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澱みの魔物を倒して……

 事後処理に数日時間を要したが、家族や学校の仲間達のお陰で、俺達は誰一人欠けることなく未曾有の危機を回避する事ができた。

 ウインドウォーター王国事態に直接の被害は無かったものの、炎龍やワイバーンの目撃、そして孤島や山の異常な状態を見た国民達の不安は大きかった。

 海の民達に人気がある第三王子を初め、重鎮貴族達が各方面で説明をして事態の収拾に当たろうとしたが、大きな国であったが為にかなりの時間を必要とした。


 なので、俺達も一役を買って出る事にした。

 遠方までの移動手段として、まず移動場所を教えてもらい、足の速い者や空を飛べる者達に向かってもらい、俺がその場所にテレポートする。

 そして城に戻り、一気に重鎮貴族達やその護衛達を連れてその場所にテレポート。

 その方法を繰り返したことで、数日でウインドウォーター王国の各地をまわり、国民の不安をどうにか解消することが出来たのだ。


 次に炎龍の子供とワイバーンを捕縛していたディザスター ルバーブとその子供達の件だが、俺達が澱みの魔物を倒した時とほぼ同時刻に突然気を失ったらしい。

 そして眼を覚ました時には、約一ヶ月前までの記憶を全て失っていた。

 俺とスノーと葵とで管理者の能力を使用し、ディザスター ルバーブとその家族を調べた結果、強力な精神魔法がかけられていた形跡が見つかった。


 つまり、何者かがディザスター ルバーブとその家族を利用して、今回の災厄を引き起こしたと言うわけだ。

 しかも、俺達が管理者の能力を使用し厳重に調べないと分からない程に隠蔽されて……。

 俺がフォレストムーン王にお願いをして、ウインドウォーター王にその事実を伝えてもらった所、ディザスター ルバーブとその家族は全て不問とはならなかったが、情状酌量の余地はあるとして死罪は免れた。

 その後の処遇については、ウインドウォーター王や重鎮貴族達に任せようと思う。


 それと、ウインドウォーター王と重鎮貴族達にも俺が女神である事が知られていた。

 まあ俺達も色々とやらかしたし、今回は事が事だったので仕方がないと思う。

 次に倒した澱みの魔物達のドロップアイテムの件だが、封印されていた魔物の身体(カラダ)は二度と使用されては困ると言うことで、俺のアイテムボックスで管理する事となった。

 ドロップアイテムはその他に、高純度の魔石や、能力の一部に使用されていたのではないかと思われる武器等がそれぞれあった。



「女神リリーよ、封印されていた魔物の身体はそなたに任せるが、魔物が残した武器を拝見したいが良いか?」



 基本的に魔物のドロップアイテムは、倒した者達の物になる。

 しかし今回の魔物は、澱みの魔石により変化はあったが、元はこの国に封印されていた災厄級の魔物だ。

 その魔物が落とした武器となると、価値ある物である可能性が高いというわけだ。

 なので、ウインドウォーター王がそう言ってくるのも理解できるので確認してもらうことにした。



「はい、王様。ですが安全を確認するために、一度武器の鑑定をしてもらっても宜しいでしょうか?」



 俺の場合、魔物を倒すと同時にアイテムボックスにドロップアイテムなどが自動入手される。

 武器の名称はすぐに確認する事が出来るが、その内容は鑑定しなくては不明だ。

 俺には鑑定をするスキルは有るのだが、城の鑑定士がいるのに、その仕事を奪うわけにはいかない。



「うむ、そうであるな。鑑定士を呼べ」



 ウインドウォーター王の命で、俺がいる謁見の場に鑑定士が呼ばた。

 鑑定士は慣れているようで、台の上に置かれた武器を細心の注意を払い、手袋とをして慎重に手に取った。

 すると、武器を手に取った瞬間異変が起きた。

 武器を持った鑑定士の手が切り裂かれ、急激に衰弱し倒れたのだ。


 鑑定士の状態から判断すると、恐らく強力な呪いがかけられていたのだろう。

 俺はすぐに、呪いを解く魔法と回復魔法を鑑定士にかけた。

 すると鑑定士は命を取り留め元気にはなったが、鑑定は不可能ですと言ってきた。

 鑑定をする上で、触れないと判断できないのなら先ほどの悲惨な状態になるだけだ。

 ならば、触れずに鑑定できる俺が鑑定した方が良いだろう。



「王様、差し出がましいかもしれませんが私が鑑定しても宜しいでしょうか?」

「女神リリーよ、鑑定ができるのか?」

「はい」



 俺は剣神スキルの一部にある武器鑑定で鑑定する事にした。

 武器に手を翳して剣神スキルの武器鑑定を使用しようとすると、神級全モノ作り師の鑑定スキルと統合することが可能だとシステムの説明が現れた。

 しかし、統合は後でも出来るので剣神の武器鑑定で鑑定することにした。


 それぞれの武器を鑑定してみると、一つは強力な水魔法を魔力無しで自由自在に放ち操る事が可能で、且つ相手が放ってきた水魔法を吸収可能な剣である事が分かった。

 そしてもう一つは、強力な風魔法を魔力無しで自由自在に放ち操る事が可能で且つ相手が放ってきた風魔法を吸収可能な短剣である事が分かった。

 どちらもの武器も、国宝級の神器となるのではないかと思われる性能であった。

 しかしその両方の武器には、使用者を傷つけ生命力と魔力を奪い続ける呪いが付与されいた。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 【剣神スキル】

  ・武器鑑定

   第一 武器名 海魔王の剣

          詳細能力1

           ・使用者の魔力を使用する事なく

            最上級水魔法までの吸収及び

            自在操作が可能。

            但し、上級以上の水魔法は近辺

            に水または海水を必要とする。

          詳細能力2

           呪い1:手にした者の手を腐食させる。

           呪い2:手にした者の生命力を喰らい続ける。

           呪い3:手にした者の魔力を喰らい続ける。


   第二 武器名 風魔王の双短剣

          詳細能力1

           ・使用者の魔力を使用する事なく

            最上級風魔法までの吸収及び

            自在操作が可能。

            但し、上級以上の風魔法は

            風の通り道が無い場所では

            使用出来ない。

          詳細能力2

           呪い1:手にした者の手を切り裂く。

           呪い2:手にした者の生命力を吸い続ける。

           呪い3:手にした者の魔力を吸い続ける。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



 なので、また俺のアイテムボックスで管理することとなった。

 高純度の魔石については、今はまだ使用目的が無いらしい。

 なので、この魔石も俺のアイテムボックスで管理することとなった。

 何か俺のアイテムボックスって、不要な物を入れる倉庫になってない? 

 まあ、良いけれどね。


 次に山の件だが、俺とユグドラシルそれに森に沢山いた精霊や微精霊達に手伝ってもらい、元の自然豊かな山の状態にほぼ戻すことが出来た。

 ほぼと言っているのは、澱みの蜘蛛によって犠牲になった魔虫や動物達は元に戻すことが出来なかったからだ。



「ユグちゃんのお陰で、山の木々や花々は新たな木々や花々として実りを遂げたわ。だけど、糸に触れて死んでいった魔虫や動物達は……」



 澱みの蜘蛛の糸で覆われた山という特殊な状況なので、魂の繋がりが残っていれば俺の管理者能力で肉体を再形成して創り出して復活させられるかもしれない。

 そう考えたが、スノーに



「管理者であっても、無闇に多数の生命に関わる創造と復活をされてはならないですぅにゃん」



 と言って止められた。

 確かに、そんな事をすれば時系列に歪みが生じる恐れがある。

 だから俺は、死んだ魔虫や動物達を生き返らせなかった。



「リリー様、山の大穴を元に戻して頂いただけでも自然は喜んでいます。それに、自然はそんなに弱くはありませんよ。見て下さい、生き残った魔虫や動物達が私達にお礼を言っています」



 周りを見ると、傷つきながらも必死に生きようとして立ち上がっている動物達や魔虫達がいた。



「ユグちゃん、この子達こんなにも逞しいんだ」

「はい」



 俺はせめてもの慰めとして、まだ残っていた山を覆う蜘蛛の糸を、クナイに変化した天羽々斬(アメノハバキリ)と再度使用可能となった天之(アメノ)尾羽張(オハバリ)の麒麟達の力を借りて全てを排除した。

 そして、山全体に精霊達の力を借りてエリクサーレインを施した。

 すると、辛うじて生き残っていた魔虫や動物達がまだ沢山いたことが分かった。



「リリー様、これだけの者達がいれば大丈夫です」

「うん、そうだね」



 俺とユグドラシルはそう言って、山を後にし杏ちゃんのご両親の自宅に向かった。

 すると、ご両親の自宅が完全に崩壊していた。

 恐らく、山で俺達が戦った時の衝撃で地震のような揺れが起きて、崩壊したのではないかと考えられる。


 果樹園も木々の転倒などの影響を受けていたので、ユグドラシルの力を借りて元の状態に戻した。

 崩壊した家屋では、杏ちゃんのご両親は果樹園を続けられない。

 なので、杏ちゃんのご両親の為に至便で壊れる事がない家を創ってあげる事にした。


 初めは俺の自宅と同じ物を創ったのだが、杏ちゃんのご両親を連れて戻った時、大きすぎるので住みにくいと言われた。

 なので、仕方なく部屋数を十分の一に縮小した。


 因みに部屋数は、貴族が泊まっても満足する程の広さがある大きな部屋が二階に一つと小部屋が五室、それに一階は中部屋が一つと広々としたリビングやダイニングにキッチン、そして温泉付きである。

 それに、俺の自宅と機能は全て同じなので不便はないだろう。


 今朝果物を買いに杏ちゃんのご両親の自宅に尋ねてみたが、至便になった自宅で気分を良くしており朝取ってきた果物を沢山もらえた。

 因みに、二階は使ってないらしい。


 それに、温泉も付いているので仕事の疲れも次の日には残らないらしい。

 もしかしてと思い、温泉を覗いてみると水の微精霊だけでなく風の微精霊達も踊っていた。

 なので、そのお陰だろう。


 次にリーフリュウシン小国の第二王女達の件だが、リカステさんが上手く話をしてくれたようだ。

 全ての件を、約束通り不問とし自国でも異変が無いか調べる為に、リーフリュウシン小国にワイバーン達を引き連れて帰って行った。

 まあ帰り際、パイ王女がリカステさんの手をなかなか離してくれなくて難儀したらしいけれど……。



「リカステさん強面なのに、そんなにパイ王女に気に入られたんだ……」

「ほっとけ!」



 しまった、声に出てたんだ。



「でも、リカステさん助かりました。ありがとうございます」

「いいって事よ!」



 俺はリカステさんにお礼を言って、その場を去った。

 この世界の女性の好みは、色々と有るんだなーっと熟々(ツクヅク)感じたよ。ホントに。

 だけどパイ王女、あの凶悪な強面の顔のどこが気に入ったんだろう? 

 ……リカステさん、ごめんなさい。言い過ぎました。


 次に炎龍の件だが、炎龍は元の火山島に帰って行った。

 でもシルクとアイビーが炎龍を必要とし、血の契約の紋章を通じて呼び出せば、いつでも召喚する事が出来るようだ。

 今回の様な件もあるので、炎龍側に何か有った場合を考え、双方とも連絡が可能な魔道具を渡しておいた。

 魔道具は双方の姿も映るので、何かと重宝するだろう。

 それにクレマチスとユグドラシルが、熱心に炎龍に何かを教えていたのが気になっていたが、魔道具のテストをした事で分かった。



「リリー様、炎龍と魔道具による通信が繋がりました」



 俺は別荘の台所で料理を創りながら、テーブルに並べているとユグドラシルの言葉に振り返った。



「ユグちゃん、ありがと。あれ?」



 するとクレマチスのような姿に近いが、胸元と所々に赤い鱗が生えている二十代前半のとても美しい女性が、頬を赤らめてこちらを見ていた。



「リリー様、どうされました?」



 俺と一緒にテーブルへ食器を運んでいたクレマチスが、背中に胸を押しつけて覗き込んできた。



「魔道具のモニターに、凄く綺麗な女の人が映ったよ?」

「リリー様、その者が炎龍です」

「ほえ? 本当なの、クレマチスちゃん?」

「はい」



 しかも、炎龍が普通に言葉を話すようになっていたのだ。

 更に、もう少し修行をすれば完全な人型にも変化出来るらしい。

 スノーが龍種はあまり利口ではないと言っていたが、もしかすると頭が良いのかもしれない。


 それと炎龍の赤ちゃんの件だが、なぜか俺がカトレア先生から名付け親を頼まれた。

 名付け親はあまり得意ではないのだが、この暖かい国と赤い龍である事、そして近くにハイビスカスが咲いていたので名をハイビスカスとした。

 まあ、いつものようにシステムが作動して進化したけれどね。

 進化に伴い成長した事で、ハイビスカスは五歳の容姿から八歳の容姿となった。



「ママ」



 ただ相変わらず、ママしか言わない。

 仕草や物を指すことで、ある程度は理解出来るが、ユグドラシルがいなければハイビスカスの言いたいことが正確には分からなかった。



「私は、リリーね」

「リリママ?」



 ママの次の言葉に、俺の名前を覚えてくれた? 

 少し違うが、ママとしか言われない他の者達に比べると良い方だと思う。



「あは、それでも良いけれどね」



 まあ容姿の幼さや言葉使い、それに甘えたがりの性格で、この件に係わらなかった者達からは恐らく、クレマチスの妹だと勘違いされる筈なので、説明等をしなくて良いのは良い点だろう。



【システム 炎帝の申し子 が第二級中位管理者リリー・ヴァリー の命名を承認】

【システム 炎帝の申し子 個体名 ハイビスカス が承認されました】

【システム 限界突破LV2発動! 限界突破しました】

【システム 炎帝の申し子 個体名 ハイビスカスが進化を試みています……成功しました】

【システム 炎帝の申し子の個体名 ハイビスカスが 炎帝の破壊龍 ハイビスカス に進化しました】 

【システム 炎帝の破壊龍 ハイビスカス が召喚眷属になることを誓願しています】

【システム 誓願を承諾しますか? 【はい】 【いいえ】】

 勿論【はい】を選びますよ。システムさん。

【システム 承諾を確認致しました】

【システム 召喚眷属として ハイビスカス が第二級中位管理者リリー・ヴァリーに認められました】



 ただ名前の前にある称号が、炎帝の破壊龍となっているのが気になった。

 別荘に帰り、様子を窺うと……確かに、破壊龍である事が分かった。

 その破壊龍の称号に相応しい程、自宅の食器類や色々な物を破壊するのだ。


 しかも、何も無い所で転ぶというお約束付きである。

 更に極めつけは転ぶと、俺やクレマチス、それに血の契約をしているカトレア先生やロベリアさん、それにシルクとアイビーにも順に抱きついて「ママ」と言って泣くのである。


 つまりクレマチスよりも超ドジっ子であり、超甘えん坊さんだったのだ。

 アイビーがママと言われて若干ひいているが、ハイビスカスは人の言葉を聞いて理解はしている。

 なので、徐々に色々と人の言葉を話せるようになるだろうし、今は我慢してもらうしか無い。


 カトレア先生とロベリアさん達との血の契約の件だが、ハイビスカスは二人に対しても召喚の呼び出しに応じるようだ。

 まあでも、ママと言って抱きついているので、特別な召喚龍なのかは不明だが……。


 ウインドウォーター王国に来て様々な事件に巻き込まれた俺達だが、事後報告を終えてやっと休息をもらうことが出来た。

 そして今、俺達は別荘の前にある砂浜で海を満喫してようとしている。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 うっ! やばい。スミレちゃんと同じ感覚で、思わず他国の王女さんに手刀を

 思いっきり食らわせちまった。

シルク「リカステさん、何やってんのよ! 私、さっき気がついたばかりなの

    だけど?」

リカステ「いやー、成り行きでワイバーンと一緒にな……」

シルク「私、他国の王女を気絶させる極悪教師なんて聞いたことも無いわよ」

リカステ「シルクちゃん、極悪教師は言いすぎだろ……だが、スマン。王女さん

     の、回復を頼めるか?」

シルク「リカステさん、その顔怖いわよ!」

リカステ「ほっとけ!」

シルク「何?」

リカステ「何でもねえよ」

シルク「リカステさん、回復するからパイ王女様をしっかり抱いてなさい」

リカステ「俺がか?」

シルク「当たり前でしょ!」

 俺は王女さんを抱き上げ、シルクちゃんに回復を頼んだ。

 すると、シルクちゃんの回復魔法で王女さんがゆっくりと眼を開けた。

リカステ「気がついたか、王女さん? 悪いな……ちーとばかし、手刀の威力が

     強すぎた。……大丈夫か?」

パイ王女「僕は……はっ! なぜ僕は、リカステおじさんの腕の中で寝ている

     んだ?」

月の雫騎士団長「王女殿下、リカステ殿に一撃で気絶させられて……申し訳

        ありません」

パイ王女「……そうか。よい! 僕の見立ては、間違っていなかったと言う

     ことだ。リカステおじさん、再度聞く。いや、お願いしたい。

     僕の武術専属教師に、なって頂けないだろうか?」

リカステ「悪いな……」

パイ王女「僕は、リカステおじさんに振られたのか。やはり、こんな王女

     らしくない僕では……」

リカステ「違げーぞ、姫さん。姫さんは、驚くほどべっぴんさんだ。だが、

     俺には教え子がいるって言っただろ?」

 頬を赤らめた王女は、恥ずかしそうにすると立ち上がった。

パイ王女「……なら僕は、リカステおじさんが認めるような気品溢れる王女に

     なるよ」

 王女さんのやる気が別の方向に向いて、俺が王女さんを気絶させた事は咎め

 られなくて安心したが、なぜ王女さんは俺の手を握ったまま離さないんだ? 

リカステ「パイ王女、手を……」

パイ王女「――――」

 この後俺はスミレちゃんに頼んで、月の雫騎士団長に今までの経緯を伝え、

 現状を理解してもらった。

リカステ「スミレちゃん、間に入ってもらって悪いな」

スミレ「リカステ先生、お気になさらずに。それより……」

リカステ「何も言うな」

 しかし、帰るギリギリまでリカステの手を離さなかったパイ王女であった。

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