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パイ王女の嫉妬とリカステさんと急接近? 

 ウォータスライダーのスタート地点にやって来ると、第二チームが既に集合していた。

 浮き輪を見ると、ハイビスカスはスヤスヤ寝息を立てていた。

 寝顔が、滅茶苦茶可愛い。

 あれ? 今更気づいたけれど、最近思わずといった感じで方言が出て来ていないな? 


 全く出ない、という事は無いのだけれど……以前ははこんな気持ちになると、ハイビスカスの事を愛らしいと思っていた。

 でも今は可愛いと、心情で思ってしまう。

 意味は同じなのだが、やはり大学の頃にも感じた様に周りの子達の影響なのか? 


 若しくは、この身体(ウツワ)の本当の持ち主の影響なのかな? 

 俺には、分からない。

 だけど今は……ハイビスカスのホッペが、プニプニしていて柔らかいので触る方が先決なのだ。

 頬をプニプニしていると、横になっていたハイビスカスが仰向けになった。



 デーン! 



 はうっ! ……やっぱり、ちっぱいじゃ無くなっているよ。

 さっきまでは、AだったのにDになっている。

 だけど、長くなった髪の毛はサラサラしていて気持ち良い。

 俺はハイビスカスの頭を撫でながら、水着の胸の部分を調整してあげた。



「リリママ……」



 ふー、やれやれ。

 水着に胸の部分を大きくしてあげたら、寝言を言って尻尾を抱いて再び横になったよ。

 だけど、今のワンピースでは限界があるので、ハイビスカスもフリルとリボンが沢山付いたカットアウトバンドゥビキニ、若しくはタンキニにした方が良いかな? 


 龍種って、人型になると胸が大きくなるんだよね。

 ハイビスカスのママと風龍も、凄く大きいし。

 だけどハイビスカスは、ちっぱいだったから違うと思っていたのに……。

 こんなに胸が大きくなったら、ハイビスカスは俺の妹じゃなくてお姉ちゃんになっちゃうじゃない。


 ……どうやら俺も、アザレアちゃんと同じ思考のようだ。

 だけど、この思考もアザレアちゃんに同調したのかな? 

 まあ別に、気にするほど変な同調ではないので良いのだけれどね。

 ともあれ、ハイビスカスはこのまま眠っていて問題はさなそうだ。

 なので、リカステさんをウォータスライダーの裏に呼び出すことにした。



「リカステさん、ちょっと良いかな?」

「何だ? リリーちゃん?」

「良いから、来て」

「おっ、おう」



 裏に呼び出すって言っても、怖い上級生のように下級生をしめたり、男の子相手に告白するんじゃないからね。

 俺が変な事を考えてリカステさんを連れて歩いていると、後ろをなぜかパイ王女がついてきた。

 しかも、気づかれないよう隠れながらである。


 だけど、角と尻尾が見え隠れしているからバレているんだけどね。

 まあ、そんなところは可愛いけれど……。

 ある程度ウォータスライダーの裏まで行くと、早速リカステさんに話をする事にした。

 少し恥じらう様に上目遣いをして、リカステさんに伝える。



「リカステさん、これ……受け取って下さい」



 そう言って俺は、頬を染めて両手を差し出す。

 差し出したのは、オクタゴン・カットを施した小さなガーネットの装飾が施されているバックルが付いたベルトと、同じカットを施した小さなアイオライトの装飾が施されたドッグタグだ。


 上目遣いと恥じらう姿は、こういったシチュエーションでプレゼントをする、乙女がしそうな姿であろうと考えてだけどね。

 乙女らしい姿をしていると、どこかでなぜか石が砕ける音がした。

 あれ? 後ろで覗いている、パイ王女の手元から砂のような物が落ちている? 

 でも、さっきの音は気のせいだよね。



「ん? ベルトとネックレスか? だが、リリーちゃん? なぜどちらも、宝石が付いているんだ?」



 その宝石を見たリカステさんは、引くような表情をとった。

 まあ確かに、俺もエレモフィラ君達から宝石箱をもらった時は、もの凄く引いたけれどね。

 だけど、色々と魔法を付与させる為には宝石がもってこいなのだ。

 まあ、他の物でも付与はできるけれどね。

 ……もしかして、強面の顔に宝石は似合わないとでも思ったのかな? 


 でもリカステさん、引いている顔が凄く怖いよ。

 俺は思わず眼を逸らし、近づいてリカステさんの両手を触りベルトとドッグタグを握らせた。

 あれ? また、石の砕ける音が……。

 だけど、リカステさんに装備の説明をしないとね。



「これは、リカステさん専用の武具と装備が、そのバックルの宝石とドッグタグの宝石にに備わっています。そのドッグタグをベルトのバックルにはめ込む事で、カトレア先生達やロベリアさんのように変身することが出来る魔道具なんですよ」



 そう。これは男の子の憧れである、変身ベルトのようなギミックも有るのだ。

 勿論、ドラシルシステムの音声も同時に発せられるよ。



「俺は、こんな高価な物は受け取れんぞ。それに、俺には愛用の鉄の大戦斧がある」



 そう言って、リカステさんは返してきた。

 そう言えば、リカステさんの武器に属性補助を施した時に……あれ? Aランク冒険者が、そんなわけ無いよね。うんうん。気のせい、気のせい。と思っていたが、やっぱり鉄の大戦斧だったんだ。


 店に沢山並んでいて、安売りをする事もある鉄の大戦斧で、S級危険種の中でも特に厄介な氷獄の悪魔ドッペルゲンガーをよくもまあ倒したね。

 少しばかり、驚いたよ。

 うわー、でももっと早くリカステさんにちゃんとした武器を渡せば良かった。

 恐らく、何度も冒険者学校の闘技場で氷眼のサイクロプスに挑んでいたので、刃先がボロボロじゃ無いかな? 



「リカステさん、氷眼のサイクロプスに何度も挑んでいたのは知っています。なので、もう使い物にならなくなっているのでは?」

「がはは! リリーちゃんは、俺が氷眼のサイクロプスに何度も挑んでいるの知っていたのか。だが、問題は無い。鉄の大戦斧を、何度も鍛え直しているからな! 俺は、鍛冶も出来るんだぞ」



 流石、ドワーフとのハーフだ。

 ドワーフで有っても、鍛冶が出来るとは限らないがリカステさんの場合は鍛冶も得意なようだ。

 だけど、俺が創ったリカステさん専用の武具と装備は、冒険者学校の素材と同じで、オリハルコンとアダマンタイトとミスリル等の、複合鉱石と魔法システム回路を併せ持つ合金で創られている特別製だ。


 なので、ドワーフの豪腕の能力も上げることが出来るし、炎龍と風龍の鱗を加えたことで龍種の力を使用出来るようになる装備なのだ。

 おまけに、ドラシルシステムをリンクして制御させているので、シルちゃんとも相談できる優れもの。


 つまり、リカステさん専用の龍(ドラゴン)人形(ドール)姫(プリンセス)システム……いや、リカステさんの場合は変えた方が良いよな。

 改めると、龍(ドラゴン)紳士(ジェント)システム内蔵型の新武装なのだ。


 だけど、断れるとは思いもしなかった。

 装備者を変更も可能だが、なぜか告白を断られた様な気分にさせられた。

 やはり校舎裏では無いが、施設の裏という物は、そういう効果が有る場所なのか。

 よし、リカステさんに交渉してみよう。



「そうですか……リカステさん専用に創ったので、リカステさん以外は誰も使用出来ません。残念ですが、倉庫にしまい込むしか無いですね」



 そう言って俺は、俯いてみた。



「何? 俺しか、使用出来ないのか?」



 リカステさんが、少し驚いている。

 だから、その顔怖いですよ……でも、もう一押しかな? 



「はい。なので、リカステさんがどうしても必要ないと仰るのなら、この子達は倉庫行きです。グスン……。折角、私が心を込めて創ったのに残念です。シクシク……」



 リカステさんに、シルク直伝の嘘泣きが通じるだろうか? 

 アイビーと一緒にいると、たまにシルクが使っていた手なのだ。

 それを、見よう見まねで覚えた……直伝じゃ、無いじゃん。

 でも、我ながら見事な演技である。



「うっ……。リリーちゃんに泣かれると、俺の紳士としての真価が問われる。本当に、こんな高価な物良いのか? ……じゃー、遠慮無く頂くぞ」

「はい。嬉しいです」



 よし、上手くいった。リカステさん、チョロいよ。

 だけどリカステさんには、よりよく使って頂くために俺なりのサービスをする。

 つまり、ベルトとバックルはそのまま渡したが、ドッグタグは首に付けてあげることにしたのだ。



「リカステさん、ドッグタグ付けてあげますね」

「えっ? リリーちゃん、俺自分で付けられるぞ」

「良いの、良いの。ほら、しゃがんでしゃがんで」



 俺はそう言って、リカステさんの腰を下ろさせた。

 しかし、リカステさんは筋肉質で胸板が分厚く背が高い。

 なので、腰を下ろさせても付ける際に背伸びをするしかないのだ。


 しかも後ろから付けようとしたが、中腰なのでリカステさんの首に付けるには背中に抱きつくしかない。

 前から付けようとすると、怖い顔を直視する事になる。

 色々と考えた結果、目を瞑ってリカステさんの前からドッグタグを付ける事にした。



 ポニュ、ポニュ! ポニュ、ポニュ! ポニュ、ポニュ! 



「リリーちゃん……さっきから、当たってるぞ」



 俺の水着が、リカステさんの顔に当たっていることを教えてくれた。

 ……ユグドラシルと、同じ事をしてしまったよ。

 でも、前が見えていないから仕方ないよね。



「リカステさん、ごめんね、前に、行きすぎたかも」

「リリーちゃん、眼を開ければ良いだろ?」

「だって、リカステさんの顔怖いもん」

「うるせえよ!」

「だけど距離はつかめたから、もう大丈夫だよ」



 俺は手でリカステさんの顔の位置を把握して、どうにかリカステさんの首にドッグタグを付ける事が出来た。



「リリーちゃん、ありがとな。けどよ、さっきから石が砕ける音が凄いんだが……」



 俺は新武装の事と、リカステさんへのサービスの事で頭がいっぱいだった。

 なので、すっかりパイ王女の事を忘れていたのだ。

 すると、隠れていたパイ王女が出てきた。



「あわわわ……リカステおじさん、僕のことを可愛いっていったのにあんまりだ」



 そう言って、パイ王女は走ってどこかに行った。

 パイ王女、俺も可愛いっで言ったけど忘れてない? 

 まあでも、男性と女性の違いだよね……。

 それに、完全に誤解しているよ。


 神すら惑わす強力な魔法をかけられようと、リカステさんを好きになる事なんて有り得ない。

 いや別に、リカステさんを嫌っているわけじゃないよ。

 恋愛対象として、という意味だよ。

 ……この考え方も、変だよな。


 だけどパイ王女には、リカステさんとキスや如何わしい事をしているように見えたのかもしれない。

 確かに水着でリカステさんの顔に触れたけど、あれはリカステさんの顔が悪いの。

 ……リカステさん、顔が悪いって言ってごめんなさい。

 うっ……リカステさんといると、謝ってばかりだよ。全く。



「リリーちゃん、そんな怖い顔して俺を睨むなよ」



 ふえっ? 無意識に、リカステさんを睨んでいたのか? 



「そんなことより、リカステさん。パイ王女を、追いかけて下さい」



 それに、なぜまだ腰を下ろしたままなの? 

 ドッグタグは、付けてあげたでしょ? 

 ドッグタグって言っても、大きなワン子じゃないんだからサービスは終わりだよ。



「リリーちゃん、俺とパイ王女をくっ付けようとしてないか? 昼食の時も感じたが、俺はリリーちゃんがパイ王女の機嫌を良くしないと、この国ともめる恐れが有るって言われたから作戦に乗ったんだぞ」



 なんだ、そっちの事を考えていたのね。

 実は、この国に来て考えさせられた事が有ったんだ。

 何者かが、暗躍を企てていると言うことを。

 そして、それは俺一人では解決する事が出来ない。

 ならば、今回のように手分けをして解決するしか方法は無い。


 幸い、パイ王女はリカステさんの事をかなり気に入っている。

 しかしパイ王女が気に入っていてたとしても、リーフリュウシン小国の王女とフォレストムーン王国の元冒険者である民が、くっ付くなんて常識ではまず有り得ない。

 だが、リーフリュウシン小国は強き者であり国に対して多大な貢献をした者には、爵位を与え願いを叶える傾向があるらしい。


 リカステさんがパイ王女と仲良くなって、リーフリュウシン小国と繋がりが深くなれば、俺達もリーフリュウシン小国に招待してもらえる可能性が有る。

 つまり他国に行って情報を集める事で、暗躍を企てている者の尻尾を捕まえる事が出来る可能性が増えるのだ。

 まあ他にも、日本酒を飲んでいた王妃達から色々とリーフリュウシン小国の事は聞いたけれど、今はそんなことを語っている場合じゃない。



「何を、言っているんですか。今まさに、そうなる事態が起ころうとしているんですよ。リカステさん、紳士としてパイ王女を早く追いかけて下さい」

「いいけどよー」



 必死に走って、パイ王女にリカステさんが追いついたは良いものの、この後パイ王女に誤解だと説明するのにかなり苦労をさせられた。

 パイ王女が俺に対して泥棒猫と言ってきたが、リカステさんが可愛いを連呼してようやく収拾がついた。


 いやー、ホント参ったよ。

 どうやら、俺とリカステさんの行動の一つ一つがパイ王女の乙女心を傷つけたようだ。

 リカステさん、パイ王女に好かれすぎだよ……良い傾向だけどね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アザレア「あれ? パイ王女様どうされたのですか?」

パイ「今、リカステおじさんとリリーが二人だけで施設の裏に行ったのだ。僕、

   心配だから見に行ってくるよ」

ブルメリア「パイ王女様、ブルメリアもお供いたしましょうか?」

パイ「僕一人で、十分だ。では、行ってくる」

アザレア&ブルメリア「「はい」」

アザレア「ブルメリアちゃん、どう思う? アザレア、リリーちゃんが心配です」

ブルメリア「ブルメリアも、心配です。だって、時折リカステ先生凶悪な笑顔を

      見せるから……」

アザレア「ブルメリアちゃん? リカステ先生、少し前に凶悪な顔してたよね? 

     アザレア、カトレア先生に連絡するね。ブルメリアちゃんは、ここで

     待っていて下さい。戻ってくるかもしれませんので」

ブルメリア「はい、分かりました」

 こうしてカトレアは、アザレアによってウォータスライダーのスタート地点に

 呼び出しを受けるのであった。

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