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封印されていた魔物19

 【スミレSIDE】


 カトレア先生の異常とも思われた攻撃で、両腕の鱗を破壊された炎龍は、闘技場の壁まで吹き飛ばされていた。

 炎龍が吹き飛ばされた衝撃で、闘技場に張られていたレモンちゃんの障壁が破壊されるかと思われた瞬間、ディーネちゃんとルフちゃんが混合障壁を張ったことでレモンちゃんの障壁は破壊を免れた。

 しかし、ディーネちゃんとルフちゃんの混合障壁は炎龍が当たった瞬間粉砕された。

 私達と共に戦っている間も常に魔法を消費していたせいか、ディーネちゃんとルフちゃんが消えかけていました。



「ディーネちゃん、ルフちゃん、レモンの中で休んでね。後は、レモンが頑張る」



 レモンちゃんがディーネちゃんとルフちゃんに声をかけると、二人とも悔しそうな表情で消えていった。

 精霊の召喚と、度重なる障壁の展開。

 レモンちゃんも、魔力をかなり消費して苦しそうです。

 ケットちゃんもレモンちゃんの頭の上で、グッタリしていた。


 そう言う私も、数え切れない程の技や魔法を使用してきたので、体力や魔力も残っていない。

 杏ちゃんは私よりも激しく攻撃を繰り返していたので、体力も魔力も残っていないでしょう。

 肩で、息をしていますし。


 カトレア先生とロベリアさんには、控え室に行ってもらう事にしました。

 けれど、こんな状況で炎龍を倒せるのでしょうか? 

 炎龍も両腕両足の負傷で、思うように立てないようです。


 しかし、炎龍の眼はまだ戦えると言っています。

 炎龍がまさか、ここまで強い存在だとは思いもしませんでした。

 私と杏ちゃんが息を整えるのと同時に、炎龍の雰囲気が変わった。



 ガァァァァァァ! 



 炎龍が咆哮すると、出血している両足を無視して四つん這いになって突進してきた。

 かと思うと、途中で方向転換し私達目掛けて尻尾を振ってきました。



「避けっ! ケホッ」



 私は、私と共に前線にいた杏ちゃんに声をかけた。

 けれど、上手く声が出なくて咳き込んだ。



 ブゥゥゥゥゥゥン! 



 それを見た杏ちゃんが、咳き込んだ私を抱えて炎龍の尻尾を躱しました。

 躱すと、炎龍は更に尻尾を振ってきた。



 ブブゥゥゥゥゥゥン! 



 二度の尻尾攻撃を危険と判断した私と杏ちゃんは、カトレア先生とロベリアさんに指示を出し女の子と一緒に場所を移動してもらいました。



 ブブブゥゥゥゥゥゥン! 



 しかし、炎龍は尻尾を回し続けた。

 このままでは、闘技場の壁も障壁ごと破壊されるかもしれない。



「多重障壁!」



 キュイィィィィィィン! 



 闘技場の壁に当たる瞬間、レモンちゃんが障壁を張ってくれましたが



 パリンパリンパリンパリンパリン! ピシッ! 



 瞬時に、多重障壁が破壊された。

 どうやら、レモンちゃんも魔法力を使いすぎたようです。

 闘技場に張られている障壁に一枚ヒビを入れましたが、そこで炎龍の尻尾が止まった。


 確かに度重なる炎龍の攻撃を、ほぼ全てレモンちゃんが多重障壁を張って守ってくれていた。

 ディーネちゃんとルフちゃんも魔力を消費しすぎて、今はレモンちゃんの中に戻ってしまっている。

 しかし炎龍の捨て身とも思える尻尾による連続攻撃は、一瞬止まったものの再び回し出した。



 ブゥゥゥゥゥゥン! 



 私と杏ちゃんとレモンちゃんは、炎龍の尻尾を飛び越えカトレア先生が向かった反対側の控え室側に移動した。

 尚も炎龍は、私達に尻尾を振って来る。



 ブブゥゥゥゥゥゥン! 



 炎龍の尻尾攻撃を真面(マトモ)に喰らえば、私達もただでは済みません。

 私達は、ギリギリで炎龍の尻尾を躱した。

 ですが、私達の行方を悉(コトゴト)く炎龍は尻尾で攻撃する。



 ブブブゥゥゥゥゥゥン! 



 躱しきれないと思ったその時、私達の前に光りの障壁が張られた。



 キュイィィィィィィーン! 



 ズドォォォォォォン! 



 炎龍の尻尾が、光りの障壁によって防がれると空から人と巨大な獣が現れた。

 嘘でしょ? 新たな敵? 

 私はそう思って、身構えました。

 ですが、



「スミレちゃん、大丈夫? アイビーと一緒に、手伝いに来たわよ」



 と言って美少女が私に声をかけて、笑顔を向けてきた。

 次の瞬間、炎龍は地響きと共に地面に平伏せた。



 ズゥゥゥゥゥゥン! 



「シルク、炎龍は僕の重力操作で押さえ込んだよ。今のうちに、皆を回復させてあげて。控え室にいる、小さな女の子も一緒にね」



 その声の主を見ると、巨大な狼だった。



「言われなくても、分かっているわよ」



 この声と雰囲気、それにいつものやり取り……もしかして? 



「……シルクちゃんと、アイビーちゃん?」



 私が質問をすると、美少女が肩をすくめる。



「スミレちゃん、何で疑問形なのよ?」

「シルク、見ても分からないと思うよ。ちゃんと、説明しないとね。スミレちゃん、ごめんね。僕たち、進化したんだ」



 アイビーちゃんが、ワンワン言ってない? 



「えっ?」

「スミレちゃん、そういう事よ。それに、私達はリリーの劣化型神武具が使えるようになったから安心して。それより、体力を回復するわね」



 私はまるで夢でも見ているかのように、佇んでいた。

 リリーちゃんから、シルクちゃんとアイビーちゃんが進化することを聞いていたが、まさかここまで変化するとは考えもしなかった。

 でも、心強い私達の仲間が来てくれた。



「あっ、はい」



 私は返事をすると、体力を回復してもらうためにシルクちゃんに近づいた。



「プッ! スミレちゃん、杏ちゃん、驚きすぎよ。それに、レモンちゃんもフラフラね。ケットちゃんは、項垂(ウナダ)れニャン子になってるし。でも、カトレア先生とロベリアさんは問題無さそうね。こちらの小さな女の子も、回復は必要なさそうね」

「シルクちゃん、大きくなりすぎて驚きました。それに、スミレよりも背が高いですよね?」

「はぁー……背だけね。はっ! そんなことよりも、リリーが創ったお菓子を沢山持ってきているから、皆飲み物と一緒に早く取って。体力と魔力も、回復するわよ。ケットちゃんには、ミルクね」

「ミィー!」

「シルク、ケットちゃんに先にミルクを飲ませて。炎龍自体を抑えることは出来るけれど、炎龍の能力は僕ではおさえられないからね」

「分かったわ、アイビー。レモンちゃん、これミルクね」

「シルクちゃん、ありがとー」



 私達は、シルクちゃんとアイビーちゃんからお菓子と飲み物をもらい食べると、体力と魔力が少しずつ回復していった。

 ケットちゃんはミルクを飲み終えると、魔眼を発動した。


 これで炎龍の特殊な能力は封じることが出来ましたが、戦闘不能にして気絶でもさせないと、炎龍を大人しくさせたことにはなりません。

 アイビーちゃんの能力で平伏せさせてはいても、炎龍はまだこちらを睨んでいる。

 私が炎龍と睨み合いをしていると、シルクちゃんが困っていた。



「カトレア先生、角と尻尾が生えた女の子がやたらと私にくっ付いてくるのだけれど、この子誰なの? スミレちゃん達を回復させようとしているのだけれど、しがみ付いて来て回復させにくいわよ」



 シルクちゃんを見ると、炎龍ちゃんが腕にしがみ付いていた。

 先ほどまでは、カトレア先生とロベリアさんに甘えていたのに? 

 シルクちゃんは私の回復を終えて、次は杏ちゃんを回復させようとしているけれど、炎龍ちゃんに腕にぶら下がれて回復させにくそうだった。



「シルクちゃん、えっとね」



 カトレア先生がそう言って側に来ると、再びカトレア先生の足に炎龍ちゃんが抱きついた。



「ママ」

「えっ? カトレア先生の隠し子?」



 その言葉を聞いて、シルクちゃんが驚いていた。



「シルクちゃん、違うわよ! この子は、炎龍ちゃん。あそこに這いつくばっている炎龍の赤ちゃんよ」



 シルクちゃんが私の顔を見てくるので、頷いた。

 シルクちゃんが杏ちゃんの回復を再開すると、再びシルクちゃんの腕に炎龍ちゃんがしがみ付いた。



「ママ」

「私は、ママじゃ無いわよ?」



 シルクちゃんはそう言っているが、炎龍ちゃんが一瞬見た方向が平伏せている炎龍だった。

 もしかすると、炎龍ちゃんはシルクちゃんに母親の傷を治してほしいのかも知れない。

 しかし、傷を回復させると炎龍は力を取り戻し再び襲ってくる可能性が高い。



「炎龍ちゃん、良い子だからこっちにおいで。シルクちゃんが、杏ちゃんを回復させにくいの」

「ママ」



 カトレア先生がそう伝えると、炎龍ちゃんは再びカトレア先生の足にしがみ付いた。

 このままアイビーちゃんの能力で押さえつけていても、炎龍の様子からして屈服するとも思えない。

 それに力でねじ伏せようとしても、体力が有りすぎる炎龍を戦闘不能に追い込む事は困難だろう。

 ならば炎龍ちゃんに頼んで、炎龍を宥めるように交渉してみるか……。



「カトレア先生、炎龍ちゃんに母親と交渉してもらえるか聞いて頂けないですか?」

「えっ? ――ええ、そうね。それも、一つの方法よね。元々の発端は、炎龍ちゃんが誘拐された事で炎龍はここにやって来たんですもの」

「ママ?」



 カトレア先生は一瞬考えたが、炎龍ちゃんを撫でて、私の提案を受け入れてくれた。

 提案を受け入れてくれた事で、カトレア先生の護衛をしよう立ち上がると、シルクちゃんが私の肩を叩いてきた。



「スミレちゃん、私がカトレア先生の護衛で一緒に行くわ」



 確かに今の状況から考えると、私が行くよりも進化したシルクちゃんが行く方が炎龍に対して防衛手段がある。

 それに、シルクちゃんは炎龍ちゃんにも気に入られているようです。



「シルクちゃん、良いのですか?」

「だってスミレちゃん達は、戦うことが出来るほど魔力が回復しきれていないし、炎龍の攻撃を止めることが出来る私の方が適任でしょ。それに、また炎龍ちゃんにしがみ付かれているし……」

「ママ」



 もしかすると、炎龍ちゃんは強い者に母親を重ねているのかもしれない。



「ではシルクちゃん、カトレア先生の護衛、改めてお願い致します」

「任せなさい」



 そう言ってシルクちゃんは、カトレア先生と炎龍ちゃんを連れて、平伏せている炎龍の元へ向かった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「アイビー、そのプカプカ浮く飛び方何とかならないの?」

アイビー「シルクに、合わせているのだけど? 僕だけ早く飛んで、先に

     スミレちゃん達と合流しようか?」

シルク「ちょっと、アイビー待ちなさいよ。アイビーだけ先に行くと、私が凄く

    格好悪いでしょ」

アイビー「でもヒーローは遅れて登場するって、シルク言ってたよね?」

シルク「アイビー、それはもう古いのよ。今は、二人のヒーローが遅れて登場

    する方が格好良いのよ」

アイビー「そうかな? 僕はスミレちゃん達と、早く合流した方が良い予感が

     するのだけど? それに、西側の轟音や地面の揺れが酷いよ? 

     もしかすると、スミレちゃん達ピンチかも?」

シルク「アイビー? じゃーその遅いか早いかしか出来ない極端な飛び方を、

    何とかしなさいよ!」

アイビー「シルク、慣れるまでは我慢してよ」

シルク「仕方が無いわね」

    通路を走った方が早くスミレ達と合流出来るのに、飛ぶことを選んだ

    シルクとアイビー……どっちもどっちであった。

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