勘違いから始まるリカステさんの災難2(改)
ドガーン! ゴトッ!
「うおー! おっ、俺の大切な大戦斧が……」
リカステさんが長年愛用していた鉄の大戦斧の頭が折れた瞬間、俺は止めに入った。
「ストップ! カトレア先生、やり過ぎです」
二人の間に割り込むと、俺はカトレア先生の武器を指二本で受け止めた。
鉄の大戦斧は一歩遅かったが、リカステさんの身体は無事で有る。
アザレアちゃんとブルメリアちゃんが近くにいたので、直ぐに戦闘モードで行動できなかったのだ。
だって、戦闘モードの素早さに巻き込んで、怪我をさせるわけにはいかないからね。
その俺の行動に、パイ王女とミムラスさんが驚愕の表情を示していた。
恐らく、俺の動きが全く見えなかったからだろう。
しかし、そんな事よりも俺はカトレア先生を睨んだ。
「だって、リリーちゃんだけじゃなくてパイ王女もリカステが……」
カトレア先生、妄想男子じゃないんだから変な想像しないで下さい。
全く、もぉー。
「カトレア先生、何を勘違いされたか知りませんが、私がリカステさんをウォータスライダーの裏に誘ったんですよ。カトレア先生と同じように、武具と装備を渡すためにね」
俺は、カトレア先生達に真実を伝えた。
パイ王女も、俺に同調するように頷いてくれている。
そんな俺とパイ王女の視線に、カトレア先生はアザレアちゃん達を見る。
「えっ? リカステが、リリーちゃんを無理矢理連れて行ったんじゃ無かったの? 私はアザレアちゃんとブルメリアちゃんから、そう聞いたわよ」
アザレアちゃんとブルメリアちゃんは自身の名前を言われて、外方を向いた。
そしてカトレア先生は、武器を治めて後ずさった。
自身の早とちりと、気づいたからだろう。
それにしてもリカステさん、カトレア先生の攻撃速度によく追いついたよね。
そうか、ベルトの恩恵か……ベルトって、何か味気ないよね。
よし、龍紳士ベルトにしよう。
序でに、ドッグタグも龍紳士ドッグタグに。
変身していなくても、龍紳士ベルトは付けているだけで自己能力が少し向上するからね。
カトレア先生達のように、叫ぶだけでは変身出来ない。
なので、その分龍紳士ベルトを着けている間は能力が少し向上するように創っている。
それに、龍紳士ドッグタグはリカステさんに肌身離さぬように言ってある。
例え裸で有ったとしても、龍紳士ドッグタグさえ有れば龍紳士ベルトを呼び出すことが可能だからね。
リカステさんは折れた鉄の大戦斧に下を向いていたが、流石に怒ったようだ。
「……おい、お前ら! 俺を、何だと思ってるんだ!」
だから、その顔が怖いんだって。
えっ? ……カトレア先生、いつの間に俺の後ろへ来たの?
そのせいで、俺もリカステさんに睨まれたでしょ。
この場の雰囲気が、変な雰囲気だ。
そりゃ、そうだよね。
はー、仕方がない。
俺が、一肌脱ぐか……言っとくけれど、水着じゃないよ。
「まあまあ、リカステさん落ち着いて下さい。誰も、悪くありません。全ては、リカステさんの強面の顔が悪いんですよ」
一瞬、場の雰囲気が凍り付いた? ……滑ったか?
でも、アザレアちゃんとブルメリアちゃんが笑いだした。
カトレア先生は、必死で堪えているようだ。
そして、リカステさんは肩をすくめた。
「リリーちゃん、今の酷くないか? 俺、流石に傷つくぞ?」
リカステさんはそう言って、折れて下に落ちていた大戦斧の頭を見つめた。
だから、その落ち込んだ顔も怖いですって……。
「それに、愛用していた大戦斧も壊れたしな……」
リカステさん、もしかしてまだその鉄の大戦斧を使うつもりだったの?
折角、装備をあげたのに……。
でも、良い機会だから今から使って貰おう。
「リカステさん、丁度良かったじゃないですか。今から、私が創った新しい武具が使えますよ。その前に、言い忘れていたことが有りました」
今リカステさんが付けている龍紳士ベルトのバックルに、龍紳士ドッグタグをはめ込み叫ばないと、叫んでも変身できないのだ。
「何だ、リリーちゃん? 藪から棒に……」
俺は変身をする時のような仕草をして、リカステさんにウインクをした。
「変身の、合い言葉が有るんですよ」
俺の仕草とウインクに、リカステさんが左手に右手を置いた。
「カトレアが言っている、あれか? 龍人形姫、なんちゃらってやつ」
リカステさんの眼が、少年の様に輝いた。
だから、その眼も怖いって。
でももしかすると、リカステさんはカトレア先生の変身に憧れを抱いたのだと思う。
そうだよね、リカステさん。
あくまでも、自説ですが……男の子も、女の子達みたいに変身願望に捕らわれることがありますよね。
「はい。それです。
リカステさんの場合は【龍紳士イノベーション!】です。
但し、龍紳士ドッグタグを外して、龍紳士ベルトのバックルにはめ込んでから叫んでくださいね。
龍紳士ドッグタグは、金具を引くと外れるので」
俺は、リカステさんの首に付けている金具のことを教えた。
指し示す龍紳士ドッグタグに触れたリカステさんは、金具を押して龍紳士ドッグタグを取り外した。
「ドラゴンは理解できるが、他は俺には意味が分からん」
寧ろ、リカステさんには意味を知られない方が良い。
だって、イノベーションは革新だからね。
紳士を貫こうとしているリカステさんは、嫌がるだろうし。
だけど、良い意味での革新なんだから俺は良いと思うのだけどね。
「それは良いですので、今実際に龍紳士バックルに龍紳士ドッグタグをはめ込んで叫んでみてください」
「おう。リリーちゃん、このベルトに四角いのを差し込んで叫ぶんだよな?」
「そうですよ」
「……龍紳士イノベーション!」
リカステさんが叫んだ瞬間、龍紳士ベルトのバックルが光り輝きバックルがその姿を変形させていく。
そしてその瞬間、ドラシルシステムの音声が流れる。
「龍紳士マスター オーライ!」
龍紳士ベルトのバックルが炎と風の形に変形すると、炎と風がリカステさんを包み込む。
刹那、赤と緑の色合いが特徴的な、上級騎士スーツを纏ったリカステさんが姿を現した。
その姿に合うように、腰には装飾された龍紳士ビッグアックスをバックホルダーに付け、大きなマントを付けていた。
馬子にも衣装と言うけれど……うーん。
悪役騎士にしか、見えないよリカステさん。
まあでも、龍紳士アーマードモードで龍紳士アーマーを纏えば顔が見えなくなるから問題は無いよね。
それとも、改良して上級騎士スーツに合う仮面を付けようかな?
仮面の上級騎士とか、響きが格好いいよね。
「リリーちゃん……ベルトが、喋ったぞ!」
リカステさん、折角格好良いイメージをしていたのに、そんなこと言うと台無しですよ。
でも少しばかり、説明しますね。
そうしないと、先に進まないからね。
「リカステさん、シルちゃんの事は後で説明します。
先ずは、それがリカステさん専用の上級騎士スーツと龍紳士ビッグアックスです。
上級騎士スーツには、その上のアーマードモードが有ります。
アーマードモードで龍紳士アーマーを纏えば、龍紳士トマホークが背中のバックホルダーに内蔵されているので、右目を素早く二度瞬きすると赤いポインターが現れます。
なので、そのポインターでターゲットし命令を下せば、六つ内蔵されている龍紳士トマホークが自動でターゲットを追尾し攻撃します。
攻撃後、再び元のバックホルダーに戻ってくる優れものですよ。
龍紳士トマホークは、その他にも障壁を張れますので、今度は左目を素早く二度瞬きすると青いポインターが現れます。
なので、そのポインターで味方を示せば最大で六名の味方を守護する守護障壁で覆うことが出来る優れものです」
因みに、上級騎士スーツはカトレア先生の龍人形姫ドレスと素材が全く違う。
上級騎士スーツは、複合鉱石魔法システム回路合金を繊維状にして創っているので防御力はカトレア先生達が纏う龍人形姫ドレスよりも遥かに上だ。
龍紳士ビッグアックスも同じ複合鉱石魔法システム回路合金で、通常は羽根のように軽いが、攻撃が当たった瞬間だけ重さが本来の重さの三十倍になり、攻撃力が上がるようになっている。
……リカステさん、ウインクが出来ないのなら無理にしないで下さい。
「俺、片目で瞬きできないぞ……」
だから、無理に瞬きしなくて良いですよ。
その顔が、凄く怖いのです……。
「それなら、ベルトのドラシルシステムと話せば良いですよ」
「リリーちゃん、何で眼を瞑っているんだ?」
だって、瞬きするその怖い顔を見なくて済むでしょ。
「リカステさん、このまま説明しますね」
「別に、かまわんが……」
「シルちゃんに指示して頂ければ、龍紳士トマホークを簡単に操作出来ますよ。
シルちゃんはリカステさんをサポートしてくれますので、安心してくださいね。
他にも機能は色々と有りますが、リカステさんは器用に操作する事が出来ないようなので、シルちゃんに指示する方が良いようですね……はぁー、怖かった」
リカステさんに説明をしたので、もうウインクはしないだろう。
「リリーちゃん、何が怖いんだ?」
「何でもないです」
リカステさんに説明し終わると、いつの間にかカトレア先生がいなくなっていた。
俺が眼を瞑っている間に、別荘に戻ったのかな?
「……カトレア、逃げたな。だが、後でクソほど文句を言ってやる!」
自身の武器を壊されたにも拘わらず、口だけでカトレア先生に手を出さない所がリカステさんらしい。
だけど、初めて来たばかりのミムラスさんと違って、明らかにリカステさんに対する評価は向上したようだ。
ミムラスさんがリカステさんに対して、笑顔で握手を求めてきた。
「リカステ殿、私と共に王女殿下の護衛を宜しく頼む。先ほどの戦闘訓練は、見事な気迫だった」
戦闘訓練じゃ、無かったんだけど……パイ王女に危険がないと示す、デモンストレーションとでも思ったのかな?
でも、わざわざ言わなくて良いよね。
「ああ、宜しく」
リカステさんが手を出すと、ミムラスさんが頬を染めてリカステさんの手を両手で包み込んだ。
だけど、全然手を離す様子が無い気がする……。
「……おい、ミムラスさん?」
リカステさんに指摘されて、ミムラスさんは恥じらう様に両手を離した。
「すっ、すまないリカステ殿」
どうやらリカステさんは、戦闘技術の他に、ミムラスさんに別の意味で気に入られたようだ。
だってリカステさんに言われてから、恥じらう様に手を離したからね。
……リカステさん、リーフリュウシン小国に拠点を移した方が良いかもしれませんよ。
出発する前に色々と問題が有ったが、やっと第二チームが出発できそうだ。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
現在、妹編を執筆しています。
妹編を不定期な時間に毎日執筆してましたが、年末になって忙しくなった
ので、追加執筆するペースを落とさせて頂きますがご容赦下さい。
2022年12月31日より2023年1月3日まで追加執筆をお休み致します。
12月までは、アース・スターノベル様の大賞へ応募していたので、
そのまま追加執筆していましたが、妹編の執筆があまりにも多くなったので、
外伝として別小説に移すことに致しました。
題名は:私と幼馴染みとあやかし達(仮)
~お兄ちゃんに会いたいのを一心に願い、神様とお使い様の試練に挑む~
女神のウツワを借りた俺は、出来る限り平和に暮らしたい 外伝 です。
ご不便をお掛け致しますが、何卒ご容赦下さい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私は逃げるように、リリーちゃんの別荘に来た。
すると、ロベリアちゃんが別荘のテーブルで飲み物を飲んでた。
ロベリア「カトレアちゃーん、恐ろしい物でも見たような顔してー、どうした
のー?」
カトレア「ロベリアちゃん、どうしよう? 私、また早とちりしてリカステを
怒らせちゃった」
ロベリア「いつもの事でしょー?」
カトレア「それがね、リカステが長年使っていた大戦斧を、根元からポッキリと
壊しちゃったのよ」
ロベリア「アハハー、遂に壊れたんだー。でもー、替え時でー良かったの
じゃなぁーい?」
カトレア「そんな暢気なこと言ってないで、ロベリアちゃんも言い訳考えてよ」
ロベリア「リカステはー、カトレアちゃんにー優しいからー許してくれるのじゃ
なぁーいー?」
カトレア「今回ばかりは、いつもより怖い顔をしてたのよ!」
ロベリア「アハハー。それはー、いつものことだよー。でもー、そうねー。
良い事をー、教えてあげるー。リカステはー、あんな顔している
けれどー、手料理にー弱いらしいわよー」
カトレア「えっ? そうなの?」
ロベリア「アハハー。冒険者ギルドでー、飲みながら話していたわよー」
カトレア「……でも、私料理なんて出来ないわ」
私が悩んでいると、シルクちゃんがお菓子を持ってきてくれた。
シルク「カトレア先生、前リリーにサンドイッチの作り方教えてもらっていた
よね?」
カトレア「えっ? でも、私パンなんて作れないし、卵のゆで方知らないわよ?」
シルク「それは、心配しなくて良いわ。だって、リリーの作り置きが有るからね。
ちょっと待って、今リリーに確認してあげる。――――――――――」
カトレア「シルクちゃん、お願いします……」
シルク「リリーが冷蔵庫と作り置きしている食材、何でも好きに使って良いって」
ロベリア「良かったわねー。あー、そうだー。カトレアちゃーん、エプロン
付けてー」
カトレア「ええ、良いわよ」
シルク「エロいわね」
ロベリア「でしょー」
カトレア「えっ? 何か言った?」
ロベリア「何でもーないわよー。カトレアちゃーん、リカステにー手料理を
渡すときはー、エプロン付けてねー」
カトレア「良いけれど。ロベリアちゃん、何か意味があるの?」
ロベリア「エヘヘー、なーいーしょー」
こうして、ロベリアプレゼンツ。
カトレアによる、リカステへ水着でエプロン手料理大作戦が始まった
のである。




