楽しんでやんぜ。カトレアが、えらい喜んでいたわけだ。あいつは、こういう戦闘が好みだからな」
カトレア先生、やっぱりMっけが有ったんだ。
となると、ロベリアさんはあの悪戯な性格からしてSっけが有るのだろうな。
カトレア先生はロベリアさんが少し苦手だと思っていたけれど、実はベストパートナーだったのか。
だから、あれ程までに二人の攻撃が合っていたんだ。
「それに魔物が沢山出現しても、ミムラスさんと協力すればリカステさんなら問題ないですよね?」
「……でもな、リリーちゃん? そっちは、簡単に行かねーだろ?」
そっちって、何だろう?
そう思っていると、リカステさんの視線がミムラスさんが腰掛けている長椅子の方を向いた。
「えっ?」
視線を辿ると、ミムラスさんが下を向いていた。
「ミムラスさん、落ち込んでるが……リリーちゃん、あれ大丈夫か?」
リカステさんはそう言って、俺の方を向いた。
俺はリカステさんに任せてと言うように手で合図をし、長椅子に戻って再び小さな海嵐の海豹を抱っこした。
ふぁー、癒やされる。
この柔らかい、モフモフなお腹が気持ちが良い。
……自身の欲求を満たすために、モフモフを堪能している場合じゃなかった。
恐らく先ほどの、AランクとSランクの力の差が気がかりなのだろうけれど、ミムラスさんが落ち込んでいる原因をちゃんと聞いてあげないとね。
それとなく確かめる為に、少し回りくどい言い回しをしてみる。
「ミムラスさんは、リカステさんの元に行かないのですか?」
俺は、小さな海嵐の海豹のフワフワの毛並みに頬を寄せてさり気なく聞いた。
自然な流れで、海嵐の海豹のフワフワな毛並みに顔を寄せるのは、ミムラスさんの心情を確かめるのに打って付けだったのだ。
「……リカステ殿は、王女殿下と生徒の皆様を指導しつつ守る必要が有ります。ですが私が行くと、リカステ殿の守る対象が増えてしまいますので……」
「分かりました。では、私と一緒に見学しましょう」
「はい……」
やっぱり、原因はそれか。
ミムラスさんが耐えることが可能な範囲で、俺の補助強化魔法をかけてあげても良いけれど、一時的だからね……。
どうやって、ミムラスさんの心を癒やしてあげれば良いかな?
自信を取り戻す魔法って、有ったかな?
心の問題は、一番難しいからね。
それに、魔法でパッと心を癒やすより自身でその事に打ち勝って回復する方が、新たな問題を抱えた時にも回復しやすくなるからね。
そう言えば、葵から限界突破の一部である劣化型神武具の真字化を教わった時に気になる項目が一瞬システムで流れたよな。
【システム 第二級中位管理者及び、真字化解放により条件が整い追加能力が解放】
まだ確認はしてはいないけれど、ミムラスさんには時間が必要だし、可愛い海嵐の海豹をミムラスさんに抱っこさせて見てみることにした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
限界突破LV2追加機能
天狐八尾のロリ服セット解放により
使徒・眷属・従者・召喚精霊に、主の劣化型神武具の使用許可を承諾
真字化解放。
新 第二級中位管理者及び真字化解放により条件が整い解放。
限界突破LV2特殊追加能力
+
⇖
―――――――――――――――――――――――――――――――――
それに、この子を抱いていると少しは心を癒やせるだろうしね。
「ミムラスさん、この子を少し抱いていてもらって良いかな?」
小さな海嵐の海豹の可愛さとおとなしさは、アニマルセラピーとして十二分に発揮する事が出来る。
アニマルセラピーとは、動物達とのふれあいで心に癒しを与えることを言い、俺の世界でも、ストレス解消や、認知症、心の病など、それらの症状を改善し緩和する事ができるとして、医療など様々な分野で取り入れられている。
海嵐の海豹の場合は、魔物だからデーモンセラピー? モンスターセラピー?
ちょっと、名称が嫌だな。
小さくて、可愛い? ポケ……駄目だ、これを言っちゃ。
癒やしと、モンスターを掛け合わせるとヒーリングモンスター。
短くすれば、ヒーリンスターだ。
意味は全く違うけれど、この方が可愛いこの子達に打って付けの名称だよね。
ヒーリンスターセラピーで可愛い魔物や魔獣だけを集め、触れ会う事が可能な憩いの部屋を今度創ろうかな? カフェも、良いよね。
ホント、夢が広がるよね。
俺は夢いっぱいの気持ちで勘考し、海嵐の海豹をミムラスさんに手渡した。
「はい、リリー殿……」
そう言って、ミムラスさんはモフモフな海嵐の海豹を抱きしめた。
あれ? ミムラスさんの、水着のボリュームが無くなったよ?
……シルクと同じで、ちっぱい仲間だったのか。
ならば尚更、ミムラスさんの心を何とかしてあげたいな。
手元が寂しくなったので、デザートを食べてウトウトしだしたハイビスカスを、優しく傾けて膝の上に頭を乗せた。
海嵐の海豹はモフモフで手触りが頗る良いが、ハイビスカスも寝顔が凄く可愛いので俺の癒やしになる。
追加能力を確認しようとマウスLV2を合わせた所で、第七関門に突入したようだ。
行く手に燐火水ワームが八体出現した途端に、多量の粘液を吐き出した。
燐火水ワームは学習して、このベトベトの粘液が有効と考えたのだろう。
まあでも、出現した途端に燐火を吐き出してこなくて良かったよ。
燐火の攻撃は、即座にリカステさんが皆を覆うようにマントを広げて守らないと、燐火がかなり厄介だからね。
それに、後ろに控えている魔物はリカステさんが対処した方が良いよ。
流石、リカステさん。見つけた、ようだね。
「マジか……戦艦の破壊魚モーレイ イール何て、昔にあった海の大戦で何度か目撃された珍しい危険種だぞ」
リカステさんはそう呟くと、龍紳士ビッグアックスを持つ手に力を入れた。
戦艦の破壊魚モーレイ イールは、深海獄の上層の海域近くにある浮島の危険地帯にいると言う理由でA級指定されているウツボの魔物だ。
昔あった海の大戦で、当時危険地帯とは知らず何隻もの戦艦が浮島近くを通った。
その時通った船艦が、悉く船体を囓られ海の藻屑となった事でその名が付いた。
危険地帯にある浮島の近くにしか居ないので、今では誰も見たことが無い。
なので、珍しいとリカステさんは言っているのだろう。
まあでも確かに、危険地帯と分かっていて好き好んで行く人なんて滅多に居ないよね。
それに、自身の縄張りに来たものを異常に発達した牙と顎で何でも破壊する。
なので、縄張りにさえ行かなければ何もしてこない。
だけど知っていると思いますが、この浮き輪は勝手に前進します。
なので、浮き輪が到達する前に戦艦の破壊魚モーレイ イールをリカステさんが倒して下さいね。
一体ですが、巨体なのでなめてかかると危険ですよ。
まあでも、この浮き輪は奴の牙で攻撃されても傷は一切付きません。
ですが、巨体故に奴の体当たりが厄介なのです。
「ったく、しゃーねーな」
それと、本当はリカステさんとミムラスさんが協力し、戦艦の破壊魚モーレイ イールを倒す筈だったのだけど、ミムラスさんはまだ落ち込んでいます。
なので、戦艦の破壊魚モーレイ イールの討伐はリカステさん一人で頑張って下さいね。
俺は特殊追加能力をクリックするのを忘れ、リカステさんと浮き輪が進む先を見ていると、パイ王女とアザレアちゃんとブルメリアちゃんが騒ぎだした。
最後までお読み頂き、本当に感謝しています。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アザレア「折角さっき、リリーちゃんがアザレア達のニュルニュルを綺麗に
してくれたのに、もう髪も水着もニュルニュル。最悪ですよ、
このニュルニュルは……ブルメリアちゃん?」
ブルメリア「はい?」
アザレア「リカステ先生だけ、何でニュルニュルじゃないのかな?」
ブルメリア「ブルメリアも分かりませんが、あの装いが特別なのでは?」
アザレア「リカステ先生だけ、狡いよね」
ブルメリア「ですが、先生ですので……でも、耳と尻尾に付いたニュルニュル
なのが、ブルメリアも許せなくなってきました」
アザレア「それに、アザレアはさっきから腹が立っています」
ブルメリア「アザレアちゃん、どうしたの?」
アザレア「アザレア達と違って、リカステ先生がパイ王女様にニュルニュルが
かからないように位置取りしてる所がです」
ブルメリア「そう言えば、そうですね。ブルメリア達より、ニュルニュルが
かかっていませんし……」
こうして、リカステに対するアザレアとブルメリアの風当たりが
強くなっていったのである。




