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封印されていた魔物25

 黒い霧? 雲? そうか……澱みの蜘蛛は夜行性だった。

 たからと言って、暗闇に覆われたら澱みの蜘蛛の能力が上がるのか? 

 いや、恐らく澱みの蜘蛛の能力が向上するからこそ辺りを暗闇にしたのか。


 だったら、何をする気だ? 

 通常の蜘蛛の能力と言えば、毒そして糸による捕縛。

 しかし、澱みの蜘蛛の攻撃パターンは糸による攻撃と防御、それに一回り小さくはなるが増殖する事。


 考えを巡らせていると、暗闇の中に澱みの蜘蛛の眼が怪しく光った。

 ……だけど、多くないか? 

 まるで、暗闇の海に光る海蛍だ。

 しかし、そんな美しい光景ではない。


 それに、先ほどの澱みの蜘蛛は確か八体だった。

 何故、急激に増えた? 

 そうか、この暗闇か……。

 暗闇に怪しく光る眼について分析をしていると、ユグドラシルの手が優しく俺に頬に触れた。



「リリー様、聖華(セイカ)の帝城(テイジヨウ)に澱みの蜘蛛が多数侵入しました。神結界のお陰で傷は負いませんが、フラワー インペリアル ヘヴィー ガード の数を、澱みの蜘蛛の数が圧倒しています」



 ユグドラシル達に休むよう言った事で、ユグドラシルは俺の左肩に乗っている。

 しかし、華の騎士達は聖華(セイカ)の帝城(テイジヨウ)を守護しているので、澱みの蜘蛛が増えた影響をまともに受けたようだ。


 地面を見渡す限り、怪しく光る眼がこちらを向いている事と、聖華(セイカ)の帝城(テイジヨウ)に侵入した澱みの蜘蛛の数。

 光りが灯っている聖華(セイカ)の帝城(テイジヨウ)に、侵入した澱みの蜘蛛を騎士達が必死に外に追い出してはいるが数が多すぎて対処しきれていない。


 騎士達が対処可能な、人の大きさまで縮小はしてはいるが数が多すぎる。

 つまり、異常なほどに澱みの蜘蛛が増殖していると言うことだ。

 数で圧倒していたユグドラシルの騎士達だったが、このままでは逆にこちらが数で押し切られる。

 俺は空中にジャンプすると、光りの魔法を放ち当たりを照らす。



「ホーリー サンシャイン!」



 この光りで、少しでも澱みの蜘蛛の増殖を止めるために。

 小さな太陽が当たりを照らすと、悍ましい数の蜘蛛が辺りを覆っていた。

 やはり、この光りで増殖が止まったようだ。


 しかし、この数の蜘蛛に糸を吐かれると三十本のクナイに変化した天羽々斬(アメノハバキリ)ではギリギリかもしれない。

 そう考えを巡らせていると、まさにそれが現実となり悍ましい数の蜘蛛が、俺を狙って一斉に糸を吐いた。



 シュババババババ! 



 俺は糸が到達する前に、それぞれの糸に対応した属性を、クナイに変化した天羽々斬(アメノハバキリ)へ付与した。

 赤糸(シヤクシ)には風属性、緑糸(ロクシ)には火属性、青糸(シヨウシ)には地属性を。

 そして、剣神の技を放つ。



「【【落花(ラツカ)の花吹雪(ハナフブキ)!】】」



 サラ サラ サラ サラ サラ サラ! 



 三色のクナイと無色のクナイが、散った花弁のよに揺れ落ちる。



 スィン スィン スィン スィン スィン スィン! 



 刹那、赤、青、緑の糸を風に舞う花吹雪の様に切り裂き、残る黄糸(コウシ)を無色のクナイが切り裂いた。

 俺が糸を全て切り裂き澱みの蜘蛛の群れを見据えると、上空の魔法陣から再び黒い霧が辺りを覆おうとしていた。

 させないよ。

 俺はすかさず、クナイで上空の魔法陣を切り裂く。



「舞え、天羽々斬(アメノハバキリ)!」



 ズババババババ! 



 上空の魔法陣の糸と、山を覆っていた上空の糸も切り裂いた。

 陽光が、擂り鉢状の穴を覆う無数の蜘蛛を照らす。

 これでもう、黒い霧で暗闇に覆われることはないだろう。


 聖華(セイカ)の帝城(テイジヨウ)に侵入していた澱みの蜘蛛も、全て騎士達が追い出したようだ。

 恐らく太陽の光が差し込んだことで、増殖して聖華(セイカ)の帝城(テイジヨウ)に侵入していた澱みの蜘蛛の力が減少したのだろう。


 しかし俺が上空の魔法陣や覆っていた糸に気を取られている間に、糸で地面や多方向に澱みの蜘蛛が新たな魔法陣を無数に描いていたようだ。

 その無数の魔法陣から黒い霧が吐かれた瞬間、多方向から火、水、風の魔法が同時に俺に向かって放たれた。



 ブォォ ブォォ ブォォ ブォォ ブォォ ブォォ! 


 ズバシャー ズバシャー ズバシャー ズバシャー ズバシャー! 


 ビュゥ ビュゥ ビュゥ ビュゥ ビュゥ ビュゥ! 



 火、水、風の無数の魔法が、俺を襲う。



 ゴォォ ドォーン ズバババ! 



 全ての魔法を真面に受けた俺は、煙を上げ下に落ちると地面にいた全ての蜘蛛が一斉に襲いかかった。

 刹那、地面から渦のように舞い上がる三十本のクナイが群がった蜘蛛を一掃する。



「忍法! 変わり身、土蜘蛛斬り!」



 ズバ ズババ ズバババ ズバババババババ! 



 今の技は、俺の様々な能力を駆使したものだ。

 ユグドラシルの眷属達が取ってきてくれた木が、アイテムボックスに沢山有ったので、人型を創り出して俺がいた空中に浮遊させ設置。


 人型の木に障壁を張って、破壊されないようにする。

 マウスLV2を巧みに使いこなし、地中に潜り潜伏。

 澱みの蜘蛛の魔法が、全て木に命中した瞬間に浮遊魔法を解除し煙を纏わせる。


 そして落ちた人型の木に群がってきた澱みの蜘蛛を、剣神の技を使って一気に倒したのだ。

 だって、せっかく装いを忍者ロリ服セットにしたのに普通に防御してもね……なので、忍術っぽい事をして逆に一掃したという訳だ。


 それに、これで地面にいた無数の澱みの蜘蛛は全て倒した。

 しかし、本体はいなかったようだ。

 なぜなら、全て土になって消え失せたからだ。


 澱みの魔石も、どこにも無い。

 それに、まだ山の斜面の至る所に小さな澱みの蜘蛛がいる。

 これは、今まで倒してきた澱みの魔物よりも遥かに厄介だ。


 ワールドマップで確認するも、全ての蜘蛛に澱みの魔石の反応がなぜかある。

 恐らく、これも澱みの蜘蛛の能力なのだろう。

 それに広範囲に散(バラ)けられると、一部の色が違っているとはいえ、本体を見つける事は非常に困難だ。


 しかも、数が多いせいで重なっている蜘蛛もかなりいる。

 なので、色が付いている蜘蛛すら判別ができないのだ。

 仕方がない。範囲を限定させるか。



「くノ一忍法! 秘密の花園!」



 キィィィィィィン! 



 俺はワールドマップで表示されている、澱みの蜘蛛がいる擂り鉢状の穴自体を、全て神結界で覆った。

 すると、澱みの蜘蛛は再び巨大な蜘蛛にその身を変化させた。

 もしかすると、暗闇で向上していた能力が失われた事で、異常増殖を維持できなくなったのかもしれない。

 澱みの蜘蛛が巨大化すると、周りにあった土が神結界を境に全てなくなった。

 これで、澱みの蜘蛛の増殖や再生は今有る土の分だけしか出来ない筈だ。



 グギャャャャャャ! 



 咆哮を上げたかと思うと、澱みの蜘蛛の前に大きな黒い魔法陣が描かれた。

 刹那、黒い霧から黒い光りが放たれたと思うと、その光りが俺に向かってくる。



 チュドーン! 


 チュドドドーン! 


 チュドドドドドドーン! 



 俺はその黒い稲光に、クナイを身代わりとして躱す。

 クナイが、避雷針の役割をしてくれたのだ。

 本来はクナイを地面に刺すと電気が流れるのだが、地面を神結界が覆っているので、クナイに黒い雷を吸収させた。


 しかしこのままでは使いづらいので、一部の神結界に穴を開け、クナイを刺して黒い雷を地面に発散させた。

 そして、再び神結界で穴を塞いだ。

 この蜘蛛、雷雲を呼んで黒い雷まで放てるのか。

 まるで、忍者だな。



 グギャギャギャギャギャギャ! グギャ! 



 何かを、唱えている? 

 そう思った瞬間、澱みの蜘蛛が八体に分身した。

 しかも、小さくはならずその巨体のままで。

 更に、分身した状態で炎を吐いてきた。



 ブフォー ブフォー ブフォー ブフォー ブフォー ブフォー! 



 分身の術と、火遁の術? 

 それ、俺がしたかったのに! 

 でも、火にはこの術で対抗だよ。



「忍法! 魔練分身!」



 俺は拳神の技を使用して、魔練分身を行う。



「忍法! 水遁の術!」



 ブシュゥ ブシュゥ ブシュゥ ブシュゥ ブシュゥ ブシュゥ! 


 ジュッ ジュッ ジュッ ジュッ ジュッ ジュッ! 



 そして、水魔法でその炎を打ち消した。



 グギィィィィィィ! 



 俺が同じような事をした事で怒りを覚えたのか、澱みの蜘蛛は再び糸を吐き出した。



「それは、見切った。蜘蛛さん、ワンパターンすぎ!」



 そう言った瞬間に、澱みの蜘蛛がその姿を消した。

 巨体なのに、尋常ではない異常な早さだ。

 だけど、ワールドマップで見えているよ。


 恐らく、糸を吐いて注意をそらし上空に逃げたのだと思うけれど、神結界で囲まれているのにどこに逃げたいのかな? 

 神結界に囲まれていると知ったのか定かではないが、澱みの蜘蛛は神結界の頂点で再び多量の糸を吐いた。

 俺はジャンプしつつ、浮遊している三十本のクナイでその糸を切り裂いていく。



 シュン シュン シュン シュン シュン シュン! 


 ズバ ズバ ズバ ズバ ズバ ズバ! 



 そして手応えが有ったと思った瞬間、再び澱みの蜘蛛が抜け殻のようになった。

 変わり身の術か。



「えっ? でも、どういう事?」



 もう、下には土はない筈。

 そう思った瞬間、



 バババッバン! ドゴゴゴォォ! 



「絶対領域!」



 俺は思わず、忍術の術の言葉を使わずに神結界を張った。

 危なかった。

 まさか、抜け殻に爆破魔法をしかけているなんて思いもしなかった。

 だけど、澱みの蜘蛛はどこだ? 

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「忍法! 大食らい!」

アイビー「あーあ、食べちゃった。シルク、絶対リリー様に怒られるよ」

シルク「――」

リリー「あれ? おかしいな? さっき創った、巨大ティラミスが無いわ。

    シルク達は、知らない?」

アイビー「シルク、鼻にチョコクリームが付いているよ?」

シルク「忍法! 隠れ身の術!」

アイビー「……シルク、僕のお腹にしがみ付かないでよ」

シルク「アイビー、シー! 静かにして! リリー、にバレるでしょ」

リリー「――」

アイビー「シルク? もうリリー様に、バレているよ。出てきたら?」

 この後リリーが先ほどよりも巨大なティラミスを創り、皆の分を取り分けて

 いると、ティラミスを見つめるシルクの姿がそこにあった。

 装いを忍者服にしても、大食らいは変わらないシルクであった。

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