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絶叫型魔動巨大ウォータースライダー? 1

 このチームには、ウィリディスム王子がいる。

 ウィリディスム王子の、人に対する戦闘は実際に見たので知っている。

 俺から見ても、よく訓練した剣捌きだった。

 しかし、魔物に対しての戦闘はまだ見た事がない。


 それに、この施設で出現する魔物は様々な所から出現し、大きな浮き輪の上にいる俺達を攻撃してくる。

 俺達は、その不安定な浮き輪の上で全てを対処するしかない。

 しかも浮き輪は、暴風の中で急激なジェットコースターの様な上下の傾斜や波の立つ幅の決まった海路を突き進むので、通常の道での戦闘とは訳が違うのだ。


 一般人で超絶ハードな乗り物が好きな人なら、魔物が出てこなくても地獄の様にスリル満点なウォータスライダーなので、泣いて喜ぶ程楽しむことができるのだ。

 座って見ている俺とハイビスカスでさえ、暴風の風が舞う中、打ち付ける波のしぶきが痛いほどかかってくる。

 なので、俺とハイビスカスは薄い障壁を張っているのだ。


 更に、魔物の強さの変更や外見の調整など様々な事が出来が、今回は通常の魔物の強さや行動に設定にした。

 通常の魔物であっても、悪条件の中で行う戦闘だからね。

 なので、様子見で初めは弱い魔物を用意した。



「バレリアン君、鼻血を流している場合ではないよ。右前方から、ゴブリン三体!」



 グギィー! ギギ! ギャギ! 



 ウィリディスム王子が、ゴブリンを見つけたようだ。

 だけど、奥に行くに連れて強くなって行くので気を引き締めないと痛い目を見る。

 それに、見た目は同じだけどその中にリーダーゴブリンがいるよ。

 通常のゴブリン三体よりも、手強いから気をつけてね。



「ふっ! ではウィリディスム王子、左前方のオークは俺が魔法で対応するよ」



 斥候でもないのに、エレモフィラ君もう見つけたんだ。

 岩陰に隠れて急に現れるようにしていたのに、勘が鋭いね。

 基本はウォータスライダーだから、海の魔物にしようかと悩んだけれど、このチームは陸上で最も遭遇する率が高い魔物を選択した。

 ただ初めだけなので、三人とも頑張って応援しているよ。



「ああ、任せるよエレモフィラ君」



 ちょっと、ウィリディスム王子? 

 爽やかな笑顔を、俺に見せている余裕が有ったら上を見て下さい。



「危ない、ウィリディスム王子!」



 ほら、こっちにばかり気を取られているからだよ。

 バレリアン君が助けてくれなかったら、痛い思いをしていたのはウィリディスム王子だったんだからね。

 だけど今ので、ウィリディスム王子も本気になったようだ。


 俺に失敗しちゃったと言うような笑顔を見せてきたが、顔つきが変わった。

 と言うかそんな笑顔も爽やかって、王子の特殊スキルですかっ! 

 思わず、突っ込みたくなったよ。



「済まない、助かった。バレリアン君、起きていたのか?」



 バレリアン君の方は、やるね。

 少し、見直したよ。

 俺は少し拍手をして、バレリアン君の行動を見ていた。

 暗闇にコウモリを紛れさせていたのに、今の二刀短剣裁きは凄く良かったよ。



「はい、もう大丈夫です。僕は、上空の牙コウモリの群れを弓で倒します」



 ……だけど、ウィリディスム王子の真似をして笑顔を向けて来ないで下さい。

 褒めてあげたのに、台無しだよ? 

 だけど、男の子は女性がいるといつも以上にやる気を見せるようだ。

 まあ女生と言っても、カトレア先生とロベリアさんと俺と八歳の容姿をしているハイビスカスだけだけどね。



「ああ、任せる」



 うん、うん、でも良い感じ。

 俺は直ぐさま、ウンディーネとシルフにコソコソと連絡を取る。



『こちらリリー、第一の関門を突破』

『こちらディーネです。リリー様、了解しました』

『こちらルフです。リリー様、魔物の強さと数はどう致しましょう?』

『第五関門を越えるまで、強さはそのままね。それと同種の魔物の数を倍に増やしていき、私が対処可能か判断するよ。対処可能であれば、連絡はしないから予定通り次の魔物の強さを一気に上げてね。但し、第六関門からは一体ずつだよ』

『『ラジャー!』』



 安定の悪い大きな浮き輪の上で、ジェットコースターの様に上下の傾斜と波の立つ悪路とも言える海路を三分の一進んだけれど、ここに来るまでゴブリン三体から四十八体まで増え、オークも一体から十六体まで増え、牙コウモリも五体から八十体まで増えた。

 少人数のCランク冒険者達だと、ハッキリ言って余裕がなくなり、逃げるしか選択肢はなくなるだろう。

 なのに、ウィリディスム王子も上手く魔物を倒している。


 ウィリディスム王子も努力して剣技や技を取得したみたいだけれど、この魔物の数に対しては通常騎士達を交えた団体戦になる。

 Zクラスの皆は、闘技場で実際にこの数以上の魔物に対する戦い方を学んだだけは有るよ。

 堅実な戦い方をするけれど、実力は本物だ。


 流石、エレモフィラ君とバレリアン君だね。

 それに、ウィリディスム王子へのサポートが上手い。

 だけど、まだまだ序の口だからね。

 もう少し先に行くと、カトレア先生達も楽しめるようになるよ。



「ねえ、リリーちゃん? ちょっとばかり、数が多すぎじゃない? それに、何をニヤニヤしているの?」



 カトレア先生が、俺の頬をプニプニ突いてきた。

 カトレア先生が近づいて来たから障壁を解除したけれど、そんな事をしてくるなら障壁を張って出来ないようにするよ。



「カトレア先生、ニヤニヤしていませんよ。それに、頬を突いて来ないで下さい」

「でも、何かロベリアちゃんの悪巧みをしている時の顔に似ていたから……」



 カトレア先生は、小さくそう呟いた。

 しかし、ロベリアさんは聞こえたようだ。



「えー、カトレアちゃーん。私のことー、そんな風に思ってたんだー」

「あっ……今のは無しよ。ね、ロベリアちゃん?」



 カトレア先生と、ロベリアさんがいつものようなやり取りをしていると、ハイビスカスが指をさした。



「リリママ、おっきーのくりゅよ?」

「うん、大っきい鳥さん来たね」



 俺とハイビスカスが穏やかに話をしていると、カトレア先生が急に立ち上がった。



「リリーちゃん、何暢気なこと言っているのよ? Cランク冒険者の設定にしたのに、何でワイバーンが二体もいるのよ!」

「カトレア先生、大っきい鳥さんですよ」



 ハイビスカスに伝えたように冗談を言うと、カトレア先生は腕を組んだ。



「リリーちゃん、学科の補習を受けたいの?」

「先生、冗談です。でも、ウィリディスム王子とエレモフィラ君達なら倒せるはずですよ」



 俺がそう話していると、バレリアン君が弓と矢に魔法を纏わせて貫通力と命中力を上げ連続で矢を放った。

 すると、二体のワイバーンの羽に穴が開いた。



 グギャー! グギャー! 



 そこをエレモフィラ君がアイスランンスで一体の頭を貫き、もう一体が落ちてきた所をウィリディスム王子が剣で止めをさした。



「ねっ?」

「……ええ」



 不味い。

 そうは言ったものの、カトレア先生が思った以上に不審に感じ始めたようだ。

 なぜそれが分かったのかと言うと、カトレア先生がアクセサリーから五歳の俺の姿をした人形を出して強く抱きしめ始めたからだ。


 カトレア先生、五歳の姿をした俺の人形が苦しんでいます。

 止めてあげて、下さい。

 カトレア先生は今、龍(ドラゴン)人形(ドール)姫(プリンセス)ドレスを纏っているのですから、それは豪腕のリカステさんがベアハッグをするよりも遥かに強力な抱きしめ攻撃ですよ? 


 俺が、可哀相な人形の姿に心を痛めていると、ロベリアさんもアクセサリーからカトレア先生のように十五歳の俺の姿をした人形を出した。

 つまり、ロベリアさんも不審に感じたというわけだ。

 Cランク冒険者が、倒せるレベルじゃないと……。


 だけど、今のは第六関門。

 ワイバーンは流石に厳しいと思い、一体ずつ増やすようにしている。

 なので、第十関門まではワイバーンの数が増え続けるよ。

 つまり、最大でワイバーンが六体まで増え続けるのだ。



「カトレア先生達も、少しは動きたいですよね? 護衛役だけでは、楽しくないですよね」

「リリーちゃん? ……けど、ウィリディスム王子が怪我をすることは無いわよね?」

「怪我はしませんが、痛いと思うのでカトレア先生とロベリアさんがちゃんと守って下さいね」

「つまり、私とロベリアちゃんも戦わないといけないということね」

「はい。その方が、楽しいでしょ」

「そうね。そろそろ、この浮き輪でのんびり進むだけでは物足りなくなってきたことですし」



 えっと、カトレア先生? 

 この暴風と荒波の中で、のんびりって言わないと思うのですが……。

 普通の女性なら、「キャー!」とか「イヤー!」とか叫んでいますよ? 

 カトレア先生、ごめんなさい。


 俺も叫んでいませんが、ソロソロ人形にベアハッグをするの止めてあげて下さい。

 見ているこちらが、苦しくなりなす。

 そんな俺の気持ちを理解したかは不明だが、カトレア先生は人形から手を離して、戦闘態勢を取った。



「そうねー、カトレアちゃーん」



 ロベリアさんを見ると、カトレア先生と同じように戦闘態勢を取っていた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ウィリディスム「僕はウインドウォーター王国の第三王子のウィリディスムだ。

        宜しく頼む。だけど、気軽に接してくれて構わないよ」

エレモフィラ「ふっ! ウィリディスム王子、俺はエレモフィラです。宜しく!」

バレリアン「僕は、バレリアンです。ウィリディスム王子、もしかして好きな人

      がウォータスライダーに参加するメンバーにいるのですか? 

      僕は、女性は皆大好きです。勿論、カトレア先生も含みますよ」

ウィリディスム「クスッ! 君は、面白いね。それに、鋭いよ。実は……」

エレモフィラ&バレリアン「「ですが、リリーちゃんは譲りませんよ!」」

ウィリディスム「あははは、牽制とはね。だけど、僕も王子……いや一人の男

        として、君たちに譲る気は無いよ。正々堂々、勝負だ」

エレモフィラ&バレリアン「「望むところです」」

ウィリディスム「但し、このウォータスライダーは皆で協力しよう。何だか、

        リリーちゃんが楽しんでいるようだしね」

エレモフィラ&バレリアン「「ですね」」

 こうしてウィリディスム王子とエレモフィラ君とバレリアン君は、協力して

 ウォータスライダーで出現する魔物を倒すのであった。

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