魔動ウォータースライダーの管理室
第一チーム目の楽しいウォータスライダーが終わり、俺はカトレア先生達と別れテレポートを使用し管理室にやって来た。
すると、ユグドラシルが管理室の端末でウォータスライダーのシステムとドラシルシステムの再接続作業をしていた。
しかし、隅の方で椅子に座り悲しみに沈んでいる者達がいた。
ユグドラシルに、相当怒られたんだろうな。
管理室を管理する者として、ウォータスライダーに乗る者達に対して危険に晒すという行為は絶対に有ってはならない事だからね。
俺が元いた世界ならば、安全管理がなっていない等で施設自体が閉鎖されたり、管理責任を問われたりすることが有る。
まあでも、安全面は俺が保証するよ。
誤ってSS級危険種の魔物が出てきて、その危険種に攻撃されたとしても、浮き輪内にいる者達が耐えられない攻撃だと判断された場合、この魔動ウォータスライダーの独自システムが浮き輪に内蔵されているので、浮き輪と同じ障壁で全体を覆うんだよね。
そして、ウォータスライダー内にいる魔物は強制的に消去される。
元々ウォータスライダーのシステムと冒険者学校のドラシルシステムがリンクして出現させた魔物だからね。
それに、リンクが外れた状態では設定した魔物以外はもう出現しない。
つまり、管理システムとドラシルシステムを再リンクし復旧さないと、第二チームは魔物が出現しない普通の魔動ウォータスライダーに乗る事になる。
それでも一般的な子供達なら、十二分に楽しみ事が出来るウォータスライダーなんだけどね。
しかし第二チームの女の子達は、炎龍であるハイビスカスが引くバナナボートのスピードを上げるほど、派手で激しい事が大好きなのだ。
なので、魔物を倒すときもエレモフィラ君やバレリアン君のように堅実な戦い方をせずに、派手な技や魔法で撃破する。
まあ、そんな魔法や技を出していると普通は最後まで持たないのだが、彼女達は選抜試験の時に能力低下90%で痛い思いをした。
その事から、選抜試験終了後に基礎魔力や基礎体力を重点的に上げる訓練を、毎日スミレちゃんの指導の下一緒にする事でどちらも底上げする事ができた。
あの時はスミレちゃんと能力差があまりにも有りすぎたので、仕方がなかったんだけどね。
即ち、早急にシステムを元に戻さなければ第二チームの女の子達が楽しめないのだ。
管理室にそっと入ったのだが、ユグドラシルが俺に気がつき振り返った。
「リリー様、お疲れ様でした」
ユグドラシルの声と違って、ウンディーネとシルフの表情が暗い。
「「リリー様、申し訳ありません」」
ウンディーネとシルフの平謝りに対して、ユグドラシルも一緒に深く頭を下げた。
ユグドラシルは、召喚精霊の中で一番上の者として責任を感じたのだろう。
俺が知っている物語の最上位精霊や聖霊は、威厳がある者として決して頭を下げることはしなかった。
だけど、一緒に謝るってユグドラシルは本当に召喚仲間達に優しいな。
ウンディーネとシルフは、良い先輩聖霊に恵まれたね。
「ディーネとルフも、このように反省しております。ユグも一緒に謝りますので、リリー様お許し下さい」
だけど、この子達には大変な思いをさせてしまった。
俺がもっと、対策を考えていれば良かった。
だけど、カトレア先生達は楽しめたようだし、王子やエレモフィラ君達も魔物に対する知識がしっかり身についたはずだ。
結果的にとも言うけれど、問題は無かったのだ。
ならば、俺がする事は笑顔になって楽しかった事をウンディーネとシルフに伝える事だ。
ユグドラシルは、俺の心情を読んでいるので分かっているしね。
「皆、頭をあげてね。それに、私怒ってないよ」
そう言って、頭を上げさせるとウンディーネとシルフは涙ぐんでいた。
俺は二人の頭を撫でて、楽しかった事を言葉にして伝える。
「それがね、カトレア先生達が凄く喜んでいたの。王子とエレモフィラ君達は、疲れていたけどね。でも、私凄く楽しかったわ」
ウィリディスム王子はかなり疲れたようで、エレモフィラ君達に抱えられてウォータスライダーの施設を後にした。
王妃達がいるアロマテラピールームに、心を癒やしに行くらしい。
三人で心を癒やしに行くのは良いけれど、何か悩みごとがあるのかな?
まあ、良いけれどね。
管理室の様子を見ると、色々な物が違った場所に置かれていた。
恐らく、ケットちゃんが走り回ってひっくり返したが、置く場所が分からなかったのだろう。
ティーポットやゴミ箱が、別の場所に置かれていた。
でも、安心して。
皆で一端外に出ると、元の配置に戻って清掃もされるからね。
ユグドラシルから俺の心情に伝わる、ウンディーネとシルフの悲しみが消えるまで俺は頭を撫でてあげた。
「ディーネちゃん、ルフちゃん、大変だったけど頑張ってくれたんだね。ありがと」
ユグドラシルとウンディーネとシルフに、ウォータスライダーでの出来事を話した。
ウンディーネとシルフはモニターで俺達の様子を見ていたから知っているとは思うが、三人に笑顔を向け手はウォータスライダーのシステムとドラシルシステムの変更を加えながら、カトレア先生達の面白い挿話を添えて話したのである。
そんな俺からの話しを聞くことが、ウンディーネとシルフにとっては幸せだったようだ。
話が終わる頃には、二人ともすっかり笑顔になっていた。
「そうでしたか。ユグはリリー様が心配でしたが、楽しめたのでしたら良かったです」
ウンディーネとシルフには、また心配をかけないようレモンちゃんの元へ行ってもらった。
なので、今はユグドラシルと二人っきりだ。
「リリー様、召喚精霊の中でユグだけリリー様とこんなにも幸せな時を過ごしても良いのでしょうか? ディーネやルフ、それにケットちゃんを叱った者として、少々気が引けます……」
ユグドラシルは、俺に撫でられる事がこの上なく幸せに感じるらしい。
優しくユグドラシルの頭を撫でていると、たまに吐息を漏らす。
別に変な事はしていないのだが、かなり色っぽい声色を出すのだ。
なので、静まり返った夜にはあまり撫でられない。
ユグドラシルにその事を聞くと、どうやら俺に優しく頭を撫でられると、俺の神力と魔力が身体全体に行き渡るようなのだ。
それがあまりにも心地よくて、思わず吐息が出てしまうらしい。
「良いの。ユグちゃんには、私お世話になってばかりだからね。たまには、ユグちゃんが良い思いしないと駄目だよ。それに精霊達はレモンちゃんも召喚できるけれど、聖霊は私だけでしょ。だから、ユグちゃんは私に甘えて良いの」
俺はそう言って、第二チームが楽しむ為の仕込みをウォータスライダーのシステムに施していった。
ユグドラシルと手分けした事で、ドラシルシステムとウォータスライダーの管理システムを再びリンクさせることが出来た。
それに、構築し直した事で今回は完全なものが出来上がった。
これで、少々誰かが管理室で暴れたとしても大丈夫。
因みに、ボタンがあったら押したくなるケットちゃん対策もバッチリだ。
ユグドラシルはシステムを再構築している時に、撫でたりお菓子を一緒に食べたりして甘えさせたので満足したようだ。
「リリー様、ユグは本当に感謝しています。ですが、また宜しかったのですか?」
ユグドラシルがそう言うのは、無理も無い。
第一チーム目までは、ウンディーネとシルフが自身の能力を使用し暴風や大波を立てていた。
しかし今回は、それをウォータスライダーのシステムに初めから組み込んだのだ。
だって、楽しかったし良い訓練になったからね。
学校の闘技場では、ウォータスライダー施設のような不安定な場所での訓練は出来ない。
なので、海上での訓練という貴重で良い経験になるのだ。
「うん、今度はリカステさん達に楽しんでもらう魔物を用意したからね。それに、リカステさんの武具や装備もテストしたいし」
「リリー様、あの激しい魔物との戦いの中で作業されていたのですか?」
「だって私は、ハイビスカスを撫でていただけだからね。カトレア先生達の生のデータも取れたからね。リカステさんの武具と装備も良い感じに仕上がったよ」
「それは、何よりです」
そう言えば、あまりにも気持ちよく眠っていたから起こさなかったけれど、ハイビスカス起きたかな?
浮き輪はスタート地点に戻る様になっているから、大丈夫かな?
でも、一応モニターで確認してみよう。
……うん。まだ、寝てる。
寝る子は育つって言うけれど、髪が長くなって水着の胸の辺りがはち切れそうになっているのは気のせい?
なぜ、髪と胸だけが急成長するの?
ハイビスカスの元に行ったら、水着を調整しないとね。
だけどシルクに見つかったら、スノーのように指で突かれるかもしれないな。
「リリー様ハイビスカスの事は気になりますが、もう直ぐで第二チームのお時間ですよ」
もうそんなに、時間が経っていたのか。
ユグドラシルと、二人でシステムを調整したが今回の魔物は海の魔物に限定した。
陸上の魔物は闘技場で数多く戦って訓練してきたので、Zクラスの女の子達は慣れてしまっていると思う。
それに訓練で倒したことがない魔物を出せば、例えランクが低い魔物でも楽しめると思ったのだ。
「ユグちゃん、ありがと。リカステさんに創った物を渡してから、ウォータスライダーを出発させるね」
リカステさん、創った装備を気に入ってくれるといいな。
でもリカステさんの笑顔が怖いので、喜んだ時の姿を思い浮かべないようにしないとね。
「はい。リリー様、管理室はユグが死守しますので、ウォータスライダーをご堪能下さい」
もしかして、ユグちゃん……リカステさんの、凶悪な笑顔を思い出したの?
夕食にリカステさんの大好きなお酒を出した時、笑顔が殺人鬼のような顔だったよね。
あんな顔していても、犯罪者じゃないんだから死守しなくても良いよ。
「あははは、ユグちゃん死守はしなくても大丈夫。でも、ありがと感謝しているよ」
「プッ! リリー様、ユグはそんなことは思っていませんよ。それに、リカステさんに失礼です。クスッ」
リカステさん、笑顔を笑いの種に出してごめんなさい。
でも、お陰でユグドラシルの不安な心が吹き飛びました。
リカステさん、ありがと。
「テヘッ、冗談よ。でも、ユグちゃんも笑顔になったわ。じゃー、私行ってくるね」
俺はそう告げて、笑顔で送り出してくれたユグドラシルに別れを告げて管理室を後にした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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ウィリディスム「エレモフィラ君、バレリアン君、君たちはいつも城の騎士達で
すら団体戦を挑む、危険種を相手に訓練しているのか?」
バレリアン「A級危険種はありましたが、S級危険種は初めてです。それに、
A級危険種一体にZクラスの皆で危険が無いようにして挑んで
いました」
エレモフィラ「フッ! その通りだ。B級危険種の時は、三人で挑んだよ。
だけど、一体だったね」
ウィリディスム[では、今回は特別だったのか?」
エレモフィラ「フッ! でも、カトレア先生がSランク冒険者の資格を持って
いるからね」
バレリアン「ロベリアお姉さんも、確かAランクだったよね」
ウィリディスム「それは、凄いな」
バレリアン「ただ……リリーちゃんが、カトレア先生達よりも遥かに強いので、
魔物がSS級の危険種が出ても驚かなかったよ」
ウィリディスム「ふむ……ではやはり魔物から守るというのは無理そうだな。
やはり、めが……いや、僕が尊敬できて好きになったお方だ」
エレモフィラ「フッ! でも、普段はドジをする可愛い女の子なのさ」
バレリアン「そうだね。ブッ! ……思い出したら、鼻血が出てきたよ」
バイオレット「貴方達、そんな事を話しているとスミレに叱られるわよ」
エレモフィラ&バレリアン「王女殿下」
ウィリディスム「やあ、バイオレットちゃん。君もアロマテラピールームに、
来ていたんだね」
バイオレット「お母様方も、いらしているわよ]
ウィリディスム「それにしても、その耳と尻尾はどうしたんだい? 可愛いね」
バイオレット「リリーちゃんが、作ってくれたの。似合っているでしょ。
お母様が付けて似合っているから、ロセウス王妃が欲しいそうよ。
もしかして、ウィリディスム君も付けたいの? リリーちゃん
に、お願いしても良いわよ」
ウィリディスム「えっ?」
バイオレット「善は急げね……」
ウィリディスム「あっ、ちょっと待ってバイオレットちゃん」
危うくホワイトバイオレット王女に、ネコ耳尻尾仲間にさせられそうになった
ウィリディスム王子であった。




