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勘違いから始まるリカステさんの災難1

 俺とリカステさんがパイ王女に事情を説明して、絶叫魔動巨大ウォータースライダーのスタート地点にやって来ると、アザレアちゃんとブルメリアちゃんとミムラスさんの他にカトレア先生がいた。

 しかし、何やら様子が変だ。


 パイ王女に俺とリカステさんの誤解を解くため、説明の際に逃げないようお姫様抱っこをしていたのだが、カトレア先生とアザレアちゃんとブルメリアちゃんの眼がリカステさんを睨んでいた。

 リカステさんが、パイ王女を丁寧に降ろすとカトレア先生がリカステさんを指さした。



「リカステ、アザレアちゃんとブルメリアちゃんから通報があったわよ」



 通報? 一体、何があったんだろう? 

 俺とリカステさんとパイ王女が知らない間に、何かが起こったのかな? 

 パイ王女にはリカステさんの武器の事情を詳しく話し、気がつけばパイ王女と打ち解け、俺の呼び名は泥棒猫からリリーちゃんに上方修正された。


 その泥棒猫の件だけれど、意味は色々と有るよね。

 通常は、人の家に勝手に入り込んで食べ物などを盗み食いする猫の事だ。

 だけど、隠れて悪いことをしたりする者や人の恋人を奪う者に対しても使う。

 思案してみたが、パイ王女の言う泥棒猫は俺にはどれも当てはまらないんだよね……だけど、リリーちゃんと呼ばれるようになったしまあ良いか。

 ともあれ、パイ王女と俺は仲良くなった。


 仲良くなった際に、パイ王女からリカステさんに対して「そんな事なら僕の国にある、お父様から頂いた宝槍をリカステおじさんに授けたのに」と言っていた。

 でも結局、リカステさんは断っていたけどね。

 流石に、リーフリュウシン小国の宝槍は貰えないと考えたのだろう。

 それに、リカステさんの扱う得意武器は大戦斧。

 恐らく扱うことは出来ても、大戦斧のようには使いこなすのは難しいだろうしね。


 しかし、この状況はどういうこと? 

 カトレア先生が武器を持って、リカステさんに近づいて来た。

 因みに、カトレア先生とロベリアさんは浮き輪から降りて直ぐに、龍(ドラゴン)人形(ドール)姫(プリンセス)ドレスの変身を解除した。

 なので、今は水着姿だ。


 確かカトレア先生達と別れる時に、カトレア先生は別荘に飲み物を取りに行き、クレマチスがいたら再びドラゴンサーフィンをするって言っていた。

 そしてロベリアさんは、パラソルの下で海を眺めるって言っていたかな。

 なのに、何で武器を出してリカステさんに迫ってきたの? 

 何か変わった遊びを、したいのかな? 

 いやでも、雰囲気的に違うよね。



「何がだ?」



 リカステさんは訳が分からないようで、カトレア先生に聞き返すとカトレア先生が武器を構えた。

 もしかすると、リカステさんはカトレア先生が怒るような事をしたのかな? 

 だけど、二人ともいつもは親子のように仲が良いんだよね。

 一緒に行動していることも多いし、リカステさんはカトレア先生の事をいつも心配している。

 もしかして、この状況っていわゆる親子喧嘩? 


 そう思ってリカステさんの方を向くと、リカステさんの隣にいるパイ王女の水着がズレている事に気がついた。

 パイ王女、そのままもう片方の肩の部分がズレると水着が脱げちゃうよ。

 恐らく、追いかけて捕まえた時に水着がズレたのか? 若しくは、リカステさんがパイ王女をお姫様抱っこした時にズレたのだろう。

 俺は、パイ王女の水着を直すことにした。



「パイ王女、少し良いですか?」



 パイ王女に近づき、肩のズレを元の状態に戻してあげた。

 すると、パイ王女も俺の水着を見ていた。



「リリーちゃん、済まない。クスッ! リリーちゃんも、水着がズレているよ。僕が、直そう」



 どうやら俺の水着もズレていたようで、パイ王女が直してくれた。

 まあ確かに、誤解が解けるまで泥棒猫と言われ水着をパイ王女に引っ張られたからね。

 危(アヤ)うく、リカステさんの前で肌を晒しそうになったよ

 リカステさんがパイ王女を止めてくれたので、カトレア先生のようにはならなかったけどね。



「パイ王女、ありがとうございます」



 パイ王女にお礼を言ってカトレア先生達を見ると、リカステさんへの視線がより一層強くなった。

 パイ王女と顔を見合わせて小首を傾けていると、カトレア先生が一歩進んできた。



「へー……リカステ、貴方良い度胸ね。疾風迅雷!」



 すると、いきなりカトレア先生はリカステさんを攻撃してきた。

 リカステさんは、その攻撃を鉄の大戦斧で受けた。



「ハァッ!」



 ガッキィーン! ズザッ! 



「おい! カトレア! 問答無用で、攻撃するな! 俺が、一体何をしたんだ!」



 その言葉を聞いたカトレア先生は、今度はリカステさんに連続攻撃を仕掛けた。



「ハァァァァ!」



 ガキィーン! ガガキィーン! キィーン! 



「クッ! おい!」



 リカステさんは、その攻撃を大戦斧で全て受けきった。



「ヤアァァァ!」



 しかし、カトレア先生は更なる攻撃を仕掛けた。



 ガガキィーン! ガキンガキン! ガキィーン! 



「クッ! よせっ! 何なんだ?」



 その攻撃をリカステさんが受ける度に、火花が飛び散り辺りに風切り音が鳴り響く。



「リカステ、貴方まだ白(シラ)を切るつもり? ハァッ!」



 ガガッキィキィーン! ズザザッ! 



 カトレア先生は攻撃しつつ、リカステさんに問いただす。



「グッ! だから、何がだ?」



 リカステさんは、その問いに問い返した。

 俺も、カトレア先生が怒っている理由が分からない。

 パイ王女も、どうすれば良いか分からないようだ。



「ハァハァタァー!」



 キィィーン! キィィーン! ズザザザツ! 



「クッ! ウッ!」



 カトレア先生は問いに返事をせず攻撃を放ち、その攻撃にリカステさんが思わず下がると、カトレア先生は言葉を発する。



「五月蠅い! 言わせるな、馬鹿!」



 そして、カトレア先生の攻撃がより一層激しくなった。



「ハァァァァァァー、タァァァァァァー!」



 ガッガッガッガッガッキィーン! キィィィーン! ズザザザザッ! 



「クッ! グッ! チィー!」



 リカステさんは防戦一方だが、カトレア先生の鋭い突きの攻撃を、ここまで受けきるなんて流石は元Sランク冒険者である。

 ミムラスさんは、元Sランク冒険者の戦いに真剣な目差しを向け腕を組んでいる。

 もしかすると、二人の実力を見極めているのかもしれない。


 二人が戦う度に、凄まじい衝撃が起こっていた。

 もしも、俺が創った施設でなければ崩壊していただろう。

 二人とも本気では無いと思うが、剣と大戦斧が触れ合う度に火花が散り凄まじい轟音がウォータスライダーの施設内に木霊していた。


 しかし、防戦一方のリカステさんが少し押されてきた。

 そもそも、鉄の武器で俺が創ったカトレア先生の武器を受けきれる事が信じられない。

 カトレア先生の攻撃を上手くズラして、衝撃を散らしているのは分かるけれどリカステさんの大戦斧による防御技術は本物だ。


 あまりの攻防に、パイ王女とミムラスさんがリカステさんの技を見て驚愕の表情を浮かべていた。

 恐らく、パイ王女はリカステさんにますます惚れ込んだのだと思われる。



「ヤヤヤヤヤヤ! ハァータァー!」



 ガッガッガツキィィィーン! ズザザザザザッ! 



「クッ! グッ! ウッ! チィー!」



 だがそろそろ止めないと、どちらかが怪我をしてしまう可能性が有る。

 それに、カトレア先生の攻撃スピードが次第に上がり始めている。

 疾風迅雷の能力が、龍(ドラゴン)人形(ドール)姫(プリンセス)ドレスに刺激されて一段階の本来の能力に近づいてきているのかもしれない。


 そのスピードに対して、リカステさんが捌く技の切れが……いや、あれは武器の耐久力が限界なのか? 

 考えを巡らせていると、アザレアちゃんとブルメリアちゃんが抱きついて来た。



「「リリーちゃん、大丈夫?」」



 眼前に、二人が心配する顔が飛び込んできた。

 もしかすると、この二人が事情を知っているかもしれない。



「アザレアちゃん、ブルメリアちゃん? これは一体、どういう事なの? カトレア先生とリカステさんに、何が有ったの?」



 俺が問うと、アザレアちゃんが顔を上げる。



「リリーちゃん、リカステさんに何もされなかった?」

「えっ? 別に、何もされていないよ?」



 俺がそう答えると、今度はブルメリアちゃんが顔を上げる。



「パイ王女が様子を見に行くって言ったっきり帰ってこないですし、帰ってきたと思うとパイ王女が抱っこされて水着が乱れていましたし……二人に、何か有ったと思って」

「ふえっ?」



 成る程、そういう事か。だけど、二人とも変な想像しすぎだよ。

 アザレアちゃんとブルメリアちゃんも、バレリアン君みたいに変な方向に思春期の想像が膨らみすぎ。


 それに冒険者で、リカステさんと一緒にパーティーを組んでいたカトレア先生なら少し考えれば分かるでしょ? 

 リカステさんが、そんな事は絶対にしない人だと……。

 皆、リカステさんの事をどう思っているの? 


 ここに着いた時、リカステさんが慣れない笑顔をパイ王女に向けていたよね。

 リカステさんは、それだけ気遣う良い人なんだよ。

 その笑顔は凶悪犯罪者にしか見えない程、怖かったけれどね……原因は、それか! 



 ガギィーン! 



 その時、武器が壊れる音がした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ロベリア「シルクちゃーん、私ー飲み物が欲しいなー」

シルク「ロベリアさん、冷蔵庫に沢山有るわよ。それよりも、カトレア先生が

    引きつった顔して出て行ったわよ?」

ロベリア「アーハー。シルクちゃん、知らないんだー」

シルク「知っていたら、聞かないわよ」

ロベリア「リカステがー、リリーちゃんをー裏に連れて行ったそうよー」

シルク「なによそれ! それって、逆でしょ」

ロベリア「だよねー。私もー、そう思うー。カトレアちゃんはー、慌てる所ある

     からねー。落ち着いたらー、分かるのにねー」

シルク「放っておいて、良いの?」

ロベリア「大丈夫よー、よく喧嘩するしー。喧嘩するほどー、仲が良いって

     言うでしょー」

シルク「確かに……」

 ウォータスライダーの険悪な雰囲気とは違って、のんびりするシルクと

 ロベリアであった。

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