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封印されていた魔物20

 【葵SIDE】


 幾度も絶好の機会は訪れましたが、私が舞を舞うタイミングとスノー様が大技を使うタイミングが合いませんの。

 クレマチスちゃんも同様に高濃縮したブレスの力を込めるには溜めが必要で、スノー様とのタイミングが合わずに矢を打ち込むタイミングにズレが生じていましたわ。


 同様にスノー様も、私達との攻撃にタイミングが合わず、ズレが生じ澱みの魔石を打ち砕く事が出来ませんでしたの。

 やはり、真の能力を発揮させる事が出来ない劣化型神武具は扱いが難しいですわね。


 どうしても自身で考えている時間と、若干のズレが生じ、タイミングが合いませんわ。

 ですが、そんな事を言っている場合ではありませんの。

 一刻も早く、澱みの海牛を倒さなくては……。

 そう考えていると、スノー様が上から叩き落とす様に剣を打ち下ろすと、



「パーマネント フリージング スマッシュ! ぅにゃん!」



 ヒィィィィィィン! 



 甲高い音と共に、大地に剣が突き刺さると地面が一瞬にして氷結し澱みの海牛ごと氷に閉じ込めた。



 ピキピキピキピキピキピキ! 



 そして、スノー様が刺さっている剣の柄に着地した瞬間、氷結していた大地と澱みの海牛が粉々に砕けた。



 パリィィィィィィン! 



 その瞬間、澱みの魔石が姿を現し狙いを定めていたクレマチスちゃんが高濃縮したブレス纏った天(アメノ)羽々(ハハ)矢(ヤ)を天之(アメノ)麻迦古(マカコ)弓(ユミ)で放ちますが一瞬にして再生した澱みの海牛の身体(カラダ)に阻まれる。

 やはり、タイミングが合いませんわね。

 ですが澱みの海牛よ、この舞は如何でしょう? 

 天之(アメノ)瓊矛(ヌボコ)よ、私に力を貸して下さいまし。



「天を飛翔する、大いなる獅子よ! 祓い清め給え! 我は天狐(テンコ)と八尾狐(ヤオノキツネ)の巫女王女!」



 舞を舞えば天より巨大な瞳が覗き見て、矛先の軌跡を頼りにその姿を現しますわ。

 その姿は、天をも覆う巨大な獅子ですの。

 黄金(オウゴン)の焔(ホノオ)を纏いて一度姿を現せば、私が矛先で狙い定める悪しきものを黄金(オウゴン)の焔(ホノオ)で燃やし尽くしますわ。



「我に仇なす澱みの海牛を打ち払え! 獅子(シシ)神楽(カグラ)! 黄金(オウゴン)の天獅子(テンジシ)!」



 ゴォォォォォォー! 



 黄金(オウゴン)の焔(ホノオ)を纏った天をも覆う巨大な天獅子(テンジシ)が、澱みの海牛を一睨みすると纏う焔(ホノオ)の轟音だけを轟かせ、黄金(オウゴン)の焔(ホノオ)で孤島を飲み込んだ。



 ジュゥゥゥゥゥゥ! 



 黄金(オウゴン)の焔(ホノオ)で澱みの海牛の大半を燃やし尽くし、澱みの魔石を露出させました。



「アイシクル ダンス インフィニティ スラッシュ! ぅにゃん」



 スノー様が私の獅子神楽に、双剣の技を合わせてくれました。

 ですが、澱みの海牛の再生が異常に速い。

 間髪を入れず、クレマチスちゃんが白龍の息吹を高濃縮し次に備える。



「ホワイト ドラゴン ブレス ハイリー コンセントレイテッド!」



 再生された澱みの海牛の身体(カラダ)を、スノー様の氷柱には思えない程巨大な氷柱が突き刺さり幾つもの大穴を開け、再び澱みの魔石が露出。

 そこに、狙いを定めたクレマチスちゃんが、高濃縮したブレス纏った天(アメノ)羽々(ハハ)矢(ヤ)を天之(アメノ)麻迦古(マカコ)弓(ユミ)で放ちますの。



「ピュリフィケーション アロー!」



 ですが、スノー様とクレマチスちゃんもほぼ同時に大技を放ってくれましたが、寸前の所で澱みの海牛に身体(カラダ)を再生され、やはりタイミングが合いませんわね。

 その僅かなズレが原因で、先ほどから再生され続けていますの。


 まるで、私達の攻撃をあざ笑うかのように……。

 恐らく、海水を吸収して身体(カラダ)を一瞬で再生していますの。

 その再生速度が、私達の技を放つ速度より尋常でないほどに早い。


 そして、再生した瞬間に水弾による全方位拡散攻撃をしますわ。

 これが、また厄介極まりますの。

 避けなければ溶かされ、避けて海に落ちると分隊を生み出しますわ。


 私達は、その分隊を倒しつつ本体を攻撃しなくてはなりませんの。

 その分隊も本体同様に、劣化型神武具に私達の力を纏わせて攻撃しなければ破壊出来ませんわ。

 孤島と同化した事で澱みの海牛本体は動き周りませんが、倒しきれなかった分隊と触手が近づくものを攻撃しますので、近づいて攻撃するのも困難になりましたの。


 私達の攻撃をここまで喰らい続けても、瞬時に再生するなんて……もし澱みの海牛が大陸に行けば、私達以外の攻撃を一切受け付けないので、瞬時に大陸が澱みの海牛と化しますわね。

 そう考えていると、クレマチスちゃんが赤・青・緑・黄・黒・白・紫・金・白金の焔(ホノオ)を纏いだした。



「あの焔(ホノオ)は、久遠(クオン)!」



 私は瞬時に、上空に移動する。

 そして、クレマチスちゃんの眼前に立ち塞り右肩を手で押さえました。



「クレマチスちゃん? 貴女は、この世界を無限に消滅させ続けるつもりですの?」

「……済みません、葵様。ですが、ひゃう!」

「ひゃう?」



 下を見ると、スノー様が圧を飛ばしクレマチスちゃんの尻尾を凍らせていましたわ。

 確かに、私がクレマチスちゃんに話して言い聞かせるよりも、凍らせて物理的に動けなくさせて止める方が効果的かもしれませんが、スノー様はリリー様が悲しまれるような事をクレマチスちゃんがしますと容赦しませんわね。


 しかも、氷属性にかなり耐性があるクレマチスちゃんの尻尾を凍らせるなんて……氷龍さえも、コロリとなりますわよ? 

 私はクレマチスちゃんの尻尾を狐火(キツネビ)で溶かすと、クレマチスちゃんを見つめる。



「クレマチスちゃん、久遠(クオン)の焔(ホノオ)のブレスを纏った天(アメノ)羽々(ハハ)矢(ヤ)を天之(アメノ)麻迦古(マカコ)弓(ユミ)で放てば、無限に消滅させる焔(ホノオ)で、澱みの海牛の魔石さえ消滅させる事が出来ますが、同時に久遠(クオン)の焔(ホノオ)で世界も消滅し続けますわよ? 使用されるのでしたら、葵のようにその能力さえも自由に操作可能になってからですの。ご理解、頂けまして?」

「はい、葵様。ひゃう!」



 スノー様、今私が言い聞かせているのに、なぜまだクレマチスちゃんを凍らせようとしてくるのかしら? 



「……はぁー。世話が、焼けますわね」



 再び狐火で凍った尻尾を溶かすと、スノー様の愚痴をクレマチスちゃんが呟く。



「葵様、スノー様が怖いです。それにあの性格、どうにかなりませんか?」



 ですがそんなことを口走ると、またスノー様に尻尾を凍らされますわよ? 

 それに、クレマチスちゃん? 

 今にも泣きそうな顔で私に訴えて来られても、今回は貴女が悪いですわよ? 



「クレマチスちゃん、良いですか? 金輪際(コンリンザイ)、リリー様が悲しまれるような事はしてはいけません。そうしなければ……」



 はぁー、折角丁寧に言い聞かせていますのに……



「ひゃう……スノー様が、ひゃう、はうー、ひえー、うわーん! あっ葵様、分かりましたので助けて下さい」



 そう言って、クレマチスちゃんが私に抱きついて来ました。



「はぁー……スノー様!」



 私が大声でスノー様の名前を呼ぶと、クレマチスちゃんの尻尾を凍り付かせる攻撃が止まりました。



「――――」



 スノー様? 無言で、葵にだけ謝られても……本当に、世話が焼けますわね。

 クレマチスちゃんの尻尾が根元まで凍ってしまったので、狐火(キツネビ)で溶かしつつ尻尾を温めてさしあげましたの。


 そして再び南側に降りますと、スノー様が八つ当たりされたのか、孤島の周りの海が凍っておりましたわ。

 ですがそのお陰でとも言いますが、周りに仕留めきれずにいた分隊も凍りついて粉々になっておりました。

 これでしたら、少し舞う時間が長いですが強力な神楽舞が出来ますわ。


 剣舞(ケンブ)、清目(キヨメ)、散供(サング)、勧請(カンジヨウ)、祝詞(ノリト)、御座(ゴザ)、手草(タクサ)、それぞれの舞を舞い祈りを捧げる。

 そして、その舞と祈りで七大天神(ナナダイテンジン)を天上の後光から降臨させる舞ですの。



「祓え給い、清め給え、七大天神(ナナダイテンジン)かむながら守り悪を打ち払い給え! 我は天狐(テンコ)と八尾狐(ヤオノキツネ)の巫女王女!」



 後光から降臨した七大天神(ナナダイテンジン)に、天之(アメノ)瓊矛(ヌボコ)で七つの印を示し舞を舞う。



「剣舞(ケンブ)、清目(キヨメ)、散供(サング)、勧請(カンジヨウ)、祝詞(ノリト)、御座(ゴザ)、手草(タクサ)! 邪なる澱みの海牛よ、その身を以て神威を知れ 七大天(ナナダイテン)神楽(カグラ)! 七大天神(ナナダイテンジン)最後の審判!」



 澱みの海牛が孤島ごと眼前から消えたかと思うと、私の見ている景色が豹変する。

 ここは、次元の狭間。

 何も存在しない筈の次元の狭間に、澱みの海牛が孤島ごと現れたかと思うと、あらゆる場所から光が澱みの海牛を襲う。

 そして光りに包まれたかと思うと、集束し砕け散った。


 次の瞬間、再び元の場所に戻ってくると澱みの海牛は魔石だけになっておりましたが、黒く薄いオーラのような物が魔石を覆っていました。

 刹那、大量の海水が孤島の周りから消えたかと思うと澱みの海牛が復活。


 ここまでして、澱みの魔石が破壊出来ないなんてあり得ませんわ。

 まさか澱みの海牛は、私やスノー様の予想を超えてる? 

 劣化型神武具と私達の能力を掛け合わせた攻撃では、足りなかった? 


 いえ、そのような事は絶対にありませんの。

 私とスノー様が、管理者に準じる能力で澱みの海牛を確認致しましたからね。

 ならばやはり、真の能力を劣化型神武具が発揮できていない事に原因が? 


 でしたら、やはり私がお選びしたリリー様の誕生日特典が来なければ、黒く薄いオーラを浸潤しての攻撃は難しそうですわね。

 リリー様の誕生日特典さえ来れば、限界突破は元私の能力でしたので限界突破の中に含まれる劣化型神武具の真の能力解放が可能となりますわ。

 つまりそれさえ来れば私達三人が同時に、澱みの海牛の能力を超える事が可能となりますの。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

リリー「第一回、誰の尻尾が一番心地が良いか大会! ドンドン、パフパフ! 

    審査員はスミレちゃんとレモンちゃんと杏ちゃんとシルクと私ね」

シルク「リリー、何下らない事をしているのよ?」

リリー「シルク、小声で話すね。最近スノーとクレマチスちゃんが、何故か

    ギクシャクしているのよ。だから、和ませるようにする為に、私がこの

    大会を企画したの」

シルク「私は、余計にギクシャクすると思うのだけれど?」

リリー「そうかな?」

シルク「まあ、リリーの好きなようにしてみるといいわ」

リリー「うん。えーと、じゃー先ずはアイビーの尻尾ね。ふにゃー、気持ち良か。

    アイビー? シャンプーば、薫り変えたと? シルクと、同じ薫りばい」

シルク「当然でしょ。私が毎日アイビーを洗うようになったんだから」

リリー「だから、シルク10点満点中10点出しているのね。スミレちゃんが8点、

    レモンちゃんが8点、杏ちゃんが8点、私が10点で合計44点ね」

シルク「リリーもでしょ!」

リリー「シルクの突っ込みは良いから、次いくよー。ケットちゃんの尻尾は、

    どうかなー? ふにぃー、気持ち良い」

ケット「ミィー」

レモン「ケットちゃん10点。エヘヘー」

スミレ「10点」

ケット「……ミィミィ、ミィー!」

リリー「ひゃん! もー、ケットちゃん? ケットちゃんは、レモンちゃんに

    似て、最近悪戯してくるようになったの。だから7点ね」

杏「リリーちゃんに悪戯する子は、7点です」

シルク「私は普通に毛触りよかったから、9点にするわ」

リリー「ケットちゃんは合計43点ね」

葵「私は、尻尾が多いので辞退致しますわ」

リリー「じゃー、残りはスノーとクレマチスちゃんね」

クレマチス「リリー様、では私からお願いします」

リリー「クレマチスちゃん、フワフワー。アイビーとケットちゃんとは全く

    違うよね。私の中では、今の所一番かな。だから10点」

レモン「レモンも、リリーちゃんの気持ち分かる。だから、10点」

スミレ「スミレも、10点です」

杏「私も、10点です」

シルク「悔しいけれど、私も10点にするわ」

リリー「クレマチスちゃんは満点ね。じゃー最後は、スノーね。はうー、

    フワフワー、良い薫りー。悩むけれど、やっぱりスノーの

    毛並みが私一番好きかも。10点」

スミレ「ですね。10点」

レモン「良い薫りもするよね。10点」

杏「スノーちゃんは、心が安らぐ薫りなので10点です」

シルク「確かに、良い薫りだわ。10点」

リリー「スノーも、50点で満点ね」

クレマチス「リリー様、スノー様の薫りを採点に入れるのはちょっと。スノー様

      だけ、リリー様に似た薫りですし」

リリー「駄目かな? でも他の子も、毛触りや薫りも全て含めてだよ?」

スノー「――――」

クレマチス「ひぇん! スノー様、無言で圧を飛ばしてこないで下さい」

スノー「――――」

クレマチス「ひゃう! だから止めて下さい。ひぃー! ふえーん! 葵様、

      助けて下さい」

葵「やれやれ、ですの」

  最近ますます、スノーとクレマチスの仲を仲裁しなくてはいけなくなった

  葵であった。

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