絶叫型魔動巨大ウォータースライダー? 4
カトレア先生が俺に何かを伝えようとしているが、ハイビスカスと一緒に音を遮断している障壁に囲まれているので何を伝えたいのかが分からない。
それにしてもカトレア先生、俺が小首を傾げているからって鳥のように羽ばたく真似をされても可笑しいだけですよ。
「ぷっ!」
俺は思わず笑って、遮断していた音を俺だけ解除して、障壁をハイビスカスだけを覆うように戻してカトレア先生の元へ行くことにした。
すると、何に騒いでいるのかがハッキリと分かった。
ギュエー! ギュギィ! ギュゴォー! ギャギャ!
「リリーちゃん、何で笑っているのよ。小首を傾けていたから、もしかすると聞こえていないかもしれないと思って、仕方なくこちらは真似をして説明したのに」
だって綺麗なドレスを着ている美しい女性が、口を尖らせて手をヒヨコの様にバタバタさせている姿なんて、前の世界の宴会芸でも見たことないし。
先生、芸人さんじゃ無いんだからもう少し優雅に羽ばたく鳥の真似をして下さいよ。
確かに、似てはいますけどね。
ロベリアさんも、密かに笑ってるし。
「ぷっ! 思い出したら、またおかしくなって来ました」
「もぉー、いいでしょ! それよりも、リリーちゃん? 何で風獄にいるはずの、業風のガーゴイルがいるのよ! あれって、S級危険種なのよ!」
そんなことを言われても、可愛い子猫ちゃんの悪戯としか言えないよ。
だけど、A級の危険種はカトレア先生達はもう慣れたのだから、次のステップに行っても良いと思うのだけど駄目だったのかな?
数は違うけれど、元々最後の第十五関門で出現させる予定だったし……。
でも、これはこれで良い経験になると思うのだけど……よし、ポジティブに考えよう。
「カトレア先生、ここからは先生達がもっと楽しむ番です。ロベリアさんと協力して、私達に被害が出る前に素早く倒して下さいね」
それに、これは俺が仕込んだ魔物でも無く神様の……もとい、子猫ちゃんの悪戯だしね。
「リリーちゃん? 業風のガーゴイルって、皮膚が異常に丈夫で素早くて、暴風を翼に纏っているので、王国の騎士団で団体戦を挑んでも倒すのがかなり困難な相手なのよ」
カトレア先生、もうその件は良いですよ。
それに、制限時間が無くなったので絶対に忘れているよね?
しかも、ドラシルシステムと話してないからシルちゃんの事も忘れているようだし……。
まあその魔動プラズマ レールガンやアナイアレイション キャノンを使用可能な、ドールシステムを使用しなくても十分に倒せる魔物の団体さんだったからね。
「先生、装いの事を忘れていませんか?」
「あっ!」
やはり、カトレア先生は完全に忘れていた様だ。
俺も、人の事は言えないけれどね。
「カトレア先生とロベリアさん達は、今龍人形姫ドレスを纏っているんです。炎龍よりも、遥かに格下である業風のガーゴイル四体なんて先生達の敵ではありません」
あの時は、俺の全補助魔法がかかっている状態だったので違うと言えば違うけれど、今でも厳選した補助魔法をかけているからね。
体感的には、変わってないはずだよ。
「あははは、忘れていたわ。リリーちゃん、ありがとう。サクッと、倒してくるわね」
カトレア先生はそう言って、微笑んだ。
やはり、元冒険者の血が騒ぐのかもしれない。
予想できなかった可愛い子猫ちゃんの悪戯でしたが、カトレア先生達も本格的に楽しめる第十四関門スタートです。
ギャギャ!
カトレア先生と話をしていると、業風のガーゴイルが一体カトレア先生目掛けて、急降下して来た。
「ロベリアちゃん、遅くする固有能力を集中してあの一体にだけかけて! 失敗しないでよ! 失敗すると、私も巻き込まれるんだから。疾風迅雷! 蝶の舞い!」
ロベリアさんに念を押すのは、やはり何度も緩慢の微笑に巻き込まれた経験があるのだろう。
炎龍との戦いのデータにも、スミレちゃん達が巻き込まれたと記録があったから、ロベリアさん常習犯なんだろうな。
カトレア先生が、ロベリアさんを何度も振り返っている。
でも上手く、業風のガーゴイルの攻撃を躱していた。
しかし、明らかに今までの魔物よりも早い事が分かる。
やはり、あの業風を纏う翼のせいだろう。
あの翼の業風は、攻撃と防御と早さに使用出来る非常に厄介な翼だ。
それに、翼の業風から放たれた竜巻は小さな村や町なら一瞬にして破壊出来る。
つまり、業風のガーゴイルが一体現れただけで、国に多大な被害をもたらすのでS級指定されている危険種なのだ。
カトレア先生は隙をみて剣先を業風のガーゴイルに当てているが、業風が翼だけでなく身体全体を薄く覆っているので、僅かにブレて攻撃が急所に入らないようだ。
「はーい。カトレアちゃーん、いくよー」
しかし、カトレア先生とは対照的にロベリアさんは相変わらずマイペースである。
種族特有のものだろうけれど、もう少し緊張感があった方が良いと思うのは、俺だけなのだろうか?
「慎重に、慎重にお願いね!」
カトレア先生は、業風のガーゴイルの爪による攻撃を躱しつつ、何度もロベリアさんにお願いをしていた。
確かに、カトレア先生まで緩慢の微笑をかけられたら本末転倒だからね。
だけど、カトレア先生安心してね。
龍人形姫ドレスを改良して、補助機能を追加しているから大丈夫。
その他の業風のガーゴイルはというと、カトレア先生の攻撃と躱す様子を窺っていた。
あの中に恐らく、業風のガーゴイルのリーダーがいるはずだ。
そのリーダーが、一体の業風のガーゴイルに指示を出して先生達の出方を窺っているのだろう。
しかし、それは普通の冒険者の場合有効だが、この二人を甘く見すぎているよ。
「【【緩慢の微笑!】】」
ロベリアさんが固有能力を発動した瞬間に、味方である俺達以外の全てが遅くなった。
水しぶきがほぼ留まり、うねっていた波や風が静まったように感じられる。
この空間を支配する能力、これこそが本来の緩慢の微笑なのだ。
「ロベリアちゃん、ありがとう」
カトレア先生がロベリアさんにお礼を伝えると、ロベリアさんが驚いた表情をしていた。
「カトレアちゃん、それにしてもこのドレス凄いわ。指定した仲間以外に、緩慢の微笑をかけられたわよ。以前よりも、能力が格段に上がっているかもしれないわ」
そう言って、ロベリアさんは俺に笑顔を向けてきた。
ロベリアさん、喜んでもらって何よりだよ。
「リリーちゃん、感謝するわね」
説明しよう。
緩慢の微笑を発動したロベリアさんは、発動している間は普通に話せるのだ。
因みに、離れて様子を窺っていたリーダーを含む業風のガーゴイル達もロベリアさんに能力で異常に遅くなっている。
つまり様子を窺っている姿のまま、ほぼ動けないでいるのだ。
ここで、カトレア先生は何か思い出したようにアクセサリーに手を触れた。
「シルちゃん、対策武器は?」
ここで、ドラシルシステムを使うのか。
カトレア先生達ならそのままでも倒せる筈だけれど、新しくなった攻撃機能を確かめるのかな?
「マスターカトレア、お久しぶりです。この程度の相手なら龍人形姫レールガンで事足りるかと」
「じゃー、それお願い」
カトレア先生、相変わらずシルちゃん任せだ。
「イエス マイマスター。既に、召喚済みです。オール スタンバイ オーケー。マスターカトレア、ご指示を」
カトレア先生とロベリアさんの前に、龍の着ぐるみを着た小さな人形が一人ずつ現れた。
一人ずつと言っているのは、着ぐるみを着た時の五歳の俺にあまりにも似すぎていたので、一体とはとてもではないが言えなかったのだ。
「目標は、四体の業風のガーゴイル! 龍人形姫マスターが一人、カトレアが命じます。悪しき魔物に、聖なる光りを解き放て!」
キュイーン! キュイーン!
ドシュ! ドシュ! ドシュ! ドシュ!
カトレア先生が指示を出した瞬間、龍の着ぐるみを着た小さな人形の両手から青白い光りが放たれたかと思うと、業風のガーゴイル四体の同体を一瞬で光りが貫いた。
そして光りで貫かれた業風のガーゴイルは、光りとなって消え失せた。
まさに、一瞬の出来事だった。
全ての業風のガーゴイルを倒したので、ロベリアさんは緩慢の微笑を解除したようだ。
先ほどの龍人形姫レールガンの威力は、想定通りの威力だった。
上手く、龍人形姫ドレスの調整が出来たようだ。
以前なら召喚した人形は、相手の攻撃を吸収しその力を利用し変換。
その変換したエネルギーと、変換時に生成されたエネルギーをも再利用し、倍以上のエネルギーに変換して相手を攻撃をする。
又は、冒険者学校の地下に戻ってエネルギーを補充し再召喚され相手を攻撃する。
それが今は、リンクしたハイビスカスがいるのでその必要は無くなった。
炎龍は大陸領域近くに火山島が有る限り、その地から無限にエネルギーを吸収出来る。
なので、そのエネルギーを利用する事で補充に戻る必要は無くなったのだ。
まあ、その炎龍を気絶させるスノーって、どんだけと思うけどね。
カトレア先生とロベリアさんの隣には、五歳と十五歳の俺の容姿をした縫いぐるみ人形が守護人形としている。
今回は、龍の着ぐるみを着た妖精の様に小さな人形を召喚したので、その子達も一緒にいる。
龍の着ぐるみを着た人形も五歳の容姿をした俺の姿をしており、カルガモの親子のようにカトレア先生達についていくので、少し恥ずかしいが致し方ないだろう。
バレリアン君が何を思ったのか、ふらっと吸い寄せられるように、龍の着ぐるみを着た人形に近づこうとしている。
それを、エレモフィラ君とウィリディスム王子が止めていた。
バレリアン君って、小さな子が好きだからね。
だけど、連れて帰ろうとしても召喚で呼んでいるので、冒険者学校の地下に帰っちゃうよ?
「シルちゃん、ちょっと過剰すぎじゃなかった?」
カトレア先生は、龍人形姫レールガンの威力に驚いているようだ。
まあでも、それより威力が低い武器は少々問題があるのだ。
なので、シルちゃんは敢えて龍人形姫レールガンを使用したのだろう。
「マスター、今のは龍人形姫マスターの最低レベルの銃撃です。
手加減されるようでしたら……マスターのように美しい女性に対してお勧めは出来ないのですが、マイクロ魔動射撃統制システム、通称MMFCS内蔵の自動追尾飛行機器、通称龍人形翼を使用されますか?
龍人形姫ドレスのスカートから射出されるので、射出される量によって少々丈が短くなりますが宜しいでしょうか?」
シルちゃんが気を遣っているけれど、カトレア先生は美しい女性と言った事を、スルーするように頷いて聞いていた。
もしくは、自身でそう思っているのかな?
確かに、カトレア先生やロベリアさんは美女と言っても全く差し支えないほど綺麗なんだけどね。
「私のスカートだけ、短くなるの?」
「いえ、ロベリア様と、ハイビスカス様もです」
シルちゃんの答えに、ロベリアさんの顔が赤くなった。
「えー? カトレアちゃーん、私は嫌よー? だってー、私はーカトレアちゃんと違ってー破廉恥じゃないものー」
ロベリアさんは、スカートが短くなるのは嫌なようだ。
だけど三人で分散すれば、肉体強化同様ミニにはならないんだけどね。
俺達が別荘の温泉に入っていた時、ロベリアさんが一緒に入ってきたから知っているけれど、凄く綺麗な足をしてるのに何で嫌なのかな?
でも、水着を着ている時は綺麗な足を気にせず曝け出していたよね?
カトレア先生同様、ロベリアさんの恥ずかしいに対するポイントが、俺には理解出来ないよ。
「誰が、破廉恥よ! もぉー、全く。シルちゃん、私のスカートだけでは難しいの?」
破廉恥に文句を言っているけれど、ロベリアさんの裾が短くならないよう気を遣う所が、カトレア先生らしいんだよね。
でも普段の姿を見ていると、やっぱりカトレア先生の恥ずかしいポイントも、俺には理解出来ません。
だって、俺もロベリアさん同様にそう思うからね。
「マスターカトレア、可能ですがその分短くなります。このウォータスライダーの現在の最大出現数は、九十九体です。ですので、魔物のランクによりますが、S級危険種の場合はリリー様の仰る絶対領域に近づく恐れがあります」
確かに絶対領域って、俺よく使うけれど……シルちゃん? そういう時に、俺の名前出さないでね。
意味が分かるのがシルクだけだから良いけれど、ウィリディスム王子やエレモフィラ君達が意味を知ったら、恥ずかしくて使えなくなるでしょ。
「シルちゃんが言っている、絶対領域の意味が分からないけれど、その時は龍人形姫レールガンを使用すれば良いだけよ」
「イエス マイマスター」
どうやら魔物に対する、方針が決まったようだ。
カトレア先生、ロベリアさん、頑張って下さい。
次が最後の関門、第十五関門ですよ。
「無事に、皆通過出来ますように……」
そう言って、心を込めて祈りを捧げていると第十五関門の魔物が出現しだした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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ユグドラシル「……ディーネ!」
ウンディーネ「ユグちゃん先輩、申し訳ありません」
シルフ「ユグ様……」
ユグドラシル「ユ・グ・ちゃ・ん!」
シルフ「済みません、ユグちゃん様」
ユグドラシル「様は付けないこと」
シルフ「はい」
ユグドラシル「で、なぜこのような状況に?」
レモン「ケットちゃんがね……」
ケット「ミィミィミィミィミィ!」
ユグドラシル「水しぶきが、降りかかって来た? ケット、言い訳ですか?
濡れてなど、いませんよね?」
ケット「ミィ」
ユグドラシル「尻尾を絡ませて来て、甘えた声を出しても無駄ですよ」
ケット「ミィー!」
レモン「みゃー。ユグちゃん、ごめんね。レモンが悪いの。叱るなら、
レモンにして」
ユグドラシル「レモン様、もう良いです。今後は、注意して行動して下さい。
今から、ウォータスライダーシステムの修復を試みます。
その後、リリー様がお越しになってからドラシルシステムと
リンクさせることになりますが、第十五関門には間に合いま
せん……リリー様、ユグが至らないばかりに申し訳あり
ません」
レモン「ユグちゃん? レモン手伝うことある?」
ユグドラシル「大丈夫です。レモン様、お気遣いありがとうございます」
ケット「ミィ?」
ユグドラシル「ケットちゃんも、気遣いは無用です。それより、尻尾を
タッチパネルからどけて頂けますか?」
ケット「ミィ! ――――。ミィ……」
ユグドラシル「ケットちゃん、そのスイッチは管理室を覆うシャッターの
スイッチなので、絶対に押さないで下さい」
ケット「ミィミィ! ――――。ミィ……」
ユグドラシル「ケットちゃん、駄目ですよ……」
ケット「ミィ! ――――。ミィ……」
ユグドラシル「レモン様、ケットちゃんを連れて帰って下さい。復旧作業に、
集中できません」
レモン「うん、ユグちゃんごめんね。ケットちゃん、めっ! だよ!」
ボタンやスイッチが有ると、どうしても肉球で触りたくなるケットであった。




